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第一二二話『あかりの力』


「……」

 開始の号令とともに、惣一がバックステップで距離を採った。一方であかりはその場に佇み、笑みを浮かべていた。

「……何のつもりかはわかりませんが、一当てさせていただきますよ?」

 言いながら右足を後ろへと引き、弓を構えた。次の瞬間、五本の矢が顕れ、縦に並んだ。

 その一番下の矢は、惣一の弓にセットされ、彼は弓弦を引いた。

 鋭い眼光とともに、矢が投じられ、明かりめがけて突き進んだ。

 それが、彼女の鎖骨の間へ正確に吸い込まれ……。



 無かった。



 彼の矢は、すんでのところで遮られた。金属製のピンク色の花びらによって。

 それを見て目をみはる惣一。

「……それは、フローティングシールド? いえ、違いますね。“S.C.W.E.R.《スクワイア》”ですね?」

「ご名答。さすがダネ♪」

 惣一の言葉に、あかりが笑った。

 “S.C.W.E.R.”。

 “Suport Combat Weapon Ejectable Remort system《支援戦闘兵器分離誘導システム》”の略であり、単純にスクワイアと呼ばれる兵装である。

 その実体は使用者の周囲に展開し、戦闘を“支援”するための兵器で、射撃型や斬撃型。今あかりの目の前に浮遊している防御型が存在する。

 それを見ながら惣一が眼鏡のブリッジを押さえて位置を直した。

「ですが、メインウェポンも無く、支援兵器を展開したところでたかが知れていますよ? それとも、徒手空拳の殴り合いが得意なんですか?」

「まさか! わたしはか弱い女の子だよ? 殴り合いなんて無理無理」

 惣一に言われ、あかりがとんでもないとばかりに頭を振った。それを見て惣一が鼻を鳴らした。

「……まあ良いでしょう。出し惜しみしたまま倒れてください」

 言うが早いか、残る四本の矢が次々につがえられ、あかりに向けて射出されていく。

 それは、ほとんど同時に撃ち出されており、あかりのノド、腕、腹、太股へと向かった。

 たった一基の“S.C.W.E.R.”では防げるはずの無い攻撃だ。

 しかし、その四本の矢は、“同時に”止められた。

 あかりの正面に舞う、四基のシールドスクワイアによって。

 それを見た惣一の顔が驚愕に彩られた。

「……“S.C.W.E.R.”を四基……。並列コントロールの難しさから、並みの使い手では二〜三基が限界と言われている装備を四基も使いこなすとは」

 感嘆の響きを伴わせながら惣一が漏らした言葉を聞いて、あかりが微笑んだ。

「ぶっぶ〜♪ ハズレかな? 何故なら私が使える“S.C.W.E.R.”の数は、もっと多いから。リミットリリース&咲き誇れ!! チェリーブロッサム!!」

 あかりの声に応えるように、桜の花が咲き乱れるように、ピンクの“S.C.W.E.R.”達がその姿を顕していく。

 同時にあかりの周囲に幾何学模様の空間投影ディスプレイがいくつも出現していった。

 鋭いビーム刃を発生させる“ダガースクワイア”。ビームを撃ち出す“シュートスクワイア”。そして、先ほどからあかりを守っている“シールドスクワイア”。

 六角形を引き延ばしたような、30cmほどのピンク色をした薄いプレートの群れが、あかりを護るように整然と並んだ。

 それぞれ十二基ずつ。計三十六基の“S.C.W.E.R.”を目の当たりにして、惣一は言葉も無く立ち尽くした。

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