第一一五話『屋上ランチタイム♪』
「いやぁ、支倉さんのお弁当を戴けるなんて、ぼかぁ幸せだなぁ」
箸で卵焼きを口に運びながら、軽薄そうな少年青島洋介が言う。それを聞いてひばりは苦笑いした。
「そんな大げさだよ」
「この分量、大変だったんじゃないのか?」
そんなひばりに、金髪碧眼の少女、夏目綾香がそう訊ねるが、彼女は首を振った。
「ううん、ちっとも。みんながおいしく食べてくれたら嬉しいなって考えながら作ってたから」
と言って笑った。そこへ大きな体の少女が顔をのぞかせた。琴代だ。
「私も手伝ったんだよ〜♪」
「ま、ひばりのおかげで琴代も料理が出きるようになったからな」
そこへ鳥の唐揚げをパクつきながら口を挟むのは小さな体躯の少年牧野慎吾である。
綾香をランチに誘ったひばりだったが、聞きつけた周囲の面々までもが参加し、慎吾や琴代と合流して学園の屋上まできていた。
特殊な透明樹脂製のフェンスに囲まれた屋上は、基本的に解放されていた。
学園長の『学園もので屋上に出れないとかあり得ないわよ! 徹底的に安全性追求して屋上フリーにするわ!』という鶴の一声によって、設計段階からリラックススペースとして作られている。
おかげで明るい太陽の下でランチを取ることが出きるのだ。
「本当においし♪」
「うむ、確かに」
目の前に自分達の弁当箱を広げたあかりと雪菜もひばりの料理をつつき、絶賛する。その隣に、八組ではない人物がいた。
「……この煮っころがしの味付け、どうやってんの?」
「ああ、それはね……?」
ひばりに訊ねたのは、七組の楓である。あかりと雪菜に弁当を持ってきたらしい彼女は、二人に拉致られ、この場に座らされていた。
「でも意外だよな。狩羽はともかく黒崎って家事出来そうなのにな」
握り飯を片手にしみじみ言うのは秋人だ。彼の言葉に、雪菜が頬を赤らめそっぽを向き、あかりがツーサイドアップを揺らしながら頭を掻いた。
「……べ、別に料理なぞ出来なくとも……」
「わたしはちょっとは出来るよ? ハンバーガーとかサンドイッチとか……」
ぶつぶつつぶやく雪菜とごまかすように笑いながら言うあかりに、一同が笑顔になる。
そんな中で楓があきれ顔で口を開いた。
「あかりはともかく、雪菜は洗濯も掃除も裁縫もダメじゃん」
「ぐ……」
言われて詰まる雪菜。それを見てひばりが助け船を出す。
「じゃ、じゃああたしが教えてあげるよ。練習すればきっと上達するから……」
「ほ、ほんとか?」
すがるような目でひばりを見る雪菜。実はかなり気にしていたらしい。それを見て綾香が楽しそうに笑った。
「あたしも教わるかな? なあタカはどう思……」
振り返りながら言葉をかけた先に、かの少年がいないことに、綾香は声を詰まらせた。
周囲の面々も、困ったように口をつぐんだ。
「あ、あはは。いないのすっかり忘れてたわ……」
皆に向き直りながら笑う綾香。しかし、そこにはいつもの太陽のような輝きはなかった。




