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フォルダン公爵家での話し合い。

夕方の6時前に、フォルダン公爵家の玄関に、転移鏡で転移する。

雪がチラホラ降ってきたようだ。


玄関の呼び鈴を押すと、フローラ付きのメイドのサラが出迎えてくれた。

「お待ちしておりました。さぁどうぞ。」


庭の方へ案内されれば、そこには、大理石の床が敷かれた、四角い空間に添うように、長いテーブルが四角形に置かれており、外は雪が舞う中、中は松明の灯りで照らされている。

その空間の中へ入れば、雪が入ってくる事もなく、とても温かい。


クロードとグリザスが並んで腰かければ、フォルダン公爵がやってきて、対面の四角いテーブルの前に腰かけた。


後から静かに入ってきたのは、ローゼンと、フローラが左手に腰かけ、アイリーンとユリシーズが右手に腰を掛ける。


フォルダン公爵は客を見渡して。


「全員揃ったようだな。サラ。料理を運んでくれ。」


「かしこまりました。」


フォルダン公爵はグリザスを見て。


「このままでは、君は料理を食べれんな。」


指をパチンと鳴らせば、空間に緑に輝く文字が表示され、凄い勢いで流れていく。

その文字が輝いて、グリザスの方へ流れ込めば、グリザスは死霊の黒騎士の姿から、

金髪碧眼の人の姿に変わっていた。服装も黒の洒落た正装である。


クロードが驚いて。


「凄い。さすがフォルダン公爵。高位魔法ですね。」


フォルダン公爵は頷いて。


「2時間と持たんがね。食事位は出来るだろう。さぁ…久しぶりの食事を楽しみたまえ。グリザス。」


「ありがとうございます。」


グリザスは礼を言う。


フォルダン公爵とローゼンとグリザスのグラスには赤ワインが注がれる。


魚だろうか?野菜を添えられた前菜が運ばれてきた。


200年ぶりに飲むワインは腹に染みて美味い。


いざ食事となると、マナーを知らないので、非常に困った。


クロードが使っているナイフとフォークを見て、真似て、手に取り使ってみる。


前菜の魚も、とても美味い。


ユリシーズもマナーには苦労しているみたいで、フォークやナイフの使い方がぎこちない。


その点、ローゼンはさすが、公爵である。動作一つ一つも品があって、見事だ。


クロードがフォルダン公爵に尋ねる。


「貴方と俺とは縁が切れたはずです。何の用で呼んだんですか?グリザスさんまで招待したのは何故?」


フォルダン公爵はナイフとフォークを皿に置いて。


「私個人としては、君と縁が切れるのはもったいないと思っている。クロード。君は優秀な男だ。これからも我がフォルダン公爵家と親しく付き合ってもらいたい。」


クロードが困ったように。


「でも、俺はアイリーンと婚約破棄を一方的にしたんですよ。公爵もアイリーンもお怒りでしょ?」


アイリーンはナフキンで唇を拭いてから。


「あら、この間、許してあげたじゃない。貴方とそこの死霊との関係を。貴方と私との結婚はなくなったけど、逃がさないわよ。クロード。」


フローラがアイリーンに向かって。


「お姉様。逃がさないわだなんて言ったら、逃げていってしまいますわよ。」


クロードの方を向いて言葉を続ける。


「貴方は、私達と身内みたいに仲良く過ごしてきたわよね。クロード。このまま、疎遠になっては寂しいわ。」


クロードはフォルダン公爵を見つめながら。


「俺を手放したくない目的って何なんです?第一魔国に対する人質ですか?」


ローゼンがクロードに向かって。


「クロード・ラッセル。騎士団で出世したいのなら、後ろ盾は必要だ。貴族の推薦もないただの平民と、生粋の貴族とでは、近衛騎士になるハードルも違ってくる。私が後ろ盾になってやりたい所だが、騎士団長は団員を贔屓する事になるので、禁じられている。フォルダン公爵は、再びお前を騎士にふさわしいと推薦してくれると言っている。ここは仲良くしておいた方がよいのではないか。」


ローゼンに言われてクロードは言葉に詰まった。


グリザスはこういう時にどう言ってやったら良いのか考えを巡らせるも、判断が出来ない。


ローゼンは立ち上がると、クロードの傍に行き、


「後、10年だ。今の国王陛下はたとえ、健康に問題が無いにせよ、10年でディオン皇太子殿下に王位を譲ると、公言している。私は、ディオン皇太子殿下が王位についた時に、宰相になってくれないかと打診されている。

マディニア王国にも派閥がある。

フォルダン公爵派と、アイルノーツ公爵派だ。

我が、フォバッツア公爵家はそのどちらにも属さなかった。

だが、政に本格的に参加するのなら、私は、フォルダン公爵派につき、政を本格的に学んでいくつもりだ。勿論。今までも騎士団長として参加してはいたが。

騎士団長の座は空位になる。

その時、一番実力を兼ね備えた者が、騎士団長に任命されるだろう。

騎士団で出世したいのなら、騎士団長を目指せ。

お前の実力なら出来るだろう?

私は期待している。」


フォルダン公爵は微笑んで。


「簡単に政の中枢の座を渡すわけには行かないが、私はフォバッツア公爵を後継にするつもりだ。第一魔国の人質…まぁ、人質なんぞ取らなくても、サルダーニャと私は気心は知れているよ。私も、君に期待している。クロード。君のような人材を近くに置いておきたいのだよ。」


クロードは決意したように。


「有難うございます。俺はフォルダン公爵とアイリーンに、非礼を働いたのに、そこまで言って下さるのなら、今まで通り、お付き合いさせて頂きたいと思います。」


「いい判断だ。嬉しく思うよ。クロード。」


フォルダン公爵はクロードを見つめて満足げに頷いた。


ローゼンも安堵したような表情をして、


「フォルダン公爵、食事中の立席、失礼しました。」


と、優雅に詫びてから、席に戻って食事を再開する。


フォルダン公爵がワインを飲んだ後、


「グリザス。食事は楽しんでいるかね?」


いきなり話しかけられて、グリザスは焦った。


「おかげ様で、楽しんでいます。」


「娘から、クロードを奪った相手はどんな相手と思ったが…男性だったとは、フローラに一杯食わされたな。」


フローラがホホホと笑って。


「あら。お父様が勝手に思い違いなさっただけですわ。グリザス様は可愛いでしょう?」


フォルダン公爵がゴホンと咳ばらいをし。


「可愛いとは思えないが、確かに、守ってやりたくなる属性だな。面白い。クロードがのめりこむはずだ。」


グリザスはいたたまれなくなった。


えらく恥ずかしい。


アイリーンが、にこやかに。


「殺したかったんですわ。この男を。でも、ユリシーズがいるから諦めましたわ。

クロードの恋人になったからには、貴方も、こちらに顔を出しなさい。いいわね。」


フォルダン公爵はユリシーズを見つめ。


「ユリシーズ、私はリリアの為にも、君をしっかりと面倒みるつもりだ。縁あって私の息子にもなってくれるのだからね。クロードと違い、君は真っ白で、黒い所がない。だから、貴族社会や、魔界の魔族界でも、苦労をするだろう。

私や、フォバッツア公爵、アイリーンが出来るだけフォローするが、覚悟をしておいてもらいたい。」


ユリシーズは頷いて。


「はい。俺…色々と解らない事だらけで、皆さん。よろしくお願いします。」


頭を下げる。


クロードがユリシーズに。


「俺も、出来るだけ、フォローするから。魔界の魔族達については詳しいし。」


ユリシーズはにっこり笑って、


「有難う。クロード。よろしく頼むよ。」


和やかに食事がすんだ後、フォルダン公爵は、


「後は若い者で、私は失礼する。」


と言ったので、公爵家の居間に席を移して、6人は紅茶をの飲みながら、焼菓子をつまむ。


もっともグリザスは庭の不思議空間から移動した途端、元の黒騎士姿に戻ったので、ただ座っているだけだが。


早く帰りたかった。


何だか居心地が悪いのは、王族やら公爵やら、周りの空気についていけないからであろう。


クロードは食事マナーにしても、完璧で、綺麗な食べ方だった。


世界が違う人なんだなとなんだか遠く感じる。


俺は…、本当にクロードの足を引っ張っている。


傍に居ていいのだろうか?


だなんて、思っていると、自分より元気のない男が目の前にいた。


ユリシーズだ。


「俺…自信ないよ。フォルダン公爵やみんなの足を絶対に引っ張るし…。

アイリーンが俺のせいで、笑いものになるの凄く嫌だ。」


アイリーンがユリシーズの手を隣で両手で握って。


「貴方に捨てられたら、私…もう、生きていけないわ。いえ、貴方が逃げたら、私、貴方を殺してしまうかもしれない。」


「でも、俺…。」


ユリシーズは生まれも育ちも、平民だと聞いている。


いかに勇者とはいえ、魔界の王族や貴族社会の重圧は、この男にとって重すぎるのであろう。


つい口出しをしてしまった。


「ユリシーズの気持ちは凄く俺には解る。お前達はこの男に押し付け過ぎだ。

いかにフォローをしようが、笑いものになるのは、ユリシーズ本人だ。

どうしても王配にならねばならないのか?もっと彼の負担を減らしてあげたらどうだ。」


アイリーンが怒って。


「貴方に言われたくないわ。私の夫になる人には王配になって貰わないと、一人でパーティに出るのは嫌よ。」


フローラが宥めるように。


「お姉様。押し付けは駄目ですわ。ユリシーズにも逃げられてしまいますわよ。ユリシーズ。

今は、マナーとか、覚えなくていいわ。ほら、復活する魔王を倒さないと。それが一番優先事項ですし。もっと力を抜いて…。今の世界にだって、貴方、慣れていないのですし…。

美味しい物を食べて、ね?まずは、心も身体も元気をつけましょう。」


その言葉にユリシーズは、涙をぽろぽろと流して泣きだした。


アイリーンがユリシーズを抱きしめて。


「ごめんなさい。貴方をそんなに追い詰めていたなんて。ええ、フローラの言う通りよ。

貴方にこれからも無理は言わないわ。」


クロードがユリシーズの肩に手をやって。


「ゆっくりとだね。本当にゆっくりと進んでいこうよ。君がその気になったら、俺、色々と協力するから。ね?ユリシーズ。」


ローゼンは紅茶を飲んでから、呆れたように。


「まだまだ、子供だな。ユリシーズ。それから、アイリーン。一言言わせてもらうが、男は我儘を押し付けられると、嫌気を感じて逃げ出すぞ。私などはいい例だ。前の婚約者達から逃げ回っていたからな。もっとも、逃げ回っていたが、婚約破棄が自分から出来なかったのは、貴族社会の辛い所だが。今は、フローラのお陰で、幸せだし、フォルダン公爵とも良い縁を結べた。有難いと思っている。」


アイリーンはむっとしたようだったが。


「ええ、そのようですわね。これからは気を付けますわ。」


夜遅くなったので、皆、帰る事になった。


ユリシーズは皆に向かって。


「今日は有難うございます。みんないい人だ。俺、凹んでたけど、元気でました。」


頭をぺこっと下げる。


アイリーンがユリシーズに。


「今夜は添い寝してほしいわ。ね?お願い。泊まっていって。」


「え?う、うん…。恥ずかしいけど。添い寝だけなら。」


皆、思った。ユリシーズ、食われないといいけど…。


基本、魔族も、貴族の令嬢も、婚前交渉はないのが建前だが。


フローラが、ローゼンに向かって。


「転移鏡で送りますわ。外は雪が酷いですし。」


「有難う。そうさせてもらおう。」


クロードがグリザスに。


「俺達も、転移鏡を使わせてもらって、帰ろう。いいよね?フローラ。」


「ええ、いいわよ。貴方の部屋には行けるようになっているわ。」


おやすみなさい、を言って転移鏡でフォルダン公爵家を後にする。


クロードの部屋に戻った途端、クロードに抱きしめられた。


「グリザスさんも凹んでいたでしょ?でも、ユリシーズの方が凹んでいたから…。

もう、居心地悪くて仕方ないってヒシヒシと伝わってきた。でもね。貴方の一言がユリシーズを救ったんだ。勿論、フローラの一言が大きいけど…。騎士団長も味方してくれたよね。

俺。凄く嬉しかったんだ。引け目を感じる事はないよ。グリザスさんはグリザスさんらしく…。本当に愛しいよ。貴方の事。」


ベットに押し倒された。


慌ててグリザスは。


「お前が何を言いたいのかよく解らない。」


「ごめん。その…。貴方は貴方らしく、俺を遠いだなんて感じる必要ないって事。

俺だけじゃなくて、王族だって貴族だって、引け目を感じる必要はないよ。」


「良く解ったが、何故、ここで押し倒されているんだ?俺は。」


「うううん…なんとなく。このまま寝ちゃおうか。それとも、魂の世界でいちゃつく?」


「頼む。もう。遅い…寝かせてくれ。」


「それじゃ寝よう。」


クロードのベットは狭かったけど、そのまま、くっついて寝る事にした。


外は凄い雪だけれど、こうしてくっついて寝れば温かい。


何とも言えぬ幸せを感じるグリザスであった。


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