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引き裂かれてしまった…

翌日の朝、聖女リーゼティリアが王宮に出仕してくるのを、入り口で待ち構えて、

クロードと一緒にグリザスは捕まえる事にした。


もし、一人で待ち構えていたのなら、ストーカー男決定であろう。

あのリーゼティリアの夫、ユージンから散々不倫を疑われていたのが落ち着いているというのに、再燃してしまう。


クロードと共に待っていると、リーゼティリアが声をかけてきた。


「おはようございます。グリザス様、クロード。」


グリザスはリーゼティリアに近づいて。


「おはよう。実は鎮魂祭について、聞きたい事が…。祭で俺の魂は成仏しないのか?俺は死霊だ。」


リーゼティリアは安堵させるように。


「ええ…貴方の身は、特別に守らないといけませんね。王宮の広間に、結界を設けて、

そこでお守りしようと考えていたのです。不安な気持ちにさせてしまってごめんなさい。早くお知らせすればよかったわね。」


「俺の事を考えていてくれてありがとう。鎮魂祭を取りまとめるのは大変だと思う。」


「それは私の役目ですから。沢山の人を死なせてしまった、200年前の聖女としての…」


クロードは頭を下げて。


「本当に有難うございます。当日は、グリザスさんの傍にいて精一杯守ります。」


リーゼティリアはクロードに。


「魂の分割をされているのなら、優しく包み込んで、連れていかれないようにしてあげて…」


「勿論です。俺はグリザスさんを愛していますから…絶対に、成仏させません。」



「そう言って貰えると心強いわ。」


そして、リーゼティリアは、


「それじゃ、仕事があるから、又、詳細が決まったらお知らせします。」


と言って、王宮の中へ入っていってしまった。




二人で騎士団寮へ帰ろうと歩いていると、


建物の陰でミリオンとファルナードが立っていて、


ファルナードがミリオンの首に両手をひっかけて、背伸びをし、耳元で何やら熱く囁いている。


クロードがチラリとその様子を見て、


「口説いているよね…あの様子じゃ…、ミリオンはOKしていないのかな。」


「さぁどうなのだろうか…」



その時、声がどこからか聞こえて来た。別の方向だ。


「パリンと切っておしまい。」


「パリンと?」


「そうよ。パリンと…。」


「鎮魂祭なぞ、させてなるものか…。さぁ…」



パリンっ…何かが割れる音がする。


空に稲妻が走った。クロードはグリザスと共に空を見上げる。


パァアアアアアと光が走って、あたりが真っ白になり、グリザスはそのまま気を失った。




- クロード、クロードは無事なのか… -


騎士団寮の自分の部屋のベットに寝かされていて、心配そうに自分を見ていたのは、

ギルバートとカイル…そして、ディオン皇太子殿下とローゼン騎士団長、ファルナード、ユリシーズまでいたのである。

聖女リーゼティリアが、グリザスの手を両手で掴んでいて。


「目が覚めましたか?グリザス様。」


「聖女様…。俺は一体全体、クロードはどこだ?クロード…。」


ディオン皇太子が、グリザスに向かって。


「魔族が消えてしまったのだ。フォルダン公爵も、フローラも、アイリーンも…魔族と名のつく者は全て。」


「嘘だ。それじゃクロードも…」


ローゼンが説明する。


「何が起こったのか…。ともかく、いなくなったものを調べたら、フォルダン公爵とその使用人達、フローラ、アイリーン、クロード、ミリオン、ルディーン、マギー・エスタル家の人々。スーティリアは魔界にいたり、こちらに居たりするから、解らぬが…。」


ユリシーズがぽろぽろと泣きだして。


「アイリーン、どこ行っちゃったんだろう。昨夜まで一緒だったのに…朝、起きたら隣にいなかったんだ。」


ファルナードが椅子に座ってため息をつき。


「イチャイチャしていたら、いきなり辺りが真っ白になって、ミリオンが消えた…。彼らは生きているのか?」


グリザスは答える。


「生きているはずです。ファルナード殿下。クロードが死んだら、俺も死んでいるはずですから。」


そうだ…魂がまだ、繋がっているのだ…。もし、求めたらクロードと接触できるのではないのか?


ディオン皇太子に向かって。


「俺は魂の世界で、クロードと愛し合って参りました。何度も…」


「何だ?惚気か?」


「いえ、だから魂の世界でクロードと接触出来ないか、俺もクロードに呼びかけてみますが、クロードから接触があるかもしれません。あちらがどういう風な状況か解れば何か打開策が見つかるのではないかと。」


ディオン皇太子は頷いて。


「やってみてくれ。ともかく手がかりが欲しい。」


ギルバートやカイルも心配そうに。


「クロードは良い俺達の友達だ。」


「心配だ。何かわかったら教えてください。グリザスさん。」


「了解した。」


しばらく一人にしてもらう。

皆に部屋から出て行ってもらった。


ベットに寝転がって、クロードに呼びかけてみる。

魂に魂を絡めて…。深く強く…。

俺はここにいる。だから、クロード、俺を魂の世界へ呼んでくれ…


ふと、見上げれば、夕空が美しく、麦畑が広がって、

いつもの景色が輝いていた。


「クロード。どこだ?どこにいる?」


必死に探す。しばらく探していると、目の前に灰色の幕が空から垂れ下がり、空間を二分していて、その幕の向こうにクロードが立っていた。


「クロードっ。」


「グリザスさん。」


隔たれた幕の傍まで行くと、クロードも近くまで走ってきた。

互いに抱きしめ合いたいが、幕が邪魔をして、抱きしめる事も触れ合う事も出来ない。


幕を隔てて互いに顔を見合わせて。


クロードが切羽づまった様子で。


「よかった。こうして接触出来て。空間が隔てられてしまったんです。何者かに…。

俺達、魔界に飛ばされて、こちらに来ることが出来なくなってしまって。」


「皆、無事な事は無事なんだな。」


「ええ、皆、無事で今、第一魔国にいます。フォルダン公爵の家の人達も、ミリオンやルディーン達も。」


「どうしたら、この状況を解決できるんだ?」


「鍵です。そちらの王家にある黄金の鍵と、魔界にある闇色の鍵を、空間の臍に同時に突き刺せば、また、魔界と人間界は繋がります。何者が、割って壊してしまったと、人間界と魔界の繋がりを…」


「空間の臍?それはどこにある?」


「北の牢獄ってありますよね。そこにある岬の灯台の中に…そこへたどり着いて、臍の鏡の前に立てば、互いの姿は確認できます。」


「それならば、さっそく王家から黄金の鍵を…」


「待って…」


クロードはグリザスにストップをかけた。


「本当にいいの?また、繋げてしまって…」


「また?どういう事だ?」


「もともとは魔界と人間界って別の次元の物なんです。地下っていう事になっていますが…それを過去に強引に繋げてしまった。だって200年前。魔物はいたけど、魔族はいなかったでしょ?」


グリザスは嫌な予感がした。


「クロードは俺とはもう会いたくはないのか?」


「フローラは大泣きしているし、アイリーンもルディーンも悲しんでいる。ミリオンやスーティリアはケロってしているけど…。後、魔界にいた第五魔国ナターシャだけは、人間界に飛ばされなかった。赤ちゃんがお腹にいるからかもしれないけど…マリアンヌ様はそちらにいるだろうし…。

会いたいよ…結婚して一緒に暮らしたかったな…闇色の鍵がどこにあるかこっちは解らないんだ。探してみるけど…

もし、見つからなかったら…

ディオン皇太子殿下に伝えて下さい。魔王は復活しても、地上に出られない。

だから、そちらでやるべきことは鎮魂祭だけになりますって。


俺、貴方と出会ってよかった。

とても幸せだったよ。

色々と無茶させちゃってごめんね…。


後、10日でグリザスさんと話せなくなる。

闇色の鍵を見つけて、この状態を解決しないと、魂の分割が強制的に解除されるんだ。


見つかったら連絡するよ…」


「こちらは北の牢獄へ皆で向かう。待っている。クロード。

必ず、見つけ出してくれ。

俺はクロードと結婚したい。今度は俺からプロポーズする。

どうか結婚して俺と暮らしてくれ。クロード。必ず約束を。」


「有難う。グリザスさん。」


幕越しにクロードとキスをした。


幕が揺らめいて、夕空の空間が薄くなり、そしてグリザスは部屋で目覚めた。


騎士団寮の客室にいた、ディオン皇太子とローゼン騎士団長、リーゼティリア、ユリシーズとファルナード。

グリザスはそこへ行くと、クロードとの話を説明する。


ディオン皇太子は、その説明を聞いて。


「鍵だな。黄金の鍵。ローゼン、王宮の宝物庫を探すぞ。」


「かしこまりました。」


ユリシーズが叫ぶ。


「俺も手伝います。」


ファルナードも頷いて。


「俺も手伝おう。」


グリザスがハっと思う。


「ファルナード様は危険な状態に変わりないのでは?第六魔国は狙ってこないでしょうが、

ジュエル帝国が諦めたとも思えません。」


ディオン皇太子がグリザスに向かって。


「お前だって危険がある。鎮魂祭関連の魔物のせいかもしれんのだ。今回の事は…

原因が解っていないのだからな。ファルナードは俺と行動しろ。いいな。」


グリザスはふと思い出した。


「鎮魂祭をさせてなるものかと言っていました…。その関係の者の仕業かもしれません。」


その時、リンドノールがゴイル副団長と現れて。


「立ち聞きして申し訳なく、皇太子殿下。北へ行く時は是非、私の背中へ乗っていってください。5人位なら運べます。」


ゴイルはローゼンに向かって。


「留守の間は責任を持って騎士団を預かる。だから、騎士団長。必ず鍵を開けて、魔族達との世界を元通りにくれ。それがローゼン、お前の望みだろう?」


ローゼンは頷いて。


「私の婚約者はフローラしかいない…でもいいのですか?ディオン皇太子殿下。黒竜魔王が復活し、鍵を繋げ元通りにしたら、この地上も危険に。」


ディオン皇太子はきっぱりと。


「父上も同じ気持ちのはずだ。マディニア王国は魔国の魔王達と共に歩む国だ。

黒竜魔王が復活する?だったら、これまで通り、協力して倒す方針に変わりはない。

ローゼン。お前はフローラに会いたいのだろう?もし、俺が黄金の鍵を使わないと言ったら諦めるのか。」


「私は…皇太子殿下を殴り倒してでも、鍵を使って繋げます。罪に問われるなら、罪に問われる覚悟。フローラにもう一度会いたい…」


ディオン皇太子はローゼンの肩を軽く叩いて。


「お前のその言葉…聞けて嬉しいぞ。俺もルディーンのあの小生意気な面を見たくて仕方がない。ミリオンとまた、共に戦いたい。あいつは俺の相棒だ。」


ユリシーズも頷いて。


「アイリーンに会いたい。俺、お父さんになるんだから、これでお別れなんて嫌だ。

鍵を差しに行きましょう。」


グリザスもディオン皇太子に強く訴える。


「また、魔界と人間界を繋げましょう。俺もクロードに会いたい。会って必ず結婚したい。」


聖女リーゼティリアは、


「グリザス様。幸せになって下さいね。もっともっと幸せに。

皇太子殿下、鎮魂祭の準備は私にお任せ下さい。だから、安心して北の牢獄へ…」


「有難う。頼むぞ。リーゼティリア。近衛騎士10名を警護につけよう。」


「助かりますわ。」


ファルナードは何と言ったらいいか解らないようだ。

まだ、ミリオンとは恋人という訳ではないから、仕方がない。


とりあえずは王宮へ皆で向かった。宝物庫で黄金の鍵を探さねば。


どうなるのであろうか…



魔界側の様子はフローラの物語の方で、書く予定です。

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