ディオン皇太子殿下が夢魔と取っ組み合いをしていた。
グリザスはベットの上で座って落ち込んでいた。
昨日は、魂の世界でクロードに言葉責めされ、淫らな事をされた。
若い女の子達にドキドキしたからって、変態はないだろう?
いや、違った。仕置きされることを期待している変態か…
どっちにしろ変態認定ではないのか?
部屋で悶々としていると、クロードがノックをして入ってきた。
「あれ。どうしたんですか?昨夜の事がショックだったんですか?
何て言ったんでしたっけ?
可愛い若い子に欲情するなんて、変態?それとも、お仕置きされるのを喜んでいる変態?」
「クロード。最近、性格悪くなったのではないのか?俺はお前の優しい所が好きだったのに。」
クロードは顔を覗き込んできて。
「貴方がいけないんですよ。あまりにも可愛らしいから。虐めたくなってしまうんです。」
「俺は可愛くなんてない。」
「ああ、本当に可愛い。このまま押し倒したくなっちゃうよ。」
ベットに押し倒された。
その時に部屋に魔法陣が展開し、ミリオンが現れた。
「何だ?朝から、もう盛っているのか?」
クロードが不機嫌に。
「何だ。ミリオンか。何か用?」
「いや、別に。ちょい暇だから遊びに来た。」
クロードは仕方がないという風に、押し倒したグリザスから身体を離して。
グリザスも身体を起こす。
助かった…このまま、また。流される所だった。
俺って流されるタイプかもしれない…。
何だかとても凹む。
ミリオンは椅子に腰かけて。
「ディオンが、体調崩したっていうんだ。会おうとしたんだけど、面会できなくてさ。」
クロードも椅子に腰かけて。
「えええ?もしかしてルディーンに食われちゃったとか。」
「簡単に食われるような男じゃないだろ?帝国の外交官に、足技食らわせるような奴だ。」
「何それ…。まぁディオン皇太子殿下が、魔王討伐とか、アマルゼの呪いの鎮魂祭とか、中心人物だからね。心配だな。」
ミリオンが考え込むように。
「ディオンの魂に触れてみるか…でもなぁ…プライバシーを覗き込んでいるようで、嫌なんだよな。」
俺なんて、既にプライバシーなんて無いぞ。
と、グリザスは心の中で呟いてみる。
クロードがうわっと呟いて。
「皇太子殿下の魂なんて恐ろしくて近づきたくもないよ。ミリオン、勇気あるね。」
「友達だからな。」
グリザスは思わず言ってしまった。
「いい奴だな。ミリオンは…。」
「え?そうか?お前に言って貰うと嬉しいぜ。」
クロードがにっこり笑いながら。
「俺は嫌な奴だから…もう、グリザスさんの魂を触りまくり、撫でまくりで…」
グリザスは慌てて。
「クロードが嫌な奴だなんて言っていない…」
ああ、でもあまりにも心が覗かれると、それはもう困るが。
ミリオンが二人に向かって。
「俺一人じゃ…お前達も付き合えよ。」
クロードが不機嫌に。
「俺達を巻き込むなよ。」
「ディオンに何かあったら困るだろう?」
そう言うと、ミリオンは何やら呪文を唱え始めた。
中央に、丸い球が浮かび上がる。
ミリオンが、手を翳して。
「ディオンの魂を呼び寄せる。何かの影響を受けていれば見えるはずだ。」
呪文を更に唱えれば、鮮やかな緑色の魂が浮かび上がった。
魂の中に黒百合が二つ咲いている。
クロードがふうとため息をついて。
「綺麗な魂だな…。これがディオン皇太子殿下の…」
グリザスはふと思う。
俺の魂はどんな色をしているんだろう?少なくとも、こんなに美しくはないだろう。
きっと血にまみれた…
ミリオンがその魂に手を翳す。
「中を覗くぞ。いいか?」
3人の目の前に、ディオン皇太子の身に何が起こっているのか、映し出された。
そして、いつの間にかその魂の中に入り込んでいた。
恐ろしい、悪魔の部類だろうか、蝙蝠のような羽が見える。その悪魔がディオン皇太子にのしかかっているように見えたんだが、これはまずいことになっているのか?
