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第一一六話『曇り空の笑顔』


『お、タカか? 昼飯食おうぜ☆ 屋上でみん……』

『ゴメン!』

『……なでって、なんだ?』

『学園長達スタッフと閉会の打ち合わせしながら昼食をとることになってるんだ。だから、ちょっと行けない』

『……な、何だよそれ……』

『ほんとにゴメン。あ、すいません今行きます。ゴメン呼ばれてるから! じゃあ!』

『あっ?! おいっ!!』



 ツーツーツー



 切れてしまったコミュニケーター、“TaC”通話システムに、綾香は悪態をついた。

『なんだよ! タカの奴!』

 そんな風に声を荒げたのは数分前のことだ。

 昼食の場での空気を壊さないように何でもない風を装ってはいる。しかし普段の綾香より格段におとなしくて様子のおかしい彼女の姿に仲間達は戸惑った。ムードメーカーである彼女の精神状態は、周囲の空気に大きく影響するのだ。

「……綾香ちゃん、大丈夫?」

 そんな空気に、思わずひばりは声をかけていた。

 しかし。

「ん? なにがだ? この唐揚げもーらい♪」

 誤魔化すような綾香の姿に、雪菜が思わず顔をしかめ、楓が鼻を鳴らした。

 かすかに綾香の挙動が止まるが、何でもないように唐揚げを口の中へと放り込んだ。

「……綾香ちゃん」

 彼女のそんな姿を見て、ひばりが少し悲しそうに眉尻を下げた。それを横目で見てから、洋介が両手を広げた。

「……しかし、ここは良いね! 学園でも上位に入る美少女ばかりだよ! なにより女子の比率が大きいのが良いね!」

 楽しそうに言う洋介だが、周りは誰も乗ってこなかった。

 さらに綾香が小さくため息をつき、洋介は軽く肩を落としてうなだれた。そんな彼の肩を、秋人が慰めるように叩く。

 それを見て、ひばりが再び口を開いた。

「綾香ちゃん元気出して? きっと吉田君はちょっと忙しいだけだよ?」

「……何の話だ? あたしは元気だぞ?」

 心配そうなひばりに、綾香が笑顔で応えた。しかし、その笑顔にはいつもの輝きは無かった。

「……痛々しいことで」

 小さく、しかし鋭く楓がつぶやいた。だが、綾香はそれを無視した。

「大丈夫だって、ひばり。あたしはいつも通りだぞ? 心配する必要ないぞ♪」

「……でも」

 心配するなと言いたげに綾香が笑顔を見せた。そこに垣間見えるものが、ひばりにはよく見える。

 と、金髪碧眼の少女の背後に影が現れた。

 それを見て、ひばりはちいさく「あ」と、口を開けた。

 そんなひばりに気づいて、綾香の頭上に? が浮かんだ。

「どうし……」

 たんだ? と口を開いた瞬間。



 もにゅん♪



 と、綾香のボリュームのある双丘が鷲掴みにされた。

「…………へ?」

 予想だにしない状況に、綾香の目が点になった。

 周囲の面々も目を丸くし呆気にとられていた。

 その隙に、綾香の二つのマシュマロを、白くしなやかな手がもにゅもにゅと揉みしだき始める。すると、普段快活で、羞恥とは無縁そうな綾香が白い肌を真っ赤に染めて悲鳴を上げた。

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