くだらない事で駄々を捏ねて後から俺は落ち込んでいる。( 一一)
今日は休日だった。
クロードが昼ご飯を寮の食堂に行ったきり、部屋にもいない。
寂しいって訳じゃないが…
グリザスはクロードの姿を探した。
すると、寮の前で、ミリオンとこの間の夜、飲み会に来ていたルディーンという男と共に立ち話をしていた。
ルディーンって男は苦手だ。
見つからないうちに部屋に戻ろうとすると、目ざとくミリオンに発見されてしまった。
「おおい。グリザス。こっちへ来いよ。」
クロードも手招きして。
「お話しましょう。グリザスさんも。」
仕方がないので、傍に行く。
ルディーンがグリザスに。
「この間は失礼した。ちょっとからかうつもりだったんだが。」
クロードがにっこり笑って。
「二度とグリザスさんにちょっかいかけないよう、釘を刺しておきましたから。」
グリザスはルディーンに。
「気にはしていない。それより、何を話していたんだ?」
ルディーンが、手に水晶玉を出現させて。
「ディオン皇太子に夜這いをしたって話ですが何か?」
クロードが呆れて。
「これからその時の様子を見せてくれるって言うんだ。命知らずだよね。」
ミリオンが急かす。
「早く見せろよ。ディオンはセシリア様命なんだからな。心配だぜ。」
いや…破天荒の勇者をこの大事な時にヤってしまっていいものなのか?
ルディーンがポンと水晶玉を投げると、空中にとある夜の映像が浮かび上がる。
場所は…ディオン皇太子殿下の部屋だ。
どんな様子が浮かび上がるのか、グリザスはクロードとミリオンと共に映像を見ることにした。
広いベットに夜着を着て、ディオン皇太子は珍しく一人で寝ていた。
そこへ、魔族姿のルディーンが現れて。
「さぁてと…美味しく頂きましょ。覚悟して下さいよ。」
ベットの上のディオン皇太子に近づけば、スっとルディーンの首筋に聖剣が押し当てられる。
「やはり来たか…待っていたぞ。ルディーン。」
「おびき寄せられたって事ですかね?」
「でなけりゃ、セシリアをわざわざ、外に出したりはしない。」
そう、セシリア皇太子妃を、祈りの為に教会に泊まり今宵は帰らないという事を、宮廷中に周知させておいたのだ。
ディオン皇太子はニヤリを笑って。
「俺のベットに夜這いに来るとは、覚悟はいいんだろうな。」
聖剣に力を籠めれば、ツツっとルディーンの首筋から血が流れる。
ルーディンは動じる事なく、
「俺を殺す気ですかね?」
「いや…神官長。そこにいるな。」
ベットのカーテンを開けて、神官長が顔を出した。
ディオン皇太子は神官長に向かって。
「魂の契約を。ルディーン・ソナルデ。一生こき使ってやる。北の牢獄へ送られないだけ感謝しろ。」
神官長が何やら、呪文を唱える。
ルディーンは自分の魂が、ディオン皇太子の魂にがんじがらめに絡めとられるのを感じた。
スっと絡み取ったと思われたディオン皇太子の魂は、ルディーンの魂に溶け込み、深く浸透する。
ディオン皇太子は、聖剣を収めると、ルディーンの胸元に指を這わして。
「魂の隷属だ。俺の魂を一度、お前の魂に浸透させてから離す。魂の憑依と違って、お前が死のうが俺には何の関係もない。ただし、俺の言う事は逆らえない。契約の印に、王家の紋章を刻んでやろう。」
ルディーンの胸元に小さく、マディニア王国の紋章、双頭の龍が刻まれる。
ルディーンが困ったように、
「魔族の得意な魂の隷属を逆にやられるとは。まいったね。」
ディオン皇太子はその胸元の紋章に口づけを落とすと、顔を離して。
「忠誠の証に、足にキスをしろ。ルディーン。」
ルディーンはディオン皇太子の足の甲に、口づけを落とす。
足を恭しく持ち上げ、その足の指をねっとり舐めながら。
「忠誠を誓いますよ。皇太子殿下。何なりとお命じ下さい。」
「いい心がけだ。期待しているぞ。」
映像はそこで途切れて消えた。
ミリオンがルディーンに向かって。
「これって…お前がアホって事?」
クロードも呆れたように。
「魔族の十八番を取られてどうするんだよ。」
ルーディンは胸元に刻まれた双頭の龍の紋様に手を這わせて。
「こんなのは、すぐに消せるんですけどね…。俺が人間ごときの魂の隷属魔法にかかるわけないでしょ?惚れた男がせっかく、隷属がかかっているって、信じているんだ。乗ってあげてもいいかなってね。」
グリザスは思った。
魔族って…嫌いだ。
人間の魂をどう思っているのか。
「用を思い出した。失礼する。」
その場を後にする。
部屋に戻る気分でも無く、王宮の図書館へグリザスは行った。
本棚で、本を見て見るも、頭に入ってこない。
クロードにされた事…。魂の分割だか、憑依だか…。自分を守る為に行った事は解っている。
解っているが…。
俺の魂に勝手に触れるな。
自分がアイリーンの触手に腹を、腿を貫かれた時、クロードが口から血を吐きだしていたことを思い出す。
お前を守れない、魂の憑依なんて勝手にするな。
そして、魂の世界でクロードにされた、淫らな事を思い出して、グリザスは図書室で座りこんでしまった。
身体が熱い。
何で、死霊なのに、俺は盛っているんだ…。
クロードが触れた所が…、クロードが囁いた言葉が…。クロードがくれた熱が…
「グリザスさん?」
クロードが探しに来てくれたのか、しゃがみこんでいるグリザスに声をかける。
近づくと、そっと兜の口があるあたりにキスを落としてきて。
「盛っているんですね。愛してあげましょうか?」
「盛ってなんていない。」
「隠し事は出来ないって言ったでしょ?魂が繋がっているんですから。」
「俺に、俺の魂に触れるな。感じるなっ。」
「グリザスさん?」
「お前達魔族は、人間の魂をどう思っているのか?玩具じゃない。ユリシーズだって、魂をさんざん弄られて苦しんだ。俺だって人間だ。いや、死霊だが…魂は人間なんだ。玩具にしないでくれ。」
クロードはグリザスの前に腰を下ろし。
「ここ狭いですから、本棚の間だし。抱き締められないですよ。
玩具にしたつもりはないよ。俺はグリザスさんを守りたかったから、魂の分割をしたんだ。
魂の世界でないと、愛せないから、魂の世界で貴方を抱いた。やったことに後悔はないよ。
そして、俺は魔族であってよかったと思っている。魔族だからこそ、貴方の鎧を修理出来たり色々出来た。」
グリザスはクロードに向かって。
「お前は字が下手な俺の字の代筆をしてくれた。タダカツベアの店にも連れて行ってくれた。色々と助けてくれたお前に俺は…きっと好きになっていたんだ。
お前が人間でも、惚れていたと思う。」
グリザスはそう言って、自分が変な事にこだわって駄々を捏ねていた事に気が付いた。
「すまなかった。ルディーンという男に会って、イラついていた。クロードが、魔族であっても、何であっても、俺はお前の事が好きだ。」
クロードが手を差し出して。
「こんな狭い所にいないで帰りましょう。グリザスさん。」
グリザスはその手を握り締め、立ち上がった。
クロードはグリザスを抱き締めながら、耳元で。
「ああ、でも俺…たまらなくゾクゾクしているんですよ。貴方を守るといいながら…貴方が俺の死んだ後、生きる事を許さない魂の分割に、たまらなくゾクゾクしている。
だって、貴方が他の魔族に淫らな事をされるなんて、許さない。俺だけに足を開いて下さいよ。お願いですから。」
ダンと図書室の壁にグリザスを押し付けて、その右腿を抱え上げた。
「死霊でよかったですね…死霊でなかったらこのままヤっている所だ。
俺の魂に触れるな…だなんて、ねじ込んであげますよ。貴方の魂に俺をね…」
グリザスは恥ずかしかった。
右腿を抱え上げられて壁に押し付けられているのだ。
「解った。解ったから、足を下ろしてくれ。」
クロードは足を下ろしてくれた。
二人は図書館を出る。
何とも言えぬ沈黙が互いの間で流れる。
騎士団寮へ向かいながら、グリザスはふと立ち止まり空を見上げる。
日が傾いて、夕空が綺麗で。
「まるで、魂の世界のような空だな…」
クロードも空を見上げてから、グリザスを真っすぐ見つめ。
「ああ、本当だ。俺…本当は生身の貴方と愛し合いたい。生きた貴方と共に、過ごしたかったな。だから、魂が操れる、魔族に生まれて幸せだよ。生身の貴方に近い姿を感じる事が出来る。もっともっと、貴方に触れさせて。もっともっとグリザスさんを感じたい。」
グリザスはさっき怒っていた事が、くだらない事だったなと認めざる得なかった。
「もう、怒ってはいない。お前になら、魂をどう弄られても構わない。俺も…もっともっとクロードの傍に居たい。身も心も、魂も全て…」
二人は夕空の中、抱きしめ合った。
グリザスはとてつもなく幸せを感じるのであった。
グタグタの展開に、私も落ちこんでいます(-_-;)




