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22/51

夜の男たちの会合に出席したんだが。

グリザスは、数日、ツルハ医師から、王立病院へ入院するように言われたのだが、

クロードは翌日退院していってしまった。


「毎日転移して来ますから、グリザスさんはゆっくり静養して下さい。」


後、お願いもされた。


「今回の襲撃の件、アイリーンの処分は俺に一任してくれませんか?」


アイリーンはディオン皇太子殿下とローゼン騎士団長が捕まえたとの事。


今は魔界の牢獄に入って、処分待ちらしい。

ユリシーズも牢獄に入って、アイリーンの支配の解けるかどうか様子見らしいのだ。

ミリオンもそれに伴い、護衛する必要がなくなり、帰っていってしまった。


グリザスに取って、アイリーンを憎しみの権化にした原因は自分なのだ。

クロードに一任することに異議は無かった。


「お前に任せる。」


と答えておいた。




入院生活は退屈だ。


傷も神官長様や聖女様達が、優秀だったお陰で、すっかり良くなっている。


散歩をしよう。


夜、部屋を抜け出して、廊下に出た途端、

すんごい悲鳴を入院患者の老婆にあげられた。


「きゃああああーーー。ゆ、幽霊っーーーーーー。」


グリザスは慌てて病室へ戻ってベットに寝転がり布団をかぶった。


そうだった。自分は死霊だった。


兜に顔を覆われた、いかにも怪しげな雰囲気の黒騎士が歩いていれば、間違いなく幽霊認定である。(実際に死霊だが)


廊下が騒がしくなっている。


見覚えのある医師が怒鳴り込んできた。


「グリザス・サーロッド。死霊の癖に廊下に出るんじゃないっーー。患者さんが腰を抜かしたじゃないか。騒ぎを起こすな。」


ああ、この男は聖女様の夫、ユージンだ。


騎士団寮に2回も聖女様との不倫を疑って、怒鳴り込んできた、はた迷惑な男である。


しかし、今回、悪いのは自分である。素直に謝っておこう。


「申し訳ない。ちょっと散歩をしたかった。」


「散歩する位、元気ならなら、さっさと退院しろーー。」


その時、その男の背後から、凄く色気のある長髪の男が声をかけてきた。


「まぁまぁ、ユージン先生。あまり、怒ると健康に悪いですよ。」


ユージンはその男をチラリと見て、そしてグリザスに。


「ともかく、おとなしくしていて下さい。いいですね?グリザスさん。」


と言って出て行ってしまった。


グリザスは礼を言う。


「有難う。助けてくれて。」


男は自己紹介をしてきた。


「ルディーン・ソナルデと申します。お見知りおきを。死霊の入院患者なんて初めて見ましたよ。」


「そうか…。まぁ死霊は入院しないからな。」


男はベットに座ると、仰向けで寝ていたグリザスに向かって、色っぽく顔を近づけて来た。


「成程…クロードが夢中になるはずだ。なんて可愛らしい。」


兜の口元をずらされて、歯がむき出しにされる。


これは非常に危ない状況なのでは…、それに可愛らしいは余計だ。


その時に、クロードが転移鏡で転移してきた。


「ルディーン・ソナルデ。覚悟はいいかな?首飛ばしてあげようか?」


「ふふん。王子様の登場か。残念だな。」


スっとルディーンはグリザスの傍を離れた。


クロードは不機嫌に。


「何しに来たんだ?ルディーン。お前、忙しいはずだろ?ソナルデ商会は魔界でもマディニア王国でも一、二を争うジュエリーショップだし、そこの会長が油売っていていいのか?」


そう、このルディーンって男は、ソナルデ商会の会長である。魔族でもあり、そしてマディニア王国でも名が知られていて、ローゼン騎士団長の次に色気があり美しいと言われている男であった。ちなみに、クロードとは従兄に当たる第一魔国の王族である。


ルディーンはフンと笑って。


「ツルハ医院長と酒飲みにね。まぁツルハ医院長自身は酒、あまり飲めないが。どうだ?お前も一緒に参加しないか?酒は飲めないだろうが。面白いぜ。」


クロードが興味を持ったのか、


「後、誰が参加者なんだ?」


「ツルハ医院長、ザビト総監、ミリオン・ハウエル、後、時々、神イルグって名乗る爺さんも来るぞ。なかなか楽しいメンバーだ。」


クロードは呟いた。


「神様、何やっているんだろ…それにしても、変なメンバーだな。」


クロードはイルグの事を知っているらしい。


グリザスは身を起こして。


「参加していいか?俺は飲めないが。その会合、気になる。」


クロードが心配そうに。


「大丈夫?グリザスさん。」


「大分良くなった。クロード、一緒に参加してみないか?」


「グリザスさんがそう言うなら。」




その怪しげな会合に参加することになった二人。


雪が残る寒い夜、病院の建物の裏手に、松明を周りに掲げ、中央に焚火をし、木箱

の机だけの場所にゴザを引いただけの席に、ツルハ医院長、ミリオン、ザビト総監、神イルグが揃って、ツマミと酒を楽しみ、わいわいと騒いでいた。


ルディーンと共にゴザに座る二人。

ミリオンがクロードとグリザスに。


「もう、身体は大丈夫なのか?それに珍しいな。こんな所で会うなんて。クロードは酒飲めない年頃だし、グリザスは食事はしないだろう?」


クロードはお茶を飲みながら。


「大丈夫だよ。俺は。ところで何の集まりなのかな?これ…何故、神様が?」


神イルグはクロードを見つけ、


「おおおおおおっ。お主はいつぞやのオマケではないか?」


そう、クロードは聖剣持ち7人の中で何故かオマケ扱いされていた。


クロードはイルグに向かって。


「オマケは止めて下さい。俺はクロード・ラッセルですっ。」


ルディーンが杯を片手に。


「オマケ扱いは酷いな。第一魔国の魔族に向かって。しかし、クロード。お前が男に走ってアイリーンを捨てたのには、肝を冷やしたぞ。あの女は狂暴だからねぇ。」


クロードはグリザスとルディーンに向かって。


「アイリーンの件は解決したよ。グリザスさんには不本意かもしれないけど、悪さを二度としないという条件で、ユリシーズと結婚してフォルダン公爵家を継ぐことになった。先々はフォルダン公爵夫人だ。」


