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鎮魂祭…みんな有難う。

鎮魂祭当日。朝、スーティリアが転移魔法陣を王宮の庭に出現させ、マディニア国王陛下始め、クロードやグリザス達もディオン皇太子殿下や聖女リーゼティリア達を見送る事になった。


転移する同行者はセシリア皇太子妃、フローラ、勇者ユリシーズ、ローゼン騎士団長、ルディーン、勇者ネリウス、レオンハルト、神官長、フィーネ、ニゲル皇女リーナ、ジュエル皇女メルディーナ、魔界から第四魔国魔王ティム、そしてスーティリアである。その他に近衛騎士15名が同行する事となった。率いるのはシリウス・レイモンド近衛騎士である。そして、ニゲル帝国騎士、ロイエールとルーティスも同行してくれる。


転移魔法陣の上に乗り転移を待っているディオン皇太子殿下と聖女リーゼティリアに、グリザスは頭を下げる。


「どうか、気を付けて。よろしくお願いします。」


ディオン皇太子はグリザスに向かって。


「お前も気を付けて過ごせ。間違っても、アマルゼの死霊に連れて行かれる事のないようにな。」


聖女リーゼティリアもグリザスの顔を優しい眼差しで見上げて。


「私も精一杯頑張ってきますわ。だから、貴方も…約束して下さいね。生きて必ずまた、会いましょう。」


グリザスは跪いて騎士の礼を二人に取り。


「お二人のお陰で、俺はこうして幸せな人生を送っています。本当に感謝してもしきれない。必ずまた、会いましょう。ディオン皇太子殿下、聖女リーゼティリア。」


そう、マディニア王国の王宮に200年ぶりに帰って来て、ディオン皇太子殿下と聖女リーゼティリアに出会って、こうして幸せに過ごす事が出来た。

そして、これからも…生きて必ずマディニア王国の先行きを見て行きたい。

ディオン皇太子殿下の役に立ちたい。

愛しいクロード、そして騎士団見習いの仲間達と共に。


転移魔法陣が作動する。

マディニア国王陛下が、ディオン皇太子達に声をかける。

「皆の者、頼んだぞ。」


皆、頷く。そして転移魔法陣が作動して、ディオン皇太子達は姿を消した。



グリザスはクロード達と王宮の広間に移動する。

その中央に敷物を敷いて座って、その日は過ごす予定になっていた。

傍にはクロード、ミリオン、ファルナード、そして魔界から、サルダーニャ、シルバ、ロッド魔王達、騎士団見習いのギルバートやカイルら19人が、心配そうに広場に集まっている。

