第一〇二話『インターミッション3』
「ごめん、綾香ちゃん。負けちゃった……」
ブースに戻ったひばりは開口一番に謝罪を口にしてうなだれた。そんな彼女を見て、綾香は苦笑いしながら頬を掻き、小さく息を吐く。
「……顔を上げてくれよひばり。お前は十分頑張ったじゃんか」
「けど……」
慰める綾香の言葉にしかし、ひばりの自責の念は強い。
綾香は困ったような顔になった。ふと、向こうに辰美の後ろ姿が見えた。
「……あたしから見ても辰美は強いよ。たぶんあたしがやっても結果は変わらなかったんじゃないかと思う。そんな相手とあそこまでやり合えたんだ。十分だよ」
そう言って拳を握りしめる綾香。それに気づいたひばりが顔を上げた。
「そう……かな?」
不安そうな声に、綾香が笑って見せた。
「そうさ! それに、まだほかの奴の試合だってあるんだぜ? しょぼくれてる暇があったらそいつらを応援してやってくれよ。な?」
言われてひばりがあっとなった。確かにまだ四試合残っている。なら、くよくよせずに彼らを応援すべきだろう。
「……そっか、そうだね。うん、今度は応援を頑張るよ!」
消沈していたひばりの意気が上がるのを見て、綾香は笑みを深くした。そしてメンバーを見やった。
「次の第四試合に出るのは……」
「わたしだ」
凛と通る声で長い黒髪をポニーテールにした長身の少女が応えた。女武者といった雰囲気をかもしだしている、黒崎雪菜である。
「案ずるな支倉。なんとしても勝ってみせるさ」
涼しげな顔に微笑を浮かべた。
「戻ったよ? ブリギッタさん。なんとか勝てたよ」
「お疲れさまですわ。これで二勝一敗。一歩リードですわね」
ブースに戻ってきた辰美をねぎらい、つぶやくシモーヌ。
まだ半分にも届かない試合数では、まだまだ安心できない。ここでもう一勝して、チェックをかけたいところだが、そううまくいくものだろうか?
眉根を寄せるシモーヌの胸中はそんなところだろうか?
「……第四試合は」
「あたしだよ。ふぁ……」
振り向いたシモーヌに応える声は、あくび混じりのