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俺って断れない男だと思うか?(断じてエロい話ではない。)

聖女様の名で国民にお触れが出た。


この春、マディニア王国とアマルゼ王国共同の過去に戦で亡くなった戦士たちの鎮魂祭をやる事になりました。。

それに伴い、そこに飾る花を作るボランティアを募集するので、是非皆さん、参加して下さいね。


そして、何故か、今、グリザスはクロードとギルバートとカイルと共に、自分の部屋で花づくりにいそしんでいる。


聖女様の紋章に花びらの形の布を縫い付ける作業を黙々とするのだが。


内職のような事をやっている死霊って過去にも未来にも俺位だろうな…


ぽきっ。


また、針が折れてしまった。


そもそも、鎧に覆われたこの手は細かい作業に適していないのだ。


クロードがグリザスを気遣うように。


「グリザスさんは無理しなくても。出来上がった花を王宮に持っていってくれませんか?」


ああああ…何か役立たずで申し訳ない。皆が10以上も作っているのに。自分はまだ2つも出来上がっていない…


「申し訳ない。それじゃ花を届けて来よう。」


花が入っている箱を手に持ち、王宮へ向かう。


雪が地面に積もっているが、人が通りそうな所は雪掻きがされていて歩けない事はない。


箱を両手に抱え歩いていると、顔見知りの女性に声をかけられた。


「グリザス様。お久しぶりです。」


同じく箱を両手に抱えてこちらに来るのは、フローラ・フォルダン公爵令嬢だ。

もう一人、見知らぬ令嬢と一緒だった。


フローラはローゼン騎士団長の婚約者で花が咲いたような金髪美人の女性だ。


グリザスも挨拶を返す。


「いつぞやは、世話になった。」


「お世話しましたかしら…。こちらこそ、姉が迷惑を。申し訳ございませんでしたわ。」


フローラの言葉にグリザスは。


「アイリーンにばれぬように、庇ってくれた。今はアイリーンが幸せに暮らしているのなら、言う事はない。」


「おかげ様で。お姉様はユリシーズと共に、落ち着いた毎日を過ごしております。

本当にクロードとグリザス様には感謝しておりますわ。」


フローラはそう言うと微笑む。


そして、隣の女性を紹介した。


「マギー・エスタル伯爵令嬢です。私の友達ですわ。」


マギー・エスタル伯爵令嬢は、赤毛のおとなしそうな令嬢だ。


「マギーです。噂の黒騎士様にお目にかかれて光栄です。」


二人とも灰色の胸に赤いリボンがついた王立学園の制服を着ている。


まだ、学生か…


200年前でも、このような年頃の女性に縁がなかったなとグリザスは思い出す。



可愛らしい令嬢達との会話にちょっとドキドキしてしまった。


花の入った箱を抱えて共に王宮まで歩く。


フローラがグリザスに向かって。


「そういえば、グリザス様、ギルバート様をご存知ですか?」


「ギルバート・コンソル伯爵令息か。クロードと仲がいいから、俺も、仲良く付き合わせて貰っているが。」


フローラが拳を握り締めて。(恐らく箱が落ちた。慌てて拾って)


「それならば、グリザス様、ちょっと時間ありません?相談したい事があるのですわ。」


えええ??俺に相談って一体全体…


王宮の事務官に出来上がった花を渡した後、フローラ達に誘われて、王立図書館の前にグリザスは共に行った。


図書館の前にはちょっとした長椅子がある。


そこで3人で座って。


用件をフローラがグリザスに説明する。


「マギーが、ギルバート様の事をお慕いしているのですけど、なかなか、ギルバート様も忙しくて、進展しないのですわ。」


マギーも顔を赤くして。


「以前、ダンスパーティに行った時に、私の事を知っていたみたいで、ダンスに誘って頂きましたの。その後、少しお話をして、どこか一緒に出掛けませんか?ってお誘いを。でも、私の都合がつかなくて、何だか、そのまま疎遠になってしまったのです。」


グリザスは両腕を組んで。


「騎士団見習いは忙しい。小テストも頻繁にあるし、毎日、剣の鍛錬もあるから、ギルバートも暇がないのだろう。」


フローラが真顔で。


「そこでです。グリザス様。二人が恋人同士になるのに協力してくれませんか?家柄も伯爵家で釣り合うと思いますわ。コンソル伯爵家はフォルダン公爵派ですし。ただ、マギーも私と同じ魔族なのです。それをギルバート様は受け入れられるかしら。」


グリザスは困ったように。


「クロードに頼む方が良いのではないか?」


「クロードでは無くて貴方が良いですわ。」


?????? どういうことだ?


