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それぞれの心…

その日の昼前、王宮の広間に来るように、ディオン皇太子から、クロードとグリザスは呼ばれた。


二人が慌てて王宮の広間に向かうと、ディオン皇太子と、リーゼティリア、そしてフィーネが待っていた。


ディオン皇太子は白に金をあしらった正装をしている。午後から王宮のパーティがあるのだ。

側室選びを兼ねた王妃主催のパーティは、セシリア皇太子妃命のディオン皇太子の意に添わぬもので、珍しく彼はかなり不機嫌だった。


ディオン皇太子は腕を組んで、まずはクロードに向かい。


「グリザス・サーロッドを守れと命じたはずだ。壊せとは言っていない。」


聖女リーゼティリアも、呆れたように。


「魂の世界で、グリザス様を壊してはいけませんわ。私はグリザス様を救うと、心も身体もそう誓いました。

本当はもう。死霊で、再び会ったあの時に静かに成仏させてあの世に送り出さねばならなかったのでしょう。でも、出来なかった。

皇太子殿下と相談をし、騎士団見習いの剣技の指導者として迎える事がいいという事になったのです。第二の人生を送って欲しかったから。

だから、死霊といえども、あえて、普通の人間として、接するようにディオン皇太子殿下が、皆に命じたのですわ。


貴方達がお互いに好きだというのなら、それが駄目だとは言いません。

でも…グリザス様、貴方には幸せに生きて欲しい。

お願いだからクロード。グリザス様を幸せにしてあげて。」


クロードは二人に向かって。


「申し訳ありません。俺…最初、自分の気持ちが解らなくて。一所懸命、グリザスさんに対する気持ちを否定していた。友情だから。大切な友達だからって。

でも、どんどん、抑えられなくなってきて、気が付いたら、好きで好きでたまらなくなっていたんだ。きっと初めてキスをした時から、魂を分割した時から…もう。

魂の世界で、身体を繋いだらもう、もっともっと欲しくて欲しくて。

俺で、グリザスさんを一杯にしたくて止まらなくなっていた。

守りたい。俺だってグリザスさんを守りたい。

壊さないように努力します。いえ、絶対に…壊しません。

優しく愛してあげます。

でなければ、グリザスさんに申し訳ないし、ディオン皇太子殿下、聖女様。それから、

大事な騎士団見習いの仲間達、皆に会わせる顔がないから。


ああ…本当に愛しているよ。グリザスさん。貴方は俺の全てだ。だから、ディオン皇太子殿下、俺をグリザスさんから離さないで。お願いです。」


グリザスも二人に向かって。


「ディオン皇太子殿下。俺もクロードの事を愛しています。もう、どうしようもない程。クロードには色々と助けて貰いました。どうか、今まで通り、クロードの傍に、共に騎士団にいさせて下さい。

そして、貴方のお陰で、俺は死霊として差別される事もなく、幸せな生活を送っていられる。感謝してもしきれません。生涯、このマディニア王国のディオン皇太子殿下に、そして騎士団に忠誠を誓います。


聖女様…貴方には本当に感謝している。

俺の為に、色々と心を砕いて下さり、感謝してもしきれない。

本当に有難う。」


ディオン皇太子は満足したように。


「お前達がそう言うのなら、これ以上、この件については不問にする。

ただし、あまり騎士団の中で、人の見える場所でいちゃつくな。

風紀が乱れる。いいな…。」


クロードもグリザスも頭を下げる。


「了解しました。ディオン皇太子殿下。」


フィーネはリーゼティリアの後ろにいたが。


「理解できないーーー。普通、男の人と女の人が恋人同士になるんじゃないのーー?」


ディオン皇太子が笑って。


「まぁ、国によっては死罪になる大罪だが、この国は同性愛に対しては勝手にやってくれっていう感じだ。でないと…。うちの父上をまっさきに死罪にしないとならなくなる。」


クロードが納得したように。


「王妃様、怖いですからねぇ。とうとう、男に走りましたか?マディニア王。」


ディオン皇太子は説明する。


「長年の片思いだ。前は抑えていたんだが、最近は特にセクハラ発言が凄いぞ。

今日もお前は麗しいとか…。お前は愛しすぎるとか。二人きりの時にこっそりと近づいて口説いている。父上を監視させている影が教えてくれた。」


リーゼティリアがまぁという顔をして。


「お相手はどなたなんでしょう?」


「シュリッジ・フォルダン公爵だ。フローラ嬢やアイリーン嬢は美人だからな。

それなりの美男だが、彼自身は趣向は正常に思える。

しかし、父上の傍で宰相のような仕事をしているから、口説かれる機会も多いだろう。」


クロードが、うわって呟いて。


「フォルダン公爵は小さい頃から知っていますが、亡き妻を思う愛妻家ですよ。油断ならないお人ですが…。」


フィーネが叫んだ。


「この国はおかしいよーーー。短いスカートの人は殺されて、どうして男性同士の愛はOKなのーー??でもでも、グリザス様が幸せなら。幸せなら…。いい…。うわーーん。」


再び泣き出したフィーネにグリザスは近づくと、頭を優しく撫でて。

「有難う。フィーネ。心配してくれたんだな。本当に有難う。」


ディオン皇太子は思い出したように。


「10年前の転生者事件、俺が学生の頃、周りの高位貴族の子息達が一人の女に、夢中になったんだ。俺とローゼンは引っかからなかったが。髪のピンクの胸のデカい女だった。

どこぞの男爵令嬢だったな…。短いスカートを履いて、わざと下着が見えるように椅子に座っていたりしてたな。良く当時の学園が許していたものだ。

婚約破棄ラッシュが起きて、大変だった、貴族の子息たちは、色々と不利をこうむって結局廃嫡されることとなったんだが。

転生者によって二度とこのマディニア王国を乱されてはならない。見つけ次第、北の牢獄に送らねばなるまい。クロード、グリザス、心してこの国の平和を守るためにも、これからも騎士団で励んでくれ。いいな。」


二人は騎士の礼を取り、跪いて。

まずは、グリザスが。

「かしこまりました。」

クロードも。

「必ず、この国の禍を取り除き、平和の為に尽くします。」


ディオン皇太子は満足そうに頷くと、パーティの時間だと言って、急いで会場へと行ってしまった。


二人は寮のグリザスの部屋へ戻って来て。


クロードがああ、寒いと呟いて、窓の外を見つめ。


「また。雪、降りますかね?」


グリザスも隣に立って、空を見やり。


「まだまだ降りそうだ。」


グリザスの手をクロードは握り締めて。


「一緒に、今夜も寝ましょう。雪は寒いですから…大丈夫、今夜は何もしませんよ。」


「ああ…一緒に寝よう。」


その時、窓が閉じているのに、窓からスっと黒い鳥が入り込んできた。


二人は一気に緊張する。


鳥はテーブルの上にとまり言葉を発した。


「今宵6時、我がフォルダン公爵の屋敷に来るように。クロード・ラッセル。グリザス・サーロッド。たまには一緒に食事を楽しもう。」


鳥はスっと姿を消す。


クロードが呆れたように。


「今更、何の用だろう?俺とは縁が切れたはずなんだけどな。それにグリザスさんは食事出来ないのに…。行かないと、やっかいな事になりそうだし。」


グリザスも同意して。


「行くしかあるまい。何か魂胆があろうとな…」


何とも言えぬ不安な気持ちを感じるグリザスであった。


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