ジュエル帝国へ
とある日の夜、いよいよ、グリザスが人に見える魔法図書を探すのと、ファルギリオンの聖剣を奪還する為、ジュエル帝国の王宮へ、皆、転移した。
魔法図書を探すメンバーは、8人で、クロードとフローラ、マギーとロッド、サラとシルバ、スーティリアとルディーンがそれぞれ組んで探すことになっている。
あらかじめ調べておいた、王宮の秘密図書が置いてある入口へ、皆集まる。顔をすっぽりと仮面を被り、マントを羽織っている。全身黒づくめだ。
ディオン皇太子とミリオン、グリザス、ユリシーズ、リンドノール、ローゼンの6人はファルギリオンの聖剣を目指して、同じく黒づくめの姿で王宮の庭を走っているはずだ。
クロードが扉に手を当てて、逆行の魔法をカギに向かってかければ、時間が遡り、鍵が壊れて、扉が開けられた。
皆、中に入って驚く。
床から天井まで図書でぎっしり、そしてそれが広大な部屋に収められているのだ。
スーティリアがきょろきょろして。
「これは探しきれないわーーー。」
ロッドが辺りを警戒しながら歩き出し。
「ここまできて何もしない訳にはいかない。ともかく、探してみよう。」
フローラがスーティリアから借りて来た、水晶を取り出す。
図書の一角に向かって翳せば、空間に文字が凄い勢いで流れ出す。
クロードが虫メガネのような魔道具を取り出し、浮かび上がる字へ向ける。
該当の箇所が書いてある図書ならば、この魔道具が見つけて知らせてくれるはずだ。
他の連中も同じ事をやって図書を探している。
その時である。
「きゃあああああっーーー。」
マギーの悲鳴が聞こえて来た。
皆、慌てて悲鳴の方へ急げば。
マギーの右足に何かがが絡みつき逆さに吊るされて、天井に上がっていく。
ロッドが手から黒い稲妻を発して、その絡みついた糸を切れば、マギーが落ちて来て。
下に走り込んで、ガシっとルディーンが受け止めてくれた。
「ありがとうございますっ。」
真っ青になりながら、礼を言うマギー。
「いえ、どういたしまして。それにしても…」
ルディーンは礼を言いながら、上を見る。
皆、こわごわ上を見ると、巨大な蜘蛛のような生き物が20匹位、天井にいて。
クロードが皆に向かって。
「罠だ。退却するよ。」
スーティリアが魔法陣を展開しようとして、
「駄目っーーー。魔法陣が展開できないっーー。」
扉の方へ走り開けようとするが開かない。
シルバが化け物を見上げながら。
「閉じ込められたか。」
フローラが床に降ろさせたマギーと、近くにいるサラと共に。
「どうしましょう。」
ロッドが手から黒い稲妻をバチバチと発して。
「攻撃あるのみ。女性達は下がっていろ。」
蜘蛛の化け物に稲妻を投げつける。
ぎいいいいいいいっーーーー。
化け物は叫びながら落ちて来る。
落ちて来た化け物は小さな黒い宝石に化ける。
スーティリアが叫ぶ。
「魔法で作られた化け物だわ。」
クロードが頷いて。
「何はともあれ攻撃だ。」
皆、一斉に天井の蜘蛛の化け物に攻撃をした。
「くらえ。」
シルバは氷の槍を次々と投げつける。
それは蜘蛛を串刺しにしていき、蜘蛛は小さな黒い宝石に代わり、次々と床に落ちて来る。
クロードは、呪文を唱えると、両手に黒い丸い塊が出来き、それを化け物たちに次々と投げつける。
それが蜘蛛の足に着くと、時計が現れて凄い勢いで逆行する。
小さな黒い宝石に蜘蛛が代わり、天井から次々と落ちてくる。
化け物の時間を逆行させたのだ。
ルディーンも呪文を唱え、両手に小さな黒い塊を出現させ、次々と蜘蛛に投げつける。
それは、蜘蛛に当たると爆発を起こして、小さな宝石へと蜘蛛を変えていく。
4人の必死の攻撃でなんとか、蜘蛛の化け物を全て黒い宝石に変える事が出来た。
思ったより時間を食ってしまった。
今は、撤退するしかない。
扉が開くようになったので、皆、図書室の外へ出る。
スーティリアが魔法陣を展開する。
「女性陣はマディニアの王宮へ戻って。私達は当初の予定通り行動するから。」
フローラは頷いて。
「解ったわ。気を付けて。」
3人の女性達は、マディニア王国の王宮へ転移した。
建物の外へ5人は出ると、スーティリアは約束通り、空に向かってノロシを打ち上げる。
ひゅうううううううううーちゅどーーーーーーーん。パチパチパチ。
夜空を派手に大きな花火が打ちあがった。
ルディーンが呆れて。
「あれがノロシですかね?」
クロードも驚いたように。
「凄い。あれなら解るね。」
スーティリアが皆に向かって。
「それじゃ転移するよーーー。」
6人を迎えに転移した。
☆☆☆
それより、少し前の事である。
王宮の庭の聖剣の傍に転移した攻撃陣6人。
リンドノールの案内の元、勇者ファルギリオンの聖剣が刺さっている石の傍まで来た。
ミリオンを始め皆、その聖剣を見て、驚く。
「燃えてるぜ。あの聖剣…。黒くて、赤い炎を巻いている。」
ディオン皇太子が近づいて。
「ああ…これが、勇者ファルギリオンの聖剣か…随分と激しい気性だな。」
燃えている聖剣を手に取り、ぐぐっと力を籠める。触っても熱くないようだ。
ディオン皇太子が石から抜き取ると、近くに置いてあった鞘に収めた。
すると炎がすううううっと消えて、黒い剣になる。
その時である。
辺りが松明に照らされて、大勢の気配がした。
そして声がする。
「待っていたぞ。取りに来たのか。ファルナード。戻って来たからには逃がさない。
下賤の側室の生まれのくせして、命に背くとは、さらなる仕置が必要だな。」
そこには、黒の鎧を着た、覇気を纏った男が立っていた。
その右側には同じく黒の鎧の大男。左側には赤い鎧を着た美女が立っている。
ミリオンがわざとらしく笑いながら。
「ふはははははは。俺達の名は、聞いて驚くな。赤い流星盗賊団だ。
有名な聖剣があると聞いて盗みに来た。我が魔導士グリーンベルなら、抜くことが出来るからな。聖剣は貰っていくぞ。」
皆、思った。そんな名乗りをする予定あったか???
黒の鎧を着た覇気を纏う男は、ミリオンの横にいたディオン皇太子に剣を抜くと襲い掛かって来た。
「我が名は皇太子ロベルト。聖剣は渡さん。」
ミリオンはディオン皇太子を庇うように、ロベルトの攻撃を剣で受ける。
ガキンと音がして、ミリオンは後ろへ飛ばされそうになった。
すかさずディオン皇太子はロベルトへ斬りかかる。
ロベルトは薙ぎ払うように弾く。
ミリオンとディオン皇太子の攻撃を右に左に薙ぎ払いながら、ロベルトは。
「お前達、凄い使い手だな。ふはははは。面白い。」
ブンと鋭い突きを入れれば、ディオン皇太子はかろうじて避ける。
さすがロベルト皇太子は強い。
その頃、グリザスとユリシーズは、第二皇子でジュエル帝国騎士団長の大男、アルフレッドと対峙していた。
グリザスがアルフレッドと打ち合ってみれば、一撃一撃が重い。
こんな重い一撃を繰り出す相手は初めてだ。ザビト総監の大斧でもこんなに重くはなかった。
その合間に、ユリシーズがアルフレッドに攻撃を加えるも、簡単にあしらわれて、弾かれてしまう。
非常にまずいのではないか?
しかし、さすが勇者ユリシーズ、再び攻撃し、相手の頬をかすめる一撃を繰り出した。
アルフレッドはユリシーズに向かって。
「ちょこまかとうっとおしい。ちょっと黙らせるか。」
ユリシーズが再び攻撃してきたのに合わせて思いっきり、足蹴りをし、吹っ飛ばした。
グリザスは、ユリシーズっ。と叫びそうになった。
だが、叫んでは駄目だ。正体がバレる。
ユリシーズは何とか起き上がったようだ。
激しい打ち合いが続く。
その頃、ジュエル帝国の皇女メルディーナとローゼンは激しく打ち合っていた。
メルディーナはローゼンと打ち合いながら、余裕で言葉を紡ぐ。
「あら…この型は、マディニア王国騎士団の型ね…それもかなりの使い手。
近衛騎士…いえ、こんな強くはないわ。それならば、貴方は…」
ローゼンは焦る。まさか、自分の剣技の型で正体を推測されるとは思わなった。
リンドノールの脇からの攻撃を余裕であしらいながら、メルディーナは微笑んで。
「ローゼンシュリハルト・フォバッツア騎士団長?まさか…」
ひゅうううううううううーちゅどーーーーーーーん。パチパチパチ。
夜空を派手に大きな花火が打ちあがった。
退却の合図だ。
今まで戦況を見守っていた、ジュエル帝国の騎士団員達が我に返ったように動き出した。
ロベルト皇太子は騎士団員に向かって。
「こやつらを捕らえろ。」
そこへ、スーティリアが魔法陣を展開して、その中から、クロード達4人が現れた、
ロッドが騎士団員達が殺到する前に、ディオン皇太子とミリオンの傍に駆けつけて、稲妻をロベルトに食らわす。
ロベルトが数歩下がった隙に、二人の足元に魔法陣を展開し、転移させた。
ロベルトは悔しそうに。
「お前は魔族か?」
「さぁ…しがない魔導士だ。」
そう言うと、自分も魔法陣を展開し、姿を消す。
クロードとルディーンは、グリザスとユリシーズの傍に行くと、ジュエル帝国の騎士団の団員達が大挙して押し寄せて来た。
クロードとルディーンは、それぞれ魔法を発動する。クロードが騎士団員の剣に時計をつけて逆行させれば、剣はただの鉄くずに変わった。素手の団員達にルディーンが爆薬を投げつける。命じられて出で来た人間を殺したくはないので殺傷能力はない。脅す程度だ。
皆、慌てて下がる。
アルフレッドが叫ぶ。
「逃がすかぁーー。」
グリザスとユリシーズに突っ込んできた。
グリザスは全身の力を籠めて、その剣を弾き返す。
ユリシーズを後ろに突き飛ばせば、ルディーンが魔法陣を展開し、その中に落とし転移させた。
クロードがグリザスに向かって叫ぶ。
「下がってーー。早く。」
ブンっとアルフレッドが剣を振るってくる。
かろうじて避けると、そのまま魔法陣へクロードと共に落ち、転移した。
残されたルディーンは、
「それじゃ失礼しますよ。」
そう言うと爆薬を爆発させて煙幕を作り。
その隙に魔法陣を展開し、姿を消した。
残されたのはローゼンとリンドノールの傍に駆けつけたシルバとスーティリアである。
メルディーナは叫んだ。
「ローゼンシュリハルト。正体を見せなさい。」
リンドノールが鋭い斬りこみをメルディーナに食らわす。
メルディーナはバっと後ろに下がって避ける。
殺到してくる騎士達に向かって、シルバは巨大な氷の壁を空中から落とす。
どーーーん。メルディーナと殺到してきた騎士達は氷の壁で分断される。
スーティリアがローゼンとリンドノールに向かって。
「早く。下がって。」
二人は下がる。そこへ魔法陣を展開する。
スーティリアは二人を転移させた。
残ったのはシルバである。
メルディーナが叫ぶ。
「逃がさないわ。」
剣でシルバに斬り付ける。
シルバは背後に飛びのいて。
「目的は達した。皆、退却したようだな。行くぞ。」
スーティリアと共に転移した。
王宮の広間に皆、転移して集まる。
フローラがローゼンに向かって駆け寄って。
「大丈夫ですか?ローゼン様。それから皆様。」
ローゼンは仮面を取り、
「大丈夫だ。だが正体を剣技の型から、勘ぐられた。」
ディオン皇太子は仮面を外して、聖剣を手に。
「もし、追及してくることがあったら、徹底的にしらばくれるしかあるまい。
こちらはファルギリオンの聖剣は手にいれた。そっちはどうだ?」
クロードも仮面を外しながら。
「罠が仕掛けられていました。どうも、あちらに魔法に長けた者がいると思われます。
残念ながら魔法図書は手に入れられませんでした。ごめんね。グリザスさん。」
グリザスは首を振って。
「俺のせいで危険な目に合わせて申し訳ない。もう、魔法書は必要ない。本当に動いてくれてみんな有難う。」
自分の為に動いてくれただけで、何て有難いのだろう。本当にそう思うグリザスである。
クロードはロッドとシルバに。
「本当に助かったよ。有難う。」
ロッドは長い髪を掻き上げながら。
「なかなかスリルのある体験だった。魔界に帰る。何かあったら呼んでくれ。」
シルバもマントをひるがえして。
「帰って寝るとするか…。それではまたな。」
二人とも転移して魔界に帰って行った。
サラが座り込んでいるユリシーズに気が付いて心配している。
「大丈夫ですか?ユリシーズ様。」
ディオン皇太子がユリシーズに近づいて。
「怪我でもしたのか?」
「ちょっと背を打ちました。大した事はないです。」
「ユリシーズもご苦労だったな。皆、家に戻って休んでくれ。」
リンドノールが頭を下げる。
「我がフォルナード様の聖剣の為にありがとう。感謝します。」
皆、にこにこ頷いて、そしてそれぞれ帰っていった。
グリザスはクロードと共に自分の部屋に帰る。
クロードが鎧をいつものごとく布で拭いて掃除してくれた。
「破損はありませんね。お疲れ様。」
「クロードもお疲れ様。本当に有難う。」
「いえいえ、俺は大した事は、結局、魔法書駄目でしたし…」
「人間に見られなくても、こうしてクロードと過ごせれば俺は幸せだ。」
クロードの身体をぎゅっと抱きしめる。
ああ…本当に無事に帰ってこられてよかった。
クロードも抱きしめてくれて。
「今日は疲れましたね。早く寝ましょうか…。」
二人でいつものごとくベットに入る。
クロードの温もりを感じて眠る幸せをかみしめながら、眠りにつくグリザスであった。