しかし、破天荒の勇者は魂の世界でも、その悪魔を殴り飛ばして、激しく取っ組み合っていた。
ガチの殴り合いの喧嘩である。
ルディーンが3人の姿を認めると、困ったように。
「ずっと見ているんですが。怖くて手が出せないんですよ。下手して入ったらこっちにとばっちりが。」
ミリオンも納得して。
「あれ、夢魔だよな…。ディオン皇太子を意のままに操ろうと魂の世界に入り込んだって訳か。どこの誰の指図だろう?」
クロードが二人の喧嘩を眺めながら。
「あれ…ディオン皇太子殿下が負けたら、まずいんじゃ。支配されちゃいますよ。」
ミリオンが叫ぶ。
「おい。ディオン。助けが必要か?」
ディオン皇太子はミリオンを見ると。
「助かった。お前、何とかしろ。」
「よっし。任せておけ。」
ミリオンは突っ込んでいくと、思いっきり夢魔に体当たりした。
身を起こす夢魔は恐ろしい顔をして、ミリオンを睨みつける。
「お前、誰の指図でディオンを襲った。教えて貰おうか。」
ミリオンはポキポキと指を鳴らす。
夢魔は分が悪いと思ったのか、姿を消した。
ディオン皇太子は身を起こして立ち上がり、ミリオンの肩に手を置き。
「お前は頼りになる。ありがとう。ミリオン。助かった。」
「いや…助けに来るのが遅れてすまん。」
ルディーンが申し訳なさそうに。
「俺は戦闘向きじゃないんでね…。申し訳ない。」
ディオン皇太子はルディーンに。
「他で役に立って貰う。かまわない。」
グリザスは思う。
この皇太子殿下は凄い迫力がある。覇王の気というか…
クロードが心配そうに。
「皇太子殿下。怪我はありませんか?殴り合っていたでしょう?」
「大した怪我はない。あれはなんだ。二度と俺の魂に入り込まれるのは御免だな。
ただでさえ、心労が多いというのに。」
ミリオンとクロード、そしてルディーンが顔を見合わせて。
ミリオンが両腕を組んで。
「何とかするから…入り込まれないように、お守りでも下げるか。首から。」
クロードも頷いて。
「確か、魂に侵入出来ないように出来る首飾りがあったよね…第一魔国の倉庫に。それを差し上げますから。」
ルディーンがクロードに。
「サルダーニャ様の所へ取りにいけばいいのか?俺が取ってきてやろうか?」
ディオン皇太子はルディーンに。
「お前は情報網を持っているだろう?魔国にも。夢魔について調べてくれ。
首飾りはクロード。頼む。後からサルダーニャに俺から礼の手紙を書こう。」
そして、グリザスの方を見て。
「色々と落ち着いたら、また、手合わせしたいものだな。お前との演武は楽しかった。
今度の、魔王討伐、期待している。その剣の腕を存分に発揮してくれ。」
「俺もまた、手合わせしたい。皇太子殿下。魔王討伐、お役に立てるよう励みます。」
跪き騎士の礼を取る。
そして、ミリオンとクロードと共に元いた自分の部屋に帰ってきた。
ミリオンは二人に向かって。
「今日は付き合ってくれて有難う。また遊びに来るわ。」
クロードがミリオンに手を振って。
「いや別に遊びに来なくてもいいんだよ。」
「お前、俺の事、嫌ってない?」
笑いながらミリオンは魔法陣を展開して帰っていった。
グリザスはふと思う。
俺もあの首飾りを着けたら、クロードに心を見られないでも済むのではないだろうか?
たまに俺の心が聞こえるっていうけれど、最近聞こえ過ぎだぞと思うんだが…。
ああ…でも、それで魂の世界で、身体を交わすことが出来なくなるのなら、絶対にそんな事出来ない。
もっと優しくしてほしい。出会った頃のように…
俺はいつからこんなに女々しくなったのだろう。
クロードが優しく抱き寄せてくれて。
「俺は俺…変わりませんから。少しは優しくしてあげないとね。何してほしいですか?」
「しばらくこうしていてくれないか…」
「甘えん坊ですね。グリザスさんは。」
そう言ってクロードはそのままグリザスの身体を抱き締めていてくれた。
ずっとこのままでいたい。
愛している。クロード。
冬の日の光が窓から差し込んで二人を照らしていた。
ディオン皇太子殿下とミリオンは最強のヤンチャコンビです(笑)