一番頼りになるフォルダン公爵も傍に付き添っていてくれた。


ゴイル副団長やリンドノール、ルイス・シャルマンら近衛騎士15名は、マディニア国王陛下や王妃様、フィリップ第二王子を護衛して、王宮の客間に籠る事になっていた。



フォルダン公爵は共に敷物に座って。


「鎮魂祭が始まれば、必ず、グリザスに何かしら干渉して来よう。気を抜かないでくれ。」


「有難うございます。フォルダン公爵。俺の為に…」


「大事な身内のような者だ。君も…。」


クロードはグリザスの手を握り締めて。


「必ず、守ってみせるから。」


ミリオンもファルナードも持っている聖剣を握り締め。


「大事な友だからな。お前は…」


「勇者ファルギリオンの名にかけて、必ず守る。」


ギルバートやカイルも心配そうに近づいて来て、傍に付き添ってくれて。


「俺達も微力ながら。」


「グリザスさん、頑張りましょう。」



ああ…なんて有難いのだろう。皆、とても優しい。


サルダーニャが立ち上がる。


「そろそろ、始まるのではないのか?」


ロッドやシルバも緊張し、あたりを見回す。


フォルダン公爵が叫ぶ。



「皆、立てっ。来るぞ。」


敷物を蹴飛ばして、皆、臨戦態勢に入る。




「うわっーーーー。」


グリザスは右足を引っ張られた。続いで左足も引っ張られる。何かに捕まれているようで。床にズブズブと沈み始める。


「グリザスさんっーーー。」


クロードがグリザスの身体にしがみつくも、共に沈み始めて。


騎士見習いのジャック・アイルノーツが見習い達に向かって叫ぶ。


「縄を持って来い。グリザスを縛れっーー。」


誰かが縄を持って来てくれて、グリザスの身体に縄をかける。騎士見習い達が縄を持って、

引っ張り込まれないように、皆で、支えてくれる。クロードも上に移動して皆と一緒に縄を支える方に回った。


そうしている間にも強く両足を引っ張られて、グリザスは足が痛くて痛くて…

周りを見渡せば、クロードと騎士見習い以外は皆、姿が消えていた。


どこへ行ったんだ?


フォルダン公爵やサルダーニャ、ロッド、シルバ、ミリオン、ファルナードは、床の下の空間に飛び込んでいた。そこは薄明るい世界が広がっていて。

無数の透けた青い手がグリザスの両足に絡みついて、下へ下へと引っ張っている。


ミリオンが叫ぶ。


「グリザスっ。すぐ助けるからな。」


赤の大剣である聖剣を叩きつけ、その無数の手を斬り裂く。

斬られた手はスっと消える。

しかし、すぐに復元しグリザスの足を引っ張り始める。


「くそっ。何だ?この手の化け物は…」


ファルナードが叫ぶ。


「勇者ファルギリオンの力を見るがいい。やああああああっーー。」


ファルナードが黒い稲妻を纏った聖剣を、力一杯、グリザスの足を掴んでいる無数の手に叩き込む。

一瞬で消えるも、再びグリザスの足に絡みつく手。ミシミシと音を立てて、グリザスの足を引っ張る。


「効かないか。ミリオン、ともかく斬り続けるんだ。出ないとグリザスの足が持たない。」


「解った。」


床の下の空間の先を見れば、黒い渦が巻いた洞窟のようになっており、一つ目の巨大な白い毛に覆われた化け物や、緑のドロドロした魚の化け物が無数に湧いて出て、こちらに向かっているのが見えた。


フォルダン公爵が、手に光を集めて、化け物たちに投げつける。


ごおおおおおおっーーーーーーー。


光の帯は音を立てて、彗星の如く一直線に伸び、化け物どもが一瞬にしてチリになる。

しかし、すぐに奥から湧いて近づいて来る化け物。


「キリがなさそうだが、やるしかあるまい。サルダーニャ、ロッド、シルバ。奥へ行くぞ。

湧く元を断たねば、無駄死にだ。それまで、ミリオン、ファルナード、その手の化け物を斬り続けろ。」


ミリオンは答える。


「解った。だから早く行ってくれ。」


ファルナードも聖剣で手の化け物に斬り付けながら。


「こちらは任せておいてくれ。頼んだぞ。」



グリザスは両足を引っ張られて痛くて痛くて…


この手は…俺が殺した無数のアマルゼの戦士たちの手…


- グリザス…お前だけ幸せになるなんて許せない -


- グリザス…地獄に落ちろ… -


ミリオン達が聖剣で無数の手を斬った時は一瞬、引っ張る力が弱まる、しかし、すぐに強く引っ張られて。


もし、手に引っ張り込まれたら…もう。命はないだろう…。


騎士団見習い達と共に縄を持ちグリザスを上から引っ張って、様子を見ていたクロードが飛び降りて、ミリオン達と共に聖剣を振るい、手を斬り始める。


「グリザスさんは渡さない。俺の妻なんだっ。渡してなるものか。」


グリザスの身体を巻いている縄がミシミシと音を立てる。


ギルバートやカイルが縄を引っ張りながら声をかけてくれた。


「頑張って、グリザスさんっ。」


「ここは耐え時だよっーー。俺達も頑張るから。」



ああ…なんて有難い…みんな有難う…


だが、いつまで皆の体力が持つのだろうか…



その頃、フォルダン公爵達4人は、魔物を蹴散らしながら、洞窟の奥へ奥へと進んでいた。

さすがのフォルダン公爵も強力な攻撃を連続して放つ事は出来ない。サルダーニャが業火の炎を手から繰り出せば、魔物達の身体が燃え上がり、一瞬にして炭になる。シルバが強烈な冷気の塊を投げつければ、魔物達の身体は凍り付き、ロッドが稲妻を繰り出せば、凍り付いた魔物が粉々に砕け散った。


