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18 没落令嬢のお弁当

 ◆◇◆


 朝のホームルーム。


「転校生を紹介するぞ。御池麿莉奈さん。京都の名門女子高から編入してきたんだ」

 担任の男が教卓で告げる。


 麿莉奈がしずしずと教室に入ってくる。すぐに男子が騒然となる。

「すっげえ可愛い」

「Sランクだ」


 女子は舌打ちしている。

「お前らには釣り合わないっつーの」


 俺の前は空席。桃香は今日もサボりだろう。


「御池さんの席は用意しておいたからね」

 担任が俺の左隣の席を指差す。


 昨日まで何もない空間だったのに机と椅子が用意されている。

 教室の後ろの方には他にも空いているところはあるのに、なぜここなんだ?


 麿莉奈が着席する時に、俺に会釈(えしゃく)をした。


「なあ、担任に賄賂(わいろ)でも贈ったのか?」

 俺にはそうとしか思えない。


「ふふ、幸斗さんは人聞きの悪いことを言わはりますわ。偶然やけど、うれしいわあ」

 麿莉奈はとぼける。


 数学の授業。


「次は難しいぞ、わかる奴、いるかなぁ」

 ベテラン教師が見渡す。


 麿莉奈が「はいっ」と手を挙げる。

 黒板の前に出る。スラスラと難解な数式を展開させて、最後は簡潔な答えを書いた。


「正解。よくわかったな」

 教師が感心。教室内に感嘆が広がる。

 俺にはなぜその答えになるのか全くわからない。


 英語の授業。

 麿莉奈は教科書の音読を当てられる。


「I think that~♪」

 綺麗な発音。滑らかなリズムに乗る声は、外人(がいじん)が話すのを聞いているみたい。


 またしても感嘆が広がる。


「上手いね。こりゃ先生を代わってもらわなくちゃ」

 アラサー教師が冷や汗をかいている感じ。


 麿莉奈は完璧な教育を受けた子らしいけど、家庭教師でも付けられて英語を習ったのかな。イマイチ高なんぞのレベルを超越した優等生に見える。


「ウチに先生なんて無理やわー」

 麿莉奈は笑顔で述べる。謙虚なところが、男子の好感度をますます上げてそうだ。


 キンコンカンコーン

 昼休みになる。桃香はまだやって来ない。


 男子が早速、麿莉奈を取り囲む。

「御池さん、お昼一緒に食べないかい」

「学食なら案内するよっ」

 

 俺は今日も弁当がない。だが大丈夫だ。何しろ俺は一千億円持っているから、売店でパンを買える。


 あ、でも財布に現金はないぞ。まず銀行に行って引き出さないといけないのか。早くしないと昼休みが終わるじゃないかと俺は立ち上がる。


「幸斗さん、ウチと一緒に食べていただけませんか? お弁当を作ってきました」

 麿莉奈が話しかけてくる。


 振り向けば麿莉奈は男子の包囲網を抜け出して、風呂敷包みを抱えている。

 男子どもが驚愕の表情で、俺と風呂敷包みを交互に見ている。


「え、俺と? いいの?」

 咄嗟(とっさ)のリアクション。だって謎キャラの桃香以外に俺と昼飯食おうなんて女子はいなかったから。


「幸斗さんと一緒がいいに決まってるやないですか。幸斗さんのお口に合うかわかりませんけど」

 麿莉奈は俺の机の上に風呂敷包みを置く。ずしっと音がした。重箱で三段ありそう。


「失礼します。机をくっつけさせていただきますね」

 麿莉奈が俺の机の角を両手で持って、90度転回する。そして椅子も向きを変える。


 続いて、麿莉奈の机も90度転回して、俺の机とくっつける。


 ごくり……

 教室で女の子と机をくっつけて、向き合って弁当食べるなんて初めての経験だ。

ブクマ、ご評価をいただけましたらとてもうれしいです。

よろしくお願いいたします。

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