第一一四話『インターミッション4』
「……すまない。負けてしまった」
八組のブースに戻った黒髪ポニーテールな長身武士娘、黒崎雪菜は、腰をしっかりと九十度折り曲げて謝罪を口にした。
それを見て、金髪碧眼の少女、夏目綾香が金色のくせっ毛を揺らしながら笑みを浮かべた。
「まあ良いさ。残りのメンバーでなんとかするってことで」
「けど、一勝三敗で後が無いよ?」
気楽な調子の綾香に、小柄で長い黒髪をポニーテールにした支倉ひばりが不安げに言う。それにあかりと秋人が同調した。
「これはプレッシャーかかるカナ?」
「はは……きっついよな……」
ふたりのつぶやくような声に、綾香が苦笑いした。
「そんなに深刻にならなくても良いよ? 確かにやるなら勝ちたくはあるけど、無理をする必要は無いんだ」
綾香の言葉に、あかりと秋人が顔を見合わせた。
「……夏目さんがそう言うなら……」
「気楽にはやれそうだな」
言いながらあかりと秋人は息を吐いた。
だが、その様子を見ていたひばりは心配そうに綾香を見上げる。その頭に大きな手が覆い被さるように乗せられた。
「……前田君?」
巌のごとき巨漢の少年の行動に、ひばりは首を傾げた。
すると俊夫が笑いながら固めを瞑ってみせた。
「……ありゃあ夏目の気遣いだ。無にしてやるな」
「……う、うん。それは、分かるけど……」
俊夫に言われてうなだれるひばり。その頭を、堅い手が優しく撫でた。
ひばりは、嫌がる素振りも見せずにされるがままになっていた。
「…………」
「お疲れさまですわ。楓さん」
一方、七組のブースでは仏頂面で戻ってきた楓にシモーヌがねぎらいの言葉をかけていた。だが、楓は鼻を鳴らしただけでブース奥のベンチへ向かう。
「お疲れさま山岸さん。宣言通り勝てたね」
隣に座るコゲ茶色の髪をサイドテールにした少女に声をかけられ、楓はうろんげにそちらを見た。
「……どこがよ」
顔を正面に向けなおし、投げやりに言う。
それを見て、辰美は苦笑いを浮かべた。
「……試合に勝って、勝負に負けたってところかな?」
「…………」
楓は辰美に答えず、ただ横目でにらみつけた。が、辰美は苦笑いのままそれを受け流した。
「……うっさいな。説教ならたくさんだよ」
「そんなことはしないよ。ただ、あなたが抱えてるものや彼女とは、一度向き合った方が良いと思うよ?」
優しく諭すような辰美の言葉にしかし、楓は鼻を鳴らしただけだった。
『えー、次の第五試合ですが、ちょうどお昼時になりましたので、午後一時一〇分からの開始とさせていただきます。それまでの間、学園内でおくつろぎください』
レオンハルトによってアナウンスが流れると、会場がにわかにあわただしくなった。時間も十二時になろうかという時刻で、ちょうどランチタイムの時間であった。
試合に出場している面々も、いったんリンクネットからリンクアウトし、横倒しの卵のような座席から次々に顔をのぞかせていた。
「よっし、飯だ飯! 試合に備えてガッツリ食うか!」
「わたしは軽くで良いカナ? 多少空腹の方が戦いやすいんだっけ?」
「ああそうだな」
話しながらルームを出ていく面々を見送ったひばりは、綾香へと振り返った。
「……ねえ綾香ちゃん」
「……ん?」
不意に声をかけられ、綾香が顔を上げた。ひばりは彼女へと微笑みかける。
「一緒にランチしない?」