フローラがグリザスの手を両手で握り締めて来て。


「どうかお願いしますわ。マギーの幸せの為に。」


マギーもグリザスの手を握り締めているフローラの手に自分の手を重ね。


「お願いします。グリザス様。どうか力になって下さい。」


「わ、解った。協力させて貰おう。」


何故、こうなった?俺って断れないタイプか?


でなければ、死霊になって王宮に戻って来て、騎士団見習いの剣技の指導官になり、今現在、クロードの嫁認定になっているとは思えない。


二人の令嬢達はとてもいい香りがした。ちょっと得をした気になる。


そして、作戦会議をするが、まずはフローラが。


「偶然会いましたーーって感じで、一緒にお茶でも、そして用がありますから、私達はこれでーー。二人きりのデートプランはどうかしら。」


グリザスがふと。


「ギルバートを連れ出すのは俺って事か?二人で出かけた事などない。それに、今の時期、忙しくて休日も皆、寮に籠っているぞ。」


マギーがグリザスに。


「そこを何とかお願いします。恋愛相談をしたいから、二人でカフェでもって言えば、

きっとギルバート様もグリザス様についてきてくれますわ。」


れ、恋愛相談????いやこの役はどう見てもクロードが適任だろう??


もしくはカイル。


ギルバートと仲が良い2人なら、疑問も持たずにギルバートはついてくると思うが。


と、心の中で叫んでみるが… 二人の令嬢の迫力に反論できない。


フローラがここぞと押してくる。


「それでは私とマギーは外のカフェで待っていますから。この道の司法局の先にある、最近出来たマルツオーネというカフェです。よろしくお願いしますね。」


と言って立ち上がる。


マギーも続いて立ち上がって。


「すみません。よろしくお願いします。」


今なのか???承知したとも言っていないのに、二人の令嬢は行ってしまった。


ああああっ…やはり俺って断れないタイプだ。


仕方ないので、騎士団寮の自分の部屋に戻れば、クロードとギルバートとカイルが一生懸命、内職のごとく花を作っている。


クロードが帰ってきたグリザスに向かって。


「おかえりなさい。遅かったですね。何かあったんですか?」


グリザスは首を振って。


「いや、なんでも。」


何て切り出そう。ともかくギルバートだ。ギルバートを部屋の外へ出すのだ。


「ギルバート、ちょっと話があるんだが。」


ギルバートは驚いたように。


「俺???」


「ちょっと外へ。」


ギルバート・コンソル伯爵令息。

金髪でそばかすのある、細身の青年だ。

顔はまぁまぁのハンサム?普通のちょい上って俺から見たらそんな感じの顔だ。


ドアの外に連れ出すと、ギルバートに向かって。


「頼みがある。一緒にカフェに行ってくれないか?」


「はい????」


「恋愛相談だ。恋愛相談。今すぐに行こう。何だったら、俺が抱えていってやる。」


断られたら困る。


ガシっとギルバートを小脇に抱えると、グリザスは猛烈な勢いで騎士団寮の玄関に向かった。


「うわっーーーー。」


王宮の門番が、ギルバートを抱えて走り抜けるグリザスを不審な目で見るが、

グリザスは一言。


「訓練だ。」


「ひええええっーー。訓練じゃな…」


ギルバートが叫ぶので、口をふさぐ。


目を丸くした門番の横を通り抜け、ともかくカフェに急いだ。


司法局の先にある名前を忘れたカフェ。新しいとか言っていたから、なんとなく解るだろう。

しかし、カフェってなんだ???


