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懐かしき親友との再会

正騎士試験の予定でしたが、グリザスが言うんです。この話を書けと…。毎日毎日うるさいので、書くことに致しました。仕方がない。( 一一)

鎮魂祭が終わって3日経った。

騎士団正試験が1週間後に迫っていた。

ただし、黒竜魔王を閉じ込めている氷が最近急激に砕けて来て、

それを抑えている第一魔国魔導士達の力もそろそろ限界に近いとの事。

討伐を急がねばならないだろう。

騎士団正試験を先延ばしにするのか、王家の決定を待っている状況である。


グリザスは、王宮の倉庫で、模造剣のチェックをしていた。

正騎士試験は剣技と一般教育の二つだ。

剣技の指導官として、試験に立ち会わねばならない。

剣技の試験官はローゼン騎士団長と近衛騎士シリウス・レイモンド。ルイス・シャルマン。

そして、今回はディオン皇太子殿下も立ち会われるとの事。


ゴイル副団長は、一般教育の試験の立ち会いと採点がある。

その試験をグリザスも他の見習い達と受ける事になっていた。

自分だけ、教養も無いのに、正騎士扱いなんて、許せないし、皆と一緒に合格したいという気持ちが強かったからだ。


模造剣のチェックをしていて、3本が痛んでいる事が発覚した。

いつも、模造剣の扱っている店に行って、新しい剣を仕入れる必要がありそうだ。

クロードを連れて行くわけには行かない。クロード達、騎士見習い達は今、必死に勉強しているのだ。邪魔は出来ない。


幸い、近隣なら、死霊の黒騎士は知れ渡っているし、その店は顔馴染みになっているので、一人で出かけても大丈夫だろう。


グリザスは王宮の庭を出ると、店に向かった。


春の日差しが気持ちよく、綺麗な黄色の花や桃色の花が道の端に咲き乱れて、気持ちがいい。


ああ、マディニア王国の王宮へ帰って来て、5か月位経ったのか、色々あったが、幸せだったな…。

200年前の人生と比べて、何て俺は恵まれているんだろう。

何よりも愛しい人、クロードに出会えて、大切な友も沢山出来た。

死霊なのに、こんなに幸せでよいのだろうか…


だなんて考えながら、店に着く。

武器を扱っている小さな店だ。

そこの主人とは顔馴染みなので、気が楽である。


店に入ると、剣が左右の壁に所狭しと並べられている。

真剣もあれば、模造剣もある。


奥のカウンターへ行って、声をかけようとして、いつもと違う人物がいる事に気が付いた。

この店の主人は歳がいっている中年の男である。

今、カウンターにいるのは、茶色の毛を後ろに一つに縛った、若き青年だ。

若いと言っても、30歳近くは行っているだろうか?


グリザスを見た途端、青年はマジマジとその姿を見つめて来た。


グリザスもふと、その青年を見て、懐かしさを感じる。


そして、忘れていた記憶が蘇って来た。


思わず青年に声をかける。


「モリスディン・サーロッド?…俺だ。グリザスだ。」


青年は微笑んで、左手の甲をグリザスの方に向ける。

そこには、黒の星形の痣があり、


「今は、モリスディン・ノース。ノース商会の跡取りだ。

噂の死霊の黒騎士はお前の事だったのか?グリザス。

ああ…思い出した。俺はお前とどこかで会った事がある。そして、再び会えた時に、

手の甲の印を見せると約束した。俺である事を示す為に…。

こうして会えて嬉しい。グリザス。」


ああ…俺の事を覚えていてくれた。

モリスディン…。遠い昔の大切な友。親友だった…。


この親友をどうして忘れていたかというと、悲惨な別れ方をしたからだ。

死に別れだった。だから、それが心の傷になり、忘れていたのだ。


グリザスはモリスディンに近づくと、カウンターの横に回る。

モリスディンもカウンターから出て、互いに強く抱きしめ合った。


涙がこぼれる。喜びの涙だ…。


モリスディンも涙を流していたが、グリザスに向かって。


「どうせ、客はいない。少し、話をしないか?」


「そうだな…俺も話をしたい。」


店の中で、二人で話を始めた。


モリスディンがグリザスに聞いて来る。


「お前は、何でこんな姿に…死霊の黒騎士が騎士団にいるという話は有名だ。店に買い物に来ると俺も義父から聞いているが、まさかお前だとは思わなかった。」


「200年前にアマルゼの呪いにかかって、洞窟に閉じ込められて、魔物に痛めつけられる日々を送っていた。やっとこの国に帰ってこられてこの姿だ。今は騎士団で見習い達の剣技の指導をしている。ひとえにディオン皇太子殿下と聖女リーゼティリアのお陰だ。」


