↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/203

19 あーんして下さい

 男子どもがザワザワしている。

「御池さんと幸斗って、どういう関係?」


「幸斗に弱みを握られて、脅迫されているのか?」

「今、幸斗をボコってやるから大丈夫だよ」

 男子どもは俺を悪人に決めつけて、無茶苦茶なことを言っている。


「ウチは、一言でいえば……幸斗さんの許嫁(いいなずけ)やわ」

 麿莉奈が顔を赤くさせて、ぽつり。


「何だって――!?」

「バカなあああ」

 男子どもが呻きまくる。


 いや、それ、省略しすぎだから。麿莉奈はお嫁様候補5人のうちの1人。でもそれを説明したらさらに炎上しちゃうか。


「幸斗さん、お掛け下さい」

 麿莉奈は男子が喚(わめ)いているのを完全無視。


「う、うん」

 俺はおとなしく座ることにした。


 麿莉奈も座って風呂敷包みを広げようとする。


「孤児院がどういうことだよ!?」

「てめー、説明しろっ」


 ものすごい敵意を向けられているが、麿莉奈を見習って無視することにする。


 麿莉奈は三段重ねの重箱を一段ずつ、俺の席に並べていく。机に全部乗り切らなくて、一段は麿莉奈の机に置かれる。


 お節料理みたいだけど、パスタやローストビーフなどの洋食もある。


「すごいな、これ全部、麿莉奈が作ったの?」

「はい。全部召し上がって下さるとうれしいんやけど」


「さすがに、こんなには食べられないかもしれない」


「では、ウチは残り物をいただきますので。幸斗さんは召し上がりたいものをおっしゃって下さい。ウチが箸で摘(つま)んで、お口に入れて差し上げますから」

 麿莉奈が「あーんして」をやってくれるってことだ。


 没落令嬢とはいえ、京都の名家のお嬢様が俺にご奉仕をしてくれるという。俺は超絶大金持ちになったけど、そんなことまでされていいの!?


「ふざけんなああああああああ」

 男子が吠えている。


「これは悪夢だ。早く醒めてくれ」

「おかしいぞ。夢って気づいたら醒めるものなのに、なかなか醒めない」


 麿莉奈は箸箱から塗り箸を取り出す。

「幸斗さん、まずはどれにしはりますか?」


「いいのかな」

「さあさあ」


「じゃあ、ローストビーフを」

 俺はローストビーフを食べたことがない。テレビとかで見たことはある憧れの食べ物だ。


 麿莉奈が箸を伸ばしてローストビーフを一切れつまむ。

「はい、あーんして下さい」


 俺の口元に突き出してくれる。

 男子どもの視線が向けられている。かなり恥ずかしい。

 

 だが、やってやる――

「あーん」


 口の中にローストビーフが入ってくる。

 ソースの味わいが広がる。


 もぐもぐ。

 肉がやわらかい!


「うまい!」

 大きな声を出してしまった。


「良かったぁ」

 麿莉奈が、ぱあっと笑顔になる。


「めちゃくちゃうまいよ、ほんとに」

「うれしい。作った甲斐がありましたわ」


「麿莉奈は料理上手だね。でもこんなに作るのは、すごく時間がかかったんじゃ?」

「昨日の夕方から夜遅くまで仕込みですわ。あと、今朝は3時に起きました」


「うわ、あんまり寝てないじゃん。悪いな」

「幸斗さんに喜んでもらいたいなあって頑張っちゃいました、ふふ」


 バカップル状態の俺たち。二人の世界を創りつつある。


 男子が絶望感溢れる表情を向けてくれている。

 ククク。


 肩を落として、1人、また1人と去って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。