プロポーズしちまった…俺は幸せ者だな。(ミリオン)
翌日、ミリオンは王宮のカフェにクロードから呼び出された。
珍しい事である。普段はこちらが会いに行くと、辛辣な言葉を投げかけて最初は迷惑がるクロードなのだ。まぁ、それはクロードなりの挨拶だと思えるのだが。
いつも一緒にいるであろうグリザスがいない。ルディーンの姿も見えない。
カフェの席に座っているクロードに近づいて。
「珍しいな。お前が俺個人に用事があるなんて。」
「ともかく、座りなよ。ここのケーキ、美味しいんだ。」
クロードと対面に座り、珈琲と、お勧めのチーズケーキを頼む。
用件を聞いてみる。
「で?話ってなんだ?」
「ファルナード様の事、どうするのかな…って。」
「え?呼び出してまで聞く事か?」
ふと、ミリオンの背にカーテンがあるのだが、その奥から話し声が聞こえた。
聞き覚えのある声である。
「どうです?この指輪、美しいでしょう。」
「ああ…なんて綺麗な金色の…細工も素晴らしい。」
何だ?ルディーンが…それも、ファルナードに指輪を勧める声がするぞ。
「貴方の薬指にぴったりだ。その細い指にとてもよく似合う。いかがです?」
薬指って、特別な指輪じゃねーかよ。どういう事だよ。
と、怒鳴り込んでやりたくなったが、自分はファルナードとは何でもないし…焼きもちなんて妬いていないぞと思って、ちょっと様子を見てみようと…聞き耳を立てる。
ファルナードがうっとりとした声で。
「ああ…なんて素敵な…」
「差し上げますよ。お美しい貴方の為に…」
「いいのか?ルディーン。」
「ええ…ちょいとその唇にキスをさせて下さったら、おまけもつけますよ。」
「キスはちょっとな…。でも、そちらの指輪も欲しい…」
「ミリオンなんていうヘタレより。俺の方が余程、貴方を楽しませますから…」
「そうだな…。ミリオンはちっとも誘いに乗ってくれない。俺は乗り換えた方がいいのだろうか。」
「乗り換えましょうよ…さぁ。ファルナード様。」
我慢できなかった。思わずカーテンを開けて、怒鳴り込んだ。
「おいこら、ヘタレとはなんだっーーー。ルディーン、お前、ディオンの愛人だろーが。
なんでファルナードを口説いているんだ?ファルナードもファルナードだ。簡単に乗り換え…あれ?何でグリザス、お前までいるんだ?」
ルディーンの隣にはグリザスが座っていて。
「いや…立ち会ってくれって言われてな。二人の芝居に。」
ファルナードが笑い出して。
「お前が俺の誘いを断り続けるから、ちょっとからかってみたくなった。」
ルディーンも楽し気に笑って。
「ああ…おかしい。でも、ミリオン。いい加減にこんな美人のお誘いを断っていては駄目ですよ。それから…この指輪のオマケの方は、アンタ用ですよ。どうします?この指輪。俺からお二人にプレゼントしてもいいんですが…。こういう物って、カップルが買ってプレゼントするものでしょう?」
クロードがポンとミリオンの肩を叩いて。
「ほら、どうする?いい加減に覚悟決めろよ。」
あああ…こいつらにはめられた。完璧にはめられ…
「解ったよ。この指輪2つは俺が買う。ルディーン、いくらだ?」
ルディーンはニンマリ笑って。
「そう来ないとね。お安くしておいて、2つで金5ですかねぇ…。」
「高いっ。もう少し、下げろよ。」
「ここで、男を下げてどうするんです?値切るなんてファルナード様が泣きますよ。」
ちらりと見ると、ファルナードがじっとこちらを見て来る。そして、微笑んだ。
ああ、泣いてばかりいたあの男が、いい笑顔をするようになったな…
すると背後から別の男に声をかけられる。
「ほら、ミリオン…。ここは男らしく。」
リンドノールだ。こちらも鮮やかに微笑んで。
「解ったよ。2つで金5、後で金は持ってくる。」
そして、置いてある小さな箱の一つから、指輪をミリオンは手に取って、
「ゴホン。ファルナード、改めて、左手を出してくれ。」
ファルナードは左手を出す。薬指にその指輪をはめて。
「俺と、まずは恋人…。いや、この際だ。結婚してほしい。俺は一生お前を守るから。
二度と、ジュエル帝国の連中にも、第六魔国の連中にもお前を渡さない。
結婚してくれるか?」
「ミリオン…。まさか、結婚を申し込まれるとは思わなかった。」
「俺の本気の恋愛は、真剣勝負だ。責任が取れない恋愛はしねぇよ。」
ファルナードが抱き着いてきた。
「ああ、嬉しい。喜んで。」
周りにいたクロードやグリザス、ルディーン、リンドノールが拍手をする。
それにつられて、カフェにいた客の全員も拍手喝采した。
グリザスに肩を叩かれて。
「良かった。お前には幸せになって欲しかったから、友として嬉しい。」
「有難う。グリザス…」
リンドノールも、ファルナードに向かって。
「ああ、これで私は安心して、自分の恋愛に励めますよ。よかった。本当に…」
「リンド…本当にお前には心配かけたな。有難う。」
ミリオンは幸せを感じた。いい友を持って、俺は恵まれているな…
でもすぐに結婚という訳にはいかないので、(今はファルナード自身がジュエル帝国から狙われているとか、黒竜魔王討伐とか色々と難題を抱えている)とりあえず恋人という事に話し合って決めて、二人でイチャイチャとカフェを出る。クロード達もワイワイとカフェを出た所で、ディオン皇太子が非常に不機嫌に立っていた。
「貴様ら。どうして俺を呼ばない。ミリオン。お前、俺の友達だよな?」
思いっきりディオン皇太子に胸倉を掴まれた。
「あ…いやその俺に当たられても…。はめられたのは俺だからな…」
「じゃぁ首謀者は誰だ?グリザスはこういう事には疎いからな。ルディーンかクロードだろう。それともリンドノールか???さぁ吐け。」
ファルナードがディオン皇太子に。
「私が相談したのだ。だから首謀者は私だ。どうか許して欲しい。ディオンのお陰で、こうして立ち直る事が出来た。本当に有難う。」
ミリオンの胸倉から手を離して。
「まぁいい…。お前らの結婚式には必ず、俺を呼べば許してやる。」
ミリオンはディオンの肩を叩いて。
「必ず呼ぶから。な?俺の戦いの相棒はお前だ。ディオン。」
「それならいい。影の者の情報によると、ルディーン。芝居とはいえ、口説いていたな…」
ギロリとルディーンを睨むディオン皇太子。
「だから、ちゃんとグリザスさんを立ち会い人にして…。」
「俺以外を口説くとは…愛人として自覚が足りん。」
ミリオンは周りを見渡した。
思いっきり注目を浴びている。
ああ…最近、ディオンの噂って立っているんだよな。
男の愛人を囲っているって…まぁあれだけ、色々と大騒ぎをしていたら、噂も立つわな…
そして、ルディーンが絡むと、ディオンは頭に血が上って、どこか抜けちまうんだよな。
ミリオンはディオン皇太子の肩を抱き寄せて。
「ほらほら、ここじゃ注目の的だからな。お前の友情、嬉しく思っている。」
そして、もう片側の手でファルナードを抱き寄せる。
「いい伴侶、いい友、俺は幸せだな…。」
午後の日差しが眩しい…。今日は人生で一番いい日だ。
幸せに思うミリオンであった。
外堀をコンクリートで埋めて、天守に梯子をかけるとこうなります笑