「成程…大変だったな…。俺はどこでお前と出会った?すまないが、詳しい事は思い出せない。だが大切な親友だったのではないか?そう思える。グリザスを見た途端、その事だけは思い出せた。」


「お前とは18歳の時に、アマルゼとの国境の初戦で知り合った。

軍の中は地獄だった。俺もお前も見目がそれなりに良かったから、性的な標的にされた事もあった。勿論、戦はそれを上回る地獄だった…殺し合いだからな。

お前とは共に戦い、共に苦労をし、寝食を共にした仲だ。

帰国した時は、一緒に娼館にも行って、互いに相手をした女性の自慢をした覚えもある。

その時は楽しかった…。

俺に、サーロッド伯爵家の養子にならないかと誘ってくれたのも、お前だ。

没落した伯爵家とはいえ、苗字を持っていた方が先行き何かと有利になるからと、

お前は俺の兄弟にもなってくれた。

3回目の大戦の時に、俺を庇ってお前は亡くなった。

俺の腕の中で、冷たくなりながら、お前はこう言ったのだ。

必ず、又、出会おう。その時はこの左手の甲の星形の印を示そう。

今度こそ、平和な世界で、可愛い嫁を貰って、子供沢山作って、お前とはまた、親友でいて、共に笑える世の中に生まれ変われるといい…。

そう言いなら、しきりに寒がって、どうしようも出来ない程、寒がって…

冷たくなっていくお前を俺はどうする事も出来なかった。」


モリスディンはグリザスの肩をポンと叩いて。


「有難う。看取ってくれたんだな。親友を守れて、そして見守られて亡くなった俺は幸せ者だ。だが、約束は果たした。可愛い嫁は貰っているし、可愛い娘が2人いる。今は3人目が嫁の腹の中だ。」


「本当か?」


店の奥にモリスディンは声をかける。


「イーナ。親友が来てくれた。お前も挨拶を、子供達も連れてきてくれ。」


お腹が大きい可愛らしい女性が2人の女の子を連れて出て来た。


グリザスを見て驚いた顔をして。


「噂の死霊の黒騎士様???」


女の子達も驚いた顔でグリザスを見ている。


モリスディンは妻のイーナと娘たちを紹介する。


「妻のイーナと、娘のアリア、キャリーだ。こちらは俺の親友のグリザス・サーロッド。」


イーナは微笑んで、


「妻のイーナです。ほら、アリア、キャリー。御挨拶を。」


10歳位の娘、アリアはにっこり笑って。


「アリアです。」


キャリーは3歳くらいで可愛い盛りだ。


「キャリーでしゅ。」


グリザスは思った。ああ…なんて可愛い子供達だ。

モリスディンは幸せなんだな。ほっとした。


「騎士団所属のグリザス・サーロッドだ。いつもこの店には世話になっている。」


その時、店の扉が開き、顔見知りの店の主人が戻って来た。


「いらっしゃい。グリザスさん。模造剣が壊れましたか?それとも別の物が。」


「ああ、御主人。模造剣を3本、買いに来たんだが。」


「すぐに用意しますんで。」


模造剣を用意して貰う。そして、店の外に出ると、モリスディンがついてきて。


「王宮の門まで送ろう。もう少し話がしたい。」


共に道を歩いて。


モリスディンが聞いてくる。


「噂の黒騎士は、若い騎士見習いとイチャイチャしている姿が見かけられると噂になっているが…それはどういうことだ?」


うううう…答えに困る。死霊の黒騎士の俺がクロードの嫁認定だなんて、この男に知られたくない。


「いやそれはその…」


その時である。


「グリザスさんは俺の物だよ。アンタには渡さない。」


道の木の陰から、クロードが出て来た。

手には聖剣を持って、モリスディンを睨みつけている。

そして、凄い不機嫌に。


「グリザスさんの心が、揺れて強い想いを感じたんだ。だから、心配になって飛んできた。

浮気?許さない。この男を殺してやる。グリザスさんは俺の物なんだ。」


グリザスは慌ててモリスディンを庇う。


「大切な友達なんだ。遠い昔の。懐かしかっただけだ。俺が愛しているのはクロードだけだから、どうか殺さないで欲しい。」


クロードの頭に羊の角が生える。耳も尖り、口には牙が見えて、聖剣は黒く変貌していく。


「グリザスさんの言葉は信じられない。凄く強い想いだったんだ。この男に対する想い…

殺してやる。殺して…グリザスさんを閉じ込めて、俺だけの物に…」


モリスディンはグリザスを制して前に出る。


「俺の名は、モリスディン・ノース。

君がグリザスと仲良くしている噂の見習いの男なのか…。グリザスを信じてやってくれ。

俺と彼は遠い昔の親友だ。強い想いがあるのは仕方ない。俺はこの男の腕の中で、過去に死んでいる。苦難を共に乗り越えた親友だ。約束した。今度は平和な世で、幸せに生きると。

勿論、互いの伴侶は女性の約束のはずだったが…」


そう言うと、クロードに近づいて。


「グリザスが選んだのなら間違いなく、君は素晴らしい男なのだろう。だから、君も俺を殺すとか、グリザスを閉じ込めるとか、間違った方向に進まないで欲しい。

それに俺が殺されると、愛する妻や可愛い娘たちが悲しむ。どうかグリザスとの約束を果たさせて欲しい。互いに平和な世界で、幸せになる約束。どうか君もグリザスと共に幸せになってくれ。」


クロードは魔族の姿から、人の姿へと戻り、頷いて。


「何だか釈然とはしないけど…奥さんも子供もいる人なら…」


グリザスはクロードに近づいて、改めてモリスディンに紹介する。


「俺の恋人のクロード・ラッセルだ。近いうちに婚姻する事になっている。」


モリスディンは嬉しそうに。


「おめでとう。是非、結婚式には呼んで欲しい。女性だろうが男性だろうが、お前が選んだ相手と幸せになれるのなら、俺はこれ程、嬉しい事はない。クロード。どうか、グリザスを幸せにしてやってくれ。」


「言われなくても幸せにするよ。俺は…。」


バチバチバチとクロードがモリスディンを睨む。


モリスディンは笑って。


「まだまだ子供だな…。俺は店に戻る。どうか、ノース商会をこれからも御贔屓に。」


そう言うと、彼は行ってしまった。


クロードがグリザスを抱き締めてくる。


「あの人がいると俺、不安になる。」


「だが、どうか殺さないで欲しい。俺にとって大事な親友だ。サーロッドの苗字をくれた男だ。俺の腕の中で亡くなった時は本当に辛かった。愛するクロードが、大事な親友を殺してしまったら、俺は悲しい。」


「サーロッドの苗字もくれた人なんだ…。苗字って大事だよね。ごめん。嫉妬をしてしまって、俺、自分が嫌になる。」


「そういえば、クロードのラッセルって苗字はどこから来たんだ?魔界の王族達が苗字を持っているようには思えない。」


クロードは説明する。


「商人で、第一魔国の魔族がいるんだけど、ラッセル商会、そこの養子にしてもらっているんだ。平民でも苗字を持っている人っているからね。貴族の養子になりたかったんだけど、貴族の知り合いがいなかったから、フォルダン公爵は第二魔国の王族だし…。あまり仮を作りたくなかったんだよ。騎士団に入る紹介はしてもらったけど。」


「そうか。苗字を得るという事は互いに大変だった訳だな。俺は遠い昔にモリスディン・サーロッド伯爵家の養子にしてもらった。彼とは兄弟扱いだった。苗字があるとないとでは、人の見る目が違って来ると、彼がそう言ってくれたから、苗字を得る事が出来た。モリスディンには感謝している。」


「いい人なんだな。本当にごめん…。」


「解ってくれたらいい。それにしても、平和な世と言うが、黒竜魔王を倒さない限り、平和では無くなってしまう。ここは頑張らないとならないな。」


「そうだね…。この国の国民は、いや、他の国もそうだけど、黒竜魔王の現状を知らないんだから、俺達が頑張って倒さないと…勿論、正騎士にもならないとね。」


そう言うと、クロードはグリザスから離れて手を握り。


「王宮へ戻ろう。正騎士試験が予定通りに行われるのか、黒竜魔王討伐が先か、

どちらになっても、全力を尽くしたいよ。」


「俺も同感だ。行こうか。」


それにしても…亡くなった親友にこの世で会えるとは、何て幸せなんだろう…

先行きは不安であるけれども、愛するクロードと共になら頑張れると思うグリザスであった。


幸福を胸に、クロードの手の温もりを感じながら、見上げる空はどこまでも青かった。


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