第一一七話『ブロンドタイフーン再び!』
「うっぎゃあぁああぁっ?!?!」
およそ乙女のあげる悲鳴にふさわしくはない絶叫をあげながら、綾香は赤くない場所は無いと言わんばかりばかりに全身真っ赤に染めあげつつ身をよじる綾香。
しかし、彼女の鎖骨の下に装備された二つの柔玉をホールドする手は外れなかった。その手が、やわやわと蠢き彼女のふたつの柔らかなマシュマロを変形させた。
この唐突に起きた事態に、周りのメンバーは呆気にとられるばかり。
いや、約二名が鼻の辺りを押さえていた。
それに気を良くした謎の人物は、さらに綾香の双子山を揉みしだきに掛かった。
「って、いーかげんにしなさーいっ!!」
すぱあぁんっ!!
「ぉうふ」
電光石火のごとく抜き放たれたひばりの“小烏丸”の一閃に謎の人物は、妙ちくりんな声を発しながら崩れ落ちた。
その金髪碧眼の人物を見下ろし、“小烏丸”を肩に担いだひばりが大きく息を吐き出した。
「まったく、なにやってるのよクリスは!」
謎の人物の正体は、彼女らのクラスメイトでもあるクリスティーナ・ウエストロードであった。
「うみゅう……相変わらずひばりんのツッコミはキツいよん……」
軽く頭を押さえて身を起こすクリス。その出で立ちは。
「って、何でまだその格好なのぉっ?!」
背中全開おへそ丸だしの青いバニーコスのままだった。それを見てひばりが声を上げ、ほかの面々もひきつった笑みを浮かべた。
その横で、綾香は真っ赤になりながら、両手で胸を抱くようにしながら蒼い瞳を涙目にしつつ荒く息を吐いていた。
「……あ、ありがと……ひばり……」
蚊の鳴くような小さな声で、息も絶え絶えにひばりにお礼を言う綾香。
普段快活で、男子のような綾香が、儚い乙女のようになってしまっていた。
その姿に、秋人と洋介が赤くなりながら胸を押さえた。
いや、雪菜やあかりですら似たような反応である。
「……な、夏目が可愛い」
「さ、さすがはマイハニー綾香ちゅわんだ☆ さっそく僕と付き合って……」
「な、なぜ動悸が早く……??」
「……あれ? わたし、そっちのケは無いはずなんだけど……」
などなどである。反応が薄いのは慎吾や楓だが、慎吾は、『綾香ちゃん可愛いっ!! ハグするハグするぅっ♪♪』『バッ!? やめろ、追い打ちをかけてやんなっ!?』と目をハートにした琴代を必死で止めており、楓はバカバカしいとばかりに肩をすくめていた。
すでに先ほどまでの微妙な空気は微塵も無くなってしまっている。
ブロンドタイフーンの威力たるや恐るべきものだった。
その後復活したクリスを加えて食事が再開された。さすがにクリスがバニーコスのままでは男子が落ち着かないため、琴代の上着を借りて羽織っていた。
「いやぁ、打ち合わせつまらないから抜けてきたよん♪」
そう言って、頬に右の人差し指を当てつつ小首を傾げてウインクしながら小さく舌を出す。
扇情的なバニーガール姿ながら可愛らしいその仕草が似合う。「……あんた司会だろうに」
そんなクリスに慎吾が盛大に息を吐きながら言う。が、慎吾自身はクリスの方を見ないようにしていた。秋人や洋介などはクリスをチラ見している。
男子が落ち着かないだろうとクリスに羽織らせた上着であったが、それがさらなるエロティシズムを呼び起こすなどと誰がわかるだろうか?
女の子座りをしながら器用に箸を使うクリスだが、その上着が一回りは大きいため、袖口からは指先くらいしか見えない。
前もボタンをひとつ留めているだけであり、制服の隙間からのぞく谷間やおへその見えるひし形の窓。さらには女の子座りをしているのできわどい股のラインと太股による奥まったデルタゾーンが形成され、より扇情感を増していた。
それだけではなく、大きめの制服の端から飛び出した太股の肉感が、男性陣の下の方を刺激した。
ちなみに女性陣で気付いてるのは楓とあかりだ。
楓は男子の様子をくだらないとばかりに半眼で見、あかりは笑いをかみ殺していた。
そして。
「……不覚だ。姐さんの接近に気付かないなんて……」
そちらでは、ショックの抜けきらない綾香がうなだれていた。
それを隣のひばりが慰めていた。




