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晩餐会の前、フォルダン公爵家にて

翌日の夜、王宮の晩餐会が開かれることになった。

ジュエル帝国の皇女メルディーナが昨日、王宮に到着した。外交官シュッセンと護衛騎士10名を従えている。その歓迎の式典である。


ファルナードについては、マディニア王国へ亡命し、それを受け入れ宣言を昨日、ジュエル帝国へしたとの事。しかし、第六魔国魔王ジルギュルトはジュエル帝国が諦めない限りファルナード奪還を諦めないだろう。

晩餐会に出席する関係者は多い。それによりファルナードを守る人員が削減されてしまうのはきつい。

ディオン皇太子やセシリア皇太子妃の考えはこうだった。


「車椅子でもかまわん。出席してほしい。」


「食事はファルナード様のものだけ、軽めにしておきますわ。リンドノール様と共にぜひ出席を。」


ファルナードとリンドノールに晩餐会の出席を求めた。


フォルダン公爵からそれを聞いた、ファルナードは頷いて。


「守ってもらう迷惑をかけているのは俺だ。リンドノールと共に喜んで出席させて頂く。」


快く出席を同意した。




グリザスはクロードと共に、翌日、まだフォルダン公爵家にいた。


客室に泊まらせて貰ったのだ。朝食を終えて、居間で紅茶を飲みながら、(グリザスはただ座っていただけだが)

昨夜遅く戻って来たフローラがクロードに。


「ローゼン様との婚約は継続が決まったわ。本当によかった。一時はどうなるかと。」


「それは良かった。俺もほっとしたよ。」


アイリーンも優雅に紅茶を飲んで、


「これで、また、婚約者を取られましただなんて事になったら、フォルダン公爵家の娘は何をやっているんだって噂になったわ。本当に良かったわね。」


グリザスは胸が痛い。


何だかアイリーンは時たま、皮肉を込めてくる。


ユリシーズがいない?ファルナードの所だろうか?


「ちょっと失礼。」


断って席を外した。



ファルナードがいる部屋にはフォルダン公爵とリンドノールがいるが、他に誰も見当たらない。


庭に出てみれば、ユリシーズとローゼンが話をしていた。


物陰に隠れ、思わず聞き耳を立ててしまう。



ユリシーズがしゃがみ込んで。


「俺、思うんだ。この国はいずれ、魔族に操られてしまうんじゃないかって。

だって…そうでしょう?フォルダン公爵の力は強くて、いずれ、後を継いで宰相になるローゼン騎士団長の婚姻相手はフローラだ。俺はその…力がない勇者だけど、アイリーンが相手だし…。もし、クロードがいずれ騎士団長になったら…武力の中心は魔族だ。

ディオン皇太子殿下だって、ルディーンに夢中なんでしょう?こんなんでいいんでしょうか??俺、頭悪いから、一度、ローゼン騎士団長に聞いてみたいと思ったんです。」


グリザスは思った。


あああ…確かに。これじゃ…魔族がこのマディニア王国を陰から操っていいようにしたいって企んでいるようにしか思えないぞ。しかし、何故、今まで誰も突っ込まなかったんだろう??


ローゼンは建物の柱に寄りかかりながら。


「まだ雪が残っている…地面は冷たいだろう?」


そう言われてユリシーズは立ち上がる。


そして、ローゼンは言葉を紡いだ。


「そんな事は皆、解っている。マディニア国王もディオン皇太子殿下も…。

だがこの国はもう、魔族の協力がなければやっていけない程、フォルダン公爵家が楔を打ち込んでいる。確かに危険はあるかもしれない。相手は魂を操るからな。

だが、お前はどう思う?アイリーンは過激な女だ…だが、その心は普通の女性ではないのか?クロードだっていい奴だろう?フローラだって、一生懸命な可愛い女性だ。

私はフローラと婚約破棄をする選択はない。君はアイリーンから逃げたいのか?」


ユリシーズは首を振って。


「アイリーンを愛しています。産まれてくる子供も。逃げたいなんて思わないけど…。

その…騎士団長も、淫らな事をされているのですか?魔族は触手を持っているから。」


ローゼンは顔を赤くして動揺したようだ。


珍しい。いつも冷静な騎士団長が…


グリザスが聞き耳を夢中で立てていると、

ローゼンは断固とした口調で。


「それでも私はフローラを愛している。私はフォルダン公爵がこの国を操って悪い事をしようとしているとは思えない。むしろ、共に歩んでマディニア王国を発展に働いてきたと尊敬している。いずれ、魔族と人間との付き合いが深くなるにつれて、色々と問題が起きてくるだろう。だが、今は…私は魔族を良きパートナーとして、共に国の為に尽くすつもりだ。我が婚約者フローラとも、そして、フォルダン公爵やクロードや他の魔族達とも。」


あああ…さすが騎士団長、いい事を言うとグリザスが感心していると、背後から声をかけられた。


「わぁ、ユリシーズ、悩んでいたんだ。さすが騎士団長、いい事言うよね。」


クロードである。


そして、にっこり微笑みながら、二人に近づいて行き。


「ユリシーズは、魔族の事、嫌いなのかな?まぁ…黒竜魔王と同族だからね。俺が騎士団に入ったのは。人と言うものを見極める為…。人と魔族の在り方を見極める為だったんだけど。

うううん。人も魔族も変わらないんだよね。魔族の中で高位魔族は、人の魂に干渉して操る事が出来るけど。心は一緒だよ。

ギルバートやカイル、騎士団の仲間達と付き合ってよく解ったんだ。好きだ嫌いだって悩んだりするし、泣いたり笑ったり…。確かにいずれは、問題も出てくるかもしれない。魔族と人間と婚姻するのに、国の許可が必要とかね。だけど、今は…。俺達魔族を信じて欲しい。

ロッドだってシルバだってミリオンだって、皆、いい奴だよ。共にマディニア王国の発展の為に尽くしたい。

もし、野心を持った魔族が出て、このマディニア王国に害を及ぼすというのなら、俺は、マディニア騎士団の一員として戦いたいよ。」


ユリシーズはクロードの手を両手で握り締めて、頭を下げて。


「ごめん…クロード。そうだよね…。俺、変な事で悩んじゃった。本当にごめん。」


涙をポロポロと流す。


クロードは首を振って。


「いいんだよ。内心では皆、そう思っているかもしれない…。魔族に国を操られてしまうんじゃないかって…。なんだか悲しいな。」


ローゼンはクロードに。


「私は、もし、宰相になる時に空位の騎士団長の席に誰を推薦するかと言われたら、その時にクロード・ラッセルが一番実力があるならば、魔族であるなしに関係なく、お前を推薦するつもりだ。差別するつもりはない。」


「ありがとうございます。騎士団長。とても嬉しいです。」


グリザスはクロードの傍に行き、言葉をかける。


「マディニア王国騎士団は本当によい場所だ。死霊である俺にも差別なく扱ってくれた。

俺はそこで働いて学ぶことが出来て誇りに思う。」


クロードも頷いて。


「そうですね…。俺も同様です。」


そしてローゼン騎士団長に向かって。


「これからもよろしくお願いします。ローゼン騎士団長。」


「勿論だ。まずはしっかりと正騎士になってくれ。」


フローラが心配そうに様子を見に来た。


「何を話していらしたの?」


ローゼンが微笑んで。


「何でもない。すぐに戻る。今宵の晩餐会の支度をしないとな。グリザス、お前も出席をしてよいとの事だ。ファルナード殿下の傍で護衛をしてほしい。」


「了解した。しかし、俺は食べる事が出来ない。」


「それは我慢してほしい。クロードは、魔王達の間に座って、ともかく接客だ。ディオン皇太子殿下は、いかに我がマディニア王国と魔王達が仲が良いか、見せつけると言っている。

メルディーナ皇女と、シュッセン外交官にな。」


「解りました。」


そして、ローゼンはフローラに。


「私達も魔王達の間に座って、接客する。後、第四魔国魔王のティムはユリシーズ、君が面倒を見て欲しい。勇者殿がお気に入りだ。」


「解りました。この間、お会いした時も勇者に憧れているようでした。」


フローラが、ローゼンに聞く。


「誰が誰を接客するのですか?ローゼン様。」


クロードが両腕を組んで。


「姉上はディオン皇太子殿下がお気に入りなんだよな。俺達魔族の、魔王代表みたいなものだし、ディオン皇太子殿下夫妻と第一魔国魔王夫妻で、話をさせておけばOKだと思います。

フローラと騎士団長は、シルバとマリアンヌ様とロッドのお相手を。マリアンヌ様と仲がいいフローラなら大丈夫だろう?」


「ええ。任せておいて。でも、残りのレスティアスは?」


「俺が話をしてみるよ。それ程、親しい訳じゃないけど…。第四魔王ティムはユリシーズが相手をする事になったし。」


ローゼンがクロードに。


「お前の良い所は、交流関係が広い所だ。私はそれが羨ましい。レスティアスの相手、期待しているぞ。クロード。」


「ありがとうございます。」


確かに、クロードは人に好かれやすい。ギルバートやカイル、ロッドやシルバ、ミリオンやルディーン。皆、クロードを好いて集まってくる。


皆で、居間に戻った。


アイリーンが不機嫌に。


「私を除いて何を話していたのかしら?今夜の晩餐会、私も行くわ。」


クロードが慌てて。


「君はレスティアスに近づかないで欲しい。かなり恨まれているから、俺が接客する事になったんだ。あああ…胃が痛い。俺もあまりいい印象持たれていないんだよな。」


アイリーンが両腕を組んで。


「そうね…魔王の時にかなり虐めたから。」


後から入ってきたフローラが。


「そうだわ。フィリップ殿下も出席されるはずよね。フィリップ殿下とお話をさせたらどうかしら。」


クロードも頷いて。


「確かに、それが筋だよね。だって、俺が接客したって魔族なんだし…君は騎士団長の婚約者だからいいけれど。」


ローゼンもソファに座りながら。


「それではフィリップ殿下に頼むとしよう。クロードは私達と一緒に、接客をしてくれ。」


第二王子フィリップは真面目は男だ。きっとレスティアスと良い話が出来るのではないか…


一旦ソファに座った皆であったが、そろそろ支度をしなくてはならないという事で、皆、支度をしに居間を出た。ローゼンは自分の屋敷に、フローラの転移鏡で送ってもらい、戻ったようだ。さて、晩餐会、上手くいくのか。


支度の必要のないグリザスは一人。居間でぽつんと取り残されたのであった。


ファルナードはフォルダン公爵が今、ついているから安心だが…


午後の日差しは傾いて、時間はせわしなく過ぎていくのであった。


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