確か書物で読んだのには、飲み物を楽しむ食堂のような所だと書いてあったが。


ともかく走っていると、カフェとやらのガラス窓の中にフローラとマギーの姿が見えた。


あそこだ。


バンとカフェの扉をあければ、店員がびっくりして。


「いらっしゃい…ませ…」


そりゃそうだ。死霊の黒騎士が、青年を右腕にがしっと抱えていれば、驚くだろう。


「飲み物を飲みに来た。席を頼む。」


そこでやっとギルバートを下ろす。


ギルバートはハァハァ、言いながら。


「俺に何が起こったのか…解らない…。」


そこへフローラがマギーと共に近づいて来た。


フローラがわざとらしい声で。


「あら、グリザス様、そちらは確かギルバート・コンソル様でしたわね。

偶然ですわ。どうです?一緒にカフェでお茶しましょう。」


そこへ、クロードとカイルがカフェに駆け込んできた。


「ギルバート、無事か?」


ギルバートは傍にあった椅子に座りこんで。


「何とか生きているよ。」


そして、クロードはフローラを見やり。


「元凶は君だよね。説明してもらおうかな?」


6人はテーブルをくっつけて、向かい合って座る。


フローラがクロードに向かって。


「偶然の再会をせっかく用意したのに。私達がグリザス様に頼んだのですわ。

マギーがギルバート様と二人きりで、仲が深まるように。」


クロードが呆れてフローラとグリザスに。


「俺に言ってくれれば協力したのに。」


「グリザス様に、こういう事を経験して貰いたかったの。今までこういう事、経験したことないでしょう?恋のキューピットみたいな。」


フローラの言葉にグリザスは。


「それで、俺に頼んだのか。」


ギルバートが青い顔をして。


「拉致だぞ。あれは…。凄く驚いたよ。」


マギーがギルバートの顔を正面から見つめ。


「お慕いしております。ギルバート様。あのダンスパーティから私は貴方に会いたくて会いたくて。フローラ様に相談したのです。今回は本当にごめんなさい。」


その言葉にギルバートは真っ赤になり、ドギマギして。


「俺は、その…騎士団のまだ見習いだし、正式に君に付き合いを申し出る勇気がなかったんだ。俺も君の事、忘れた事はなかった。」


よい雰囲気になる二人に、フローラが。


「あ、私達は用事を思い出しましたわ。先に帰りますわね。お二人でごゆっくり。」


クロードもカイルを引っ張って。


「俺達も先に帰っているから。グリザスさんも帰るよ。」


4人は外に出る。


窓の外から2人の様子を見れば、とてもいい雰囲気で。


グリザスは心がとても温かくなるのを感じていた。


若いとはいいものだな…


ふと振り返れば、クロードがにっこりして。


「グリザスさん。ちょっとお話があります。それじゃ俺達は後から帰るから。」


凄い、殺気を感じる。


フローラがグリザスに向かって礼を言う。


「有難うございます。グリザス様。協力して頂いて。」


「いや、大して役に立っていない。それでは失礼する。」


フローラと、ずっと空気のカイルを置いて、クロードとグリザスはその場を離れた。


道を歩いていたが、クロードがグリザスを木の陰に引き込んで。


「グリザスさん。フローラ達と一緒にいた時、ドキドキしていたでしょ?ああいう若い女の子好きなんだ。」


あああっ…いやその…ちょっといい香りとか…可愛いとか…俺は思っていないっ。


声に出して言っていないのに、クロードはニンマリ笑い。


「後でお仕置きだよね。楽しみだなーーー。」


仕置きと聞いて、何とも身体が熱くなる。


クロードが耳元で囁く。


「まだ、その気になっちゃ駄目ですよ。とりあえず騎士団寮に帰りましょう。後で、じっくり可愛がってあげますから。」


わざとらしく、兜の耳元をねっとりと舐めてくるクロード。


ここで腰が砕けたら洒落にならない。


慌てて歩き出すグリザスであった。


追いかけて来たクロードと並んで歩く空は、今日も綺麗な夕空だった。


フローラのお話での、ギルバートとマギーのカップルを、こっちの話でくっつけちゃいました。


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