4人は走りながら、シルバが叫ぶ。


「奥はまだなのか?随分、走っているように思えるが…」


ロッドは攻撃を繰り出し、稲妻で敵を吹っ飛ばしながら。


「ハァハァ。連続はキツイ…。フォルダン公爵、一発頼む。」


フォルダン公爵は、手に光を集めながら。


「もう、10発は繰り出しているぞ。もっと若ければ無理も効くが…」


ごおおおおおっーーー。


光を投げつけて、光は彗星の如く轟音を放ちながら突き進み、魔物達を一瞬にしてチリにする。


サルダーニャがハァハァ息を荒げながら。


「もっと鍛えておけばよかったかのう。おおっ。あれはなんだ?光が見える。」


洞窟の奥に明るく輝く光が見えた。


4人が近づけば、そこから魔物がぶわっと湧き出ているようだ。


魔物をサルダーニャが業火を繰り出して、炭にすると、光は大きな鏡のようだった。


フォルダン公爵が叫ぶ。


「破壊するぞ。」


その時である。洞窟が急激に揺れた。ゴゴゴゴゴっと音を立てて。


洞窟中に断末魔のような声がこだまする。


グオオオオオオオオオオオオオオっーーーー・


ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーー


ギャアアアアアアアアアアアアっーーーーーー。



鏡の中から、一気に化け物達が、ぶわっと湧き出た。

至近距離である。

フォルダン公爵はとっさに結界を張り、皆を守る。

サルダーニャが業火を化け物達に繰り出す。

それと当時にシルバもロッドもそれぞれ攻撃を繰り出した。

とどめにフォルダン公爵も光の玉を投げつける。


化け物達は吹き飛び、大きな鏡にヒビが入る。


ミシミシミシと音を立ててヒビが広がり、バリンと音を立てて、一気に鏡が崩れた。


洞窟の中に青い小さな光が、無数に飛び交っている。


サルダーニャがそれを見て。


「聖女の祈りで、天に魂が帰ろうとしておる。」


フォルダン公爵が魔法陣を展開する。


「グリザスの元へ戻るぞ。」


4人は転移した。




その頃、グリザスはというと、クロード達は聖剣で無数の手を斬り続け、見習い達は縄でグリザスの身体を支えて、皆、汗だくで引き込まれないように守っていたのだが、急に足を引っ張る力が無くなった。見習い達に床の上に引き上げて貰う。

