約束の食事に連れて行ってもらった。
魔王討伐訓練があったのだが、次の日の夜、ローゼン騎士団長が、約束の食事に連れていってくれることになった。
ユリシーズとアイリーンも是非一緒に行きたいというので、計6人で食事を共にすることになったのだが。
高級な料理店の前で、皆で待ち合わせをする。
ローゼン、クロード、グリザスは王宮の庭にある騎士団事務所や寮から。
フローラとユリシーズとアイリーンはフォルダン公爵家から料理店へ直行だ。
それぞれ馬車に乗って来ると、先に待っていたローゼンが馬車から降りるフローラやアイリーンに手を添えて、降りるのを手伝う。
ユリシーズがローゼンに向かって。
「今日は俺達もご一緒してすみません。」
「かまわない。皆、身内に当たる訳だ。クロード達も身内みたいな物だ。共に食事をして交流を深めよう。」
クロードが空を見つめて。
「また雪が降ってきそうだよね。さぁ中に入ろう。」
皆で中に入れば、雰囲気の良い個室に通される。
クロードがグリザスに向かって。
「俺、高位魔法使ってみるよ。フローラ、アイリーン、手伝ってくれないかな。」
フローラが頷いて。
「力を貸すわ。」
アイリーンも立ち上がり。
「お父様がこの間、使った魔法ね。いいわよ。」
クロードが部屋に結界を張る。
そして、呪文を唱え始めた。
フローラとアイリーンも呪文を唱える。
空中に魔法陣が展開されて、その文字がグリザスの方に向かって流れ込んでくる。
そして、グリザスは死霊の姿から金髪碧眼、無精ひげを生やし、肩までの髪の長さがある、人の姿へと変わった。
黒の鎧から変化し、きちっとした黒の貴族服の正装をしている。
ちなみに、ローゼンはウエーブがかかった柔らかい金髪の長さが肩位まであるが、グリザスはストレートの硬そうな金髪の長さが肩まであり、互いに髪質も雰囲気が違う。
同じ金髪碧眼であるが、ローゼンは中性的な美しさを備えた青年なのに対し、グリザスは無精ひげを生やした男らしい顔立ちだ。
グリザスは皆に礼を言う。
「有難う。久しぶりに食事が楽しめそうだ。」
ローゼンが袋から赤ワインの瓶を取り出し。
「約束だったな。私の領地のワインだ。是非、楽しんでくれ。」
「これは嬉しい。有難う。」
ローゼンが嬉しそうなグリザスの顔を見て。
「お前は私の笑顔が綺麗だと言ったが、微笑むお前の笑顔もなかなかいい。」
「そう言われると照れる。」
女性が騎士団長にそのような事を言われたら、完全に惚れるだろう。
と思うのだが、あまりドキドキするとクロードに睨まれてしまうので、
まずは赤ワインを楽しむ事にした。
給仕が赤ワインを開けて、グラスに注いでくれる。
ああ…いい香りだ。
一口飲んでみれば、芳醇な香りと味が感じられてたまらない。
「美味いな…。さすが騎士団長の領地のワインだ。」
グリザスが褒めれば、ローゼンは嬉しそうに。
「良かった。美味いと言って貰えて。フローラ達も飲める年頃だったら、
飲ませてあげられたのに、残念だ。」
フローラが羨ましそうに。
「私も飲みたいですわ。ああ、でも16歳じゃ飲めませんわね。後、4年も待たなければならないなんて…」
ユリシーズも残念そうに。
「俺、17歳なんだよね。氷漬けになっていた30年を抜かせば。30年を入れると47歳なんだけど…」
クロードが驚いて。
「もっと幼いのかと思ってたけど、17歳だったんだ。」
フローラがまぁという顔をして。
「年上だったのね…可愛い子だなんて言ってごめんなさい。」
アイリーンが呆れて。
「聞いたわよ。女装させられたんですってね。それで、ゴイル副団長とミリオンに交際を迫られたって…。」
フローラがニコニコ笑って。
「それはもう、可愛い女の子になったんです。お姉様。だから、交際を申し込まれたのですわ。」
ユリシーズはグリザスを見て。