グリザスは答える。


「お前が決めた事だ。俺に異存はない。」


クロードは言葉を続ける。


「アイリーンが魔王をやめざる得なくなって、第二魔国はレスティアスが継いで魔王になったよ。色々あったけど。とりあえず、解決してほっとしているんだ。」


ルディーンは長い髪を掻き上げて。


「ま…解決したならよかった。」


ミリオンは大きな杯に酒を並々と注ぎ、一気に飲み干しながら。


「で?この集まりは?悪だくみでもしようっていう集まりか?」


イルグが摘みを食べながら。


「そうじゃそうじゃ。悪だくみじゃ。」


ツルハ医院長がニンマリ笑って。


「それは楽しそうだね。何をするのかい?」


ザビト総監も、瓶ごと掴み、酒をごくごくと飲んで。


「美味いっ。早く聞かせてほしいのう。その悪だくみをな。」




ルディーンは舌でぺろりと自分の唇を舐めながら。


「あのディオン皇太子、馬鹿にしているのではないか?民を…魔族を…

自分たち王族や、貴族は特別だと思っている。」


クロードは反論する。


「あの人はそんな人じゃない。そうだよね?ミリオン。」


ミリオンも頷いて、


「俺とは分け隔てなく、接してくれる。いい奴だ。」


ルディーンはミリオンの顔を見つめ、杯を掲げて。


「聖剣を持っているからだ。お前とクロードは。それ以外は眼中にないだろう?」


グリザスは否定する。


「俺とザビト総監は、魔王討伐に誘われている。実力があれば使う。それが破天荒の勇者だ。」


イルグも頷く。


「そうじゃそうじゃ。印をくっきりとつけておいてよかった。」


ツルハ医院長が笑って。


「あの胸と背のでっかい黒百合は、目立ち過ぎだよね。」


グリザスは思う。


確かに噂で聞くあれは目立ち過ぎだと。実際、見た事はないが。


ルディーンはクロードに、


「それじゃ、魔王討伐のメンバーを教えてくれ。」


「アイリーンを抜かした、ディオン皇太子殿下、ミリオン、ローゼン騎士団長、フローラ、ユリシーズ、そして俺。他にグリザスさんと、ザビト総監。ゴイル副団長、近衛騎士30人って聞いているよ。」


「少ない…。っていうか。どうして腕利きをもっと捜さない?魔国の魔王達は凄腕だ。協力を頼むとかしないのか?」


ミリオンが頷いて。


「確かにそうだよな。サルダーニャ様なんて特に凄い魔力の持ち主だ。第三魔国、魔王シルバ様や第五魔国の魔王ロッド様も、そして今回魔王になった第二魔国のレスティアス様もそれぞれ凄い魔力を持っている。協力して貰えばいいのにな。」


ルディーンは更に言葉を続ける。


「神様だって見物だけでなく、協力しろよと俺は言いたいねぇ…。どうだい?イルグ様。この戦い総力戦でいかないとマズイのではないか?」


イルグも頷いて。


「そりゃそうじゃが。わしら神様は手を出せぬのじゃよ。それが決まりじゃ。」


ザビト総監がガハハハと笑って。


「なんだ。悪だくみじゃなくて、戦いの心配か。優しいのう。ルディーン。」


ツルハ医院長が。


「怪我人が出たら手当できるような体制を作っておいたらいいかもしれない。

神官長様や聖女様、他にも癒しを使える者を集めておいて万全な体制作りを。」


ルディーンがツルハ医院長に。


「それいいねぇ…。サルダーニャには俺から頼んでみようか。ただ、後の魔王達は、幼い頃からの知り合いだが、さすがに…そこまで頼むだけの力が俺にはない。」


ミリオンがツマミを食べながら。


「嘘つけ。それぞれの魔国とソナルデ商会は付き合いがあるだろう?ルディーン、お前の顔なら、どうにかなりそうだが。」


グリザスはふと思った。


この、ルディーンって男が、何故、重要な魔王討伐の事案を引っ張っているのだ?


魔王討伐の中心人物はディオン皇太子殿下のはずだ。


肝心の聖剣持ちが、ミリオンとクロードしかこの場にいないのも、不思議な気がした。


ザビト総監が瓶を片手に。


「治安隊の精鋭、10人位なら、出すことが出来るぞ。後の連中は足手まといになるだけだ。

神官長様達の警護なら、任せておけ。」


ツルハ医院長が茶を飲みながら。


「頼もしいねぇ。」


クロードも、グリザスと同じことを思ったのか。


「ディオン皇太子殿下がいない所で、やる議論かな…。凄く重要な話をしているよね。

まぁ魔界の魔王達に交渉するなら、フォルダン公爵の力を借りたほうがいいし、姉上も、事情を話せば力になってくれると思う。第二魔国の魔王レスティアスは、フォルダン公爵には逆らえないから。問題は第三魔国と第五魔国の魔王だよね…。」


グリザスが皆に向かって。


「ディオン皇太子殿下に正式に、魔国と交渉して貰った方がよいのではないか?」


その時である。


病院の建物の陰から、声がした。


「俺を抜きでやる会合ではないだろう?お前達。」


噂の主、ディオン皇太子殿下が、聖剣を腰に下げて、立っていた。


その背後には、ローゼン騎士団長が、警護なのか控えている。


ディオン皇太子は、ルディーンの横に座り、顔をそちらに向けて。


「自己紹介をしろ。お前が中心で引っ張っているのが気に食わん。俺はこの国の皇太子、ディオンだ。魔王討伐の責任者であり、勇者だ。」


ルディーンはニンマリ笑うと、ディオン皇太子に、いきなり口づけをした。


顎に手を添え、強引に口の中を舌で貪る


皆、目が点になるような驚きで、その様子を見ていた。


ローゼン騎士団長が、腰の聖剣に手をかけて、


「皇太子殿下を放せ。不敬罪で…」


手でディオン皇太子に制される。


ディオン皇太子も、負けじと目を細めて、相手の舌を貪る。


全員がその様子をただただ見ていた。


やっと、互いに唇を離すと、ディオン皇太子は黒髪を右手で掻き上げながら。


「魔族の挨拶とはこういう物なのか?俺は知らなかったぞ。」


ミリオンが断言する。


「それはない。おいっ。ルディーン。お前、本当に…トラブルメーカーだな。」


クロードも呆れて。


「男女ともに、挨拶にそんな激しいキスをする人なんて見た事ありません。」


ディオン皇太子はニヤリと笑い。


「俺のキスは高いぞ。自己紹介をしろ。」


ルディーンはフフンと笑い。


「ルディーン・ソナルデと申します。そちらの王妃様には、我が商会のジュエリーを

よく買って頂いて感謝しております。」


「お前が噂のルディーンか。ローゼンの次に美男として有名らしいな。お前の商売、王家も一つ絡ませろ。嫌とは言わせない。不敬罪で北の牢獄に送られたくないだろう?」


「さすが手ごわいですねぇ。ディオン皇太子殿下。いいでしょう。こちらの商売にも便宜を図って頂ければ。互いに得をする関係を築きましょう。」


ディオン皇太子は満足して。


「で、先程の話、もう一度、俺にしてくれないか?魔王討伐の責任者は俺だ。」


ツルハ医師から、怪我をした人をフォローする人材に、神官長様や聖女リーゼティリア。

他にも癒しを使える人材を探して、随行していった方がいいという事を報告。


ザビト総監が、治安隊から腕利きを10人派遣し、神官長様達を警護したらどうかという提案。


ルディーンから、

第一魔国、第二魔国、第三魔国、第五魔国の魔王に協力を求めたらよいのではないかという提案が、それぞれ報告された。


ディオン皇太子は呆れて。


「それ、俺を抜きでやる話か?」


近くにいた神イルグに同意を求める。


イルグは酒をちびちびやりながら。


「だから、連絡してやったじゃろう?ここに来るように。」


ディオン皇太子は、ここで集まっていた連中に対して。


「飲み会をやるのなら、俺も呼んでくれ。神官長と、第一魔国~第五魔国の魔王達には俺から親書を送る。他にも良い提案があったら教えて欲しい。」


ルディーンがニンマリ笑って。


「俺達はただ、こうしたらいいんじゃないかって世間話をしていただけで。まさか案を採用して頂けるとは。」


ディオン皇太子はルディーンを睨んで。


「食えない男だな。ルディーン。」


「それはお互い様でしょ?」


結局、その後の議論は行われず、飲み会は解散になった。


グリザスは病室に戻るとベットに潜り込む。


クロードが心配そうに。


「あの、ルディーンって俺の従兄だけど手が早いんだよね。気を付けて。皇太子殿下にキスするなんて、恐ろしすぎる。」


「ああ、そのようだな。早く退院して騎士団寮に帰りたい。」


「帰りましょうか?もう、大分体調も良いみたいだし。ツルハ医院長に断って。」


といえども、もう真夜中だった。


置手紙を置いて、二人は病院から騎士団寮のクロードの自室に転移する。


クロードのベットに共に潜り込んで。


やはり、ここはとても落ち着いて温かい。


グリザスはクロードを抱き締めれば、クロードも抱き返してくれて。


「寝ましょう。もう夜も遅い。グリザスさん。おやすみなさい。」


「おやすみ、クロード。良い夢を。」


クロードがキスを兜の頬の辺りにしてくれた。


魔王討伐の件は、大変そうだけど、自分の出来る事をやるしかない。


そう思うグリザスであった。


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