クロード達も床の上に戻り、皆、疲れ切ってフウフウと息を吐いていた。


青い光が王宮の広間に無数に飛び交っている。

遠い国境の地で、聖女リーゼティリアが祈っているのだ。


ゆっくりとその青い光は天に昇り始めた。


グリザスはそれを見て、とても眠気が襲ってくる。


フォルダン公爵達が王宮の広間に転移して戻って来た。

クロードがフォルダン公爵に声をかける。


「どうでした?」


「化け物を生み出す元は、破壊したが、グリザスがとても危険だ。」


「え?」


- ああ…俺も皆と一緒に天に帰りたい。-


床に倒れ込む。クロードがその身体を抱き締めてくれた。

クロードの魂が…グリザスに憑依している魂が包み込んでくれるのを感じる。


「駄目ですよ。グリザスさん。貴方を縛り付けてでも俺、離しませんから。

愛しています…だから、逝かないで下さいね。」


目を開ければ、クロードがにっこりと笑っていた。


そして、熱く囁く。


「ちゃんと我慢出来たら、ご褒美あげますから。後でうんとエロい事をしましょう。」


うわっーーーー。ここでそんな事を囁くか???安らかな気持ちが…皆と一緒に天に戻りたい気持ちが吹き飛んでしまった。


周りを見渡せば、皆、呆れた顔でこちらを見ている。


穴があったら入りたい…いや、洞窟みたいなのは怖いので、毛布を被って隠れたい。マジでそんな気分なんだが…。グリザスはとても恥ずかしかった。


その時、フローラから通信魔具で、フォルダン公爵に連絡があった。


皆に、フォルダン公爵が内容を教えてくれる。


「無事に鎮魂祭が終わったそうだ。アマルゼの死霊達も、戦場に彷徨っていたマディニア王国の死霊、そして聖女を陥れた女も全て、天に帰ったとの事だ。」


クロードがグリザスに抱き着く。


「よかったね。グリザスさん。これで、心配事が一つ減った。」


グリザスもクロードを抱き締めて。


「有難う。クロード、守ってくれて。」


それから、立ち上がると皆に向かって礼を言う。


「みんな、有難う。俺は皆のお陰でこうして生きていられる。本当に感謝したい。」


ギルバートやカイルが抱き着いてくる。


「よかったねー。グリザスさん。」


「本当に良かった。」


ミリオンも抱き着いてきて。


「良かったぜ。お前、生きているんだな。」


「正確には死霊だから、生きていないんだが。」


みんな、大喜びしてくれた。


フォルダン公爵は、広間に敷物を敷くと、ごろりと寝転がって。


「少し、休ませてくれ。さすがに11発はないだろう…」


サルダーニャも敷物を用意して横になり、


「転移する力も残ってはおらぬ。」


シルバやロッドも同じく、ぐったりして。


「お前らに関わると、ろくな目に合わぬ。」


「同感だ…。こんなに走ったのは久しぶりだ。」


二人とも、敷物を敷くと仰向けに寝転がった。


全員が全員、疲れ切ったようで、グリザスは本当に申し訳ないと思った。


クロードがグリザスの肩をポンと叩いて。


「今度、お礼の品を持って、改めて挨拶回りをしましょう。ね?グリザスさん。」


「そうだな…。」


ミリオンが寝転がる魔族達の身体に毛布を掛けて回っている。

ファルナードがメイドさん達に魔族達への飲み物を持ってくるよう、頼んでいるようだ。


騎士団見習い達は、メイドさん達に飲み物を頼んだり、お菓子を食べたり、

ノンビリと敷物の上で休んでいた。


王宮の天窓から差し込む日差しが眩しくて、グリザスは見上げる。


ディオン皇太子殿下達が帰ってきたようだ。王宮の広間に入って来る。

聖女リーゼティリアの金の髪がキラキラと煌めいていて、グリザスの方を見て、にっこりと微笑んだ。


ディオン皇太子が、そっちも大変だったのか?と聞いてきたので、まずは報告をする。


「化け物をフォルダン公爵や魔王達が、退治してくれました。騎士団見習い達やミリオン達も俺が、アマルゼの死霊に引き込まれそうになったのを阻止してくれました。」


「そうか。皆、よくやってくれた。有難う。」


ディオン皇太子は、ミリオン達と話を始めたので、グリザスは聖女リーゼティリアの傍で跪いて、


「有難うございました。聖女リーゼティリア。」


「いえ、皆の力です。お互いに無事で良かったわ。」


ああ…俺の生き方に皆のお陰で一つの区切りがついた…。


鎮魂祭が無事に終わった。後は…いよいよ、クロード達の騎士団正試験の日が近い。

そして、グリザスは自分は正騎士扱いだけれど、学問の試験は受けようと思っていた。


見習い達全員で正騎士になりたい。俺も学問で合格ラインを目指したい。



ああ…今はともかく、こうしてクロードと皆と一緒にいられる事を感謝するグリザスであった。



ディオン皇太子殿下達の立ち会った鎮魂祭はフローラのお話の方で掲載しています。


後、2話位で終わる予定。よろしくお願いします。(黒竜魔王退治はフローラの方で書きます。こちらは、騎士団試験と、グリザス達の結婚式かな。)

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