「俺、グリザスさんみたいに男っぽくなりたいな…。騎士団長みたいに美しくはなれそうもないし…」
グリザスはユリシーズに向かって。
「まだまだ成長もするだろう。鍛えれば筋肉もつく。変わるのではないか?」
ローゼンも頷いて。
「諦めるのはまだ早い。これから変わっていく年頃だ。私はユリシーズがどのように変わっていくのか楽しみにしている。」
ユリシーズは嬉しそうに。
「お二人に言って貰えてとても嬉しいです。俺、鍛えます。」
食事が運ばれてきた。
ローゼンが探してきたお店である。
高級料理のフルコースであった。
クロードがローゼンに向かって。
「今度、大衆料理店みたいな所へ、騎士団長を連れていってあげたいな。俺…。
そこはそこでまた、美味しいんですよ。」
ローゼンは目を見開いて。
「よく、ゴイルが行くような店か?私が行って目立たないだろうか?」
グリザスはクロードに。
「美しさで目立つ男だからな。騎士団長は…。個室が無いと駄目なのではないか?」
フローラも頷いて。
「そうなのですわ。この間、王宮のカフェで休憩をローゼン様としたのですけど、もう、嫉妬の視線が酷くて。ローゼン様は目立ちすぎですわ。」
ローゼンは来た料理の前菜を優雅に食してから、
「自覚はある。皆、私の公爵の位と容姿に惹かれて言い寄ってくるのだ。婚約者がいるにも関わらず。」
アイリーンも、優雅な手つきで前菜を食しながら。
「フローラは婚約者がいるにも関わらず、ローゼン様を取ったんですもの。
クロードもグリザスに取られましたし…。取ったもの勝ちですわ。でも、ローゼン様が可愛いフローラを泣かせでもしたら、ただでおきませんわ。私が…。」
グリザスは頭を下げて。
「その件はすまないと思っている。アイリーンには一生頭が上がらない。」
アイリーンはグリザスの謝罪に。
「謝る必要はないわ。私こそ貴方を殺そうとしたのを許して貰えたのだから、本当にありがたいと思っているのよ。ここにいる人達に害をなす者がいたら私は全力で守るし、戦うわ。そして殺してやる。家族みたいな人達ですもの。」
ローゼンはアイリーンに向かって。
「私はフローラを愛している。きっかけはどうであれ、婚約者に選んでもらえて今は幸せだ。マリアンヌとて今はシルバと愛し合う婚約をしている。結果良かったのではないか。」
フローラは赤くなってから真剣な顔で。
「まぁローゼン様ったら…。お姉様の私を思っての言葉。嬉しいわ。でも過激に殺しに走らないで…。お願いよ。」
クロードもすまなそうに。
「俺も君を傷つけた事はすまないと思っている。それにフローラに同意するよ。過激に殺しに走らないでほしい。」
アイリーンは自分のお腹を愛し気にさすって。
「そうね…赤ちゃんを大事にしなくてはならないわね。」
ユリシーズもアイリーンを見てニコニコしている。
「赤ちゃん、楽しみだな。俺、いいお父さんになるよ。」
運ばれてきたメインのステーキは、良い焼き加減で凄く美味い。
食べられる事は幸せな事だ…
グリザスはゆっくり、肉を味わった。
脇に付けられたジャガイモも美味い。
ふと、ユリシーズの方を見ると、一生懸命、マナーに忠実に食事をしている。
しかし、ジャガイモを切ろうとしてツルっと滑ってスコーーーーンと飛んでしまった。
右斜めの方向に。床にぺちょっと落ちた。
ユリシーズは真っ赤になって。
「ごめんなさいっ。俺…」
するとクロードが今度はジャガイモをスコーーーーンと斜め上に飛ばしてしまった。
向かい合っていたグリザスの右横を通り過ぎて床に落ちる。
「よく飛ぶジャガイモだね。」
グリザスは冷や汗をかく。
驚いたぞ。俺は…( 一一) マジで。
クロードはニコニコ笑って、舌を出す。
フローラもスコーーーーンと飛ばしたら、ジャガイモが天井にへばりついた。
「あら、私のが一番飛んだわ。」
アイリーンがケラケラ笑い出して。
「やだわーー。何の大会かしら。私も飛ばしたくなってしまうじゃないの。」
ローゼンはナプキンで口を拭いてから。
「飛ばしたくても食べてしまった。非常に残念だ。」
ユリシーズは赤くなりながら。
「みんな有難う。ごめんなさい。」
グリザスは思った。
みんな優しい…。ちなみに俺もジャガイモをもう、食べてしまった。
他にも色々と食事が出た。
どれも美味しく、幸せな気分を味わう。
騎士団長の領地の赤ワインも沢山飲んでしまった。
クロードがグリザスの飲んだり食べたりする様子を見て。
「本当に嬉しそう…。グリザスさん良かったですね。」
「ああ…俺は幸せだ。有難う。みんな…。」
ローゼンは運ばれてきたデザートを楽しみながら。
「また、食事の機会を設けよう。私も皆と食事をしたいからな。」
フローラがニコニコして。
「有難うございます。ローゼン様。楽しみにしておりますね。」
クロードもグリザスも。
「御馳走様です。とても美味しかったです。」
「食事も美味しく、赤ワインも素晴らしかった。有難う。騎士団長。」
ユリシーズも頭をペコっと下げて。
「俺も美味しかったです。有難うございます。」
アイリーンも優雅に珈琲を飲んでから。
「素晴らしい食事でしたわ。有難うございます。」
ローゼンは皆の礼の言葉が嬉しそうだった。
さてと、帰ろうかと皆、立ち上がったその時に、飲み過ぎたグリザスはふらりとよろけてしまった。
思わず床に座り込む。
何だかクラクラする。気分が悪い…
ローゼンが給仕を呼んで、
「体調を崩した者が出た。少し休める部屋はないか?」
給仕が案内する。
「それではこちらへ…」
別室のソファのある部屋に案内されて、グリザスはそこで寝転がった。
ローゼンがクロードに向かって。
「私は二人の令嬢をフォルダン公爵家に送っていこう。ユリシーズはどうする?一緒に帰るか?」
ユリシーズは首を振って。
「クロード一人じゃ心細いだろうから、俺も残ります。」
フローラがローゼンに提案する。
「転移鏡が使えますから大丈夫ですわ。私とお姉様は転移鏡を使って家に帰ります。
あ、それともグリザス様をフォルダン公爵家に運びましょうか?」
クロードがグリザスを覗き込む。
「立てますか?グリザスさん。」
「ああ…すまないな…」
転移鏡を使ってフォルダン公爵家に皆で転移し、元の死霊の姿に戻って、
フォルダン公爵家の客室のベットで休ませてもらう事にした。
酔っ払って人様に迷惑をかける死霊って俺位だろう。
何だか色々と記録を更新しているような気がする。
クロードがベットの傍で心配そうについていてくれた。
ローゼンが部屋に顔を出して。
「私は自分の屋敷に帰るが…。ワインが強かったか?申し訳なかった。」
グリザスはローゼンに向かって。
「いや、飲み過ぎた俺が悪い…とても美味いワインだったから。御馳走様。
持ってきてくれて有難う。」
「明日は無理をするな…。それでは…。クロードもしっかりと寝たほうがいい。」
クロードも礼を言う、
「有難うございます。おやすみなさい。」
ローゼンは帰って行った。
しばらくしてフローラが顔を出して。
「私も寝るわ。クロード。グリザス様。おやすみなさい。お大事に。」
ああ、もう眠くて仕方がない…
クロードがおやすみなさいを言ったようだ。
そしてベットに潜り込んできた。
優しく抱きしめてくれる。
「さぁ…一緒に寝ましょう。おやすみなさい。グリザスさん。」
兜の額に優しくキスをしてくれた。
今日はとても楽しかった。そういう楽しい日々がこれから先も続けばいい…
そう願いながらクロードの温もりを感じて眠りにつくグリザスであった。
半分くらい書き直しました。展開がグタグタだったので(-_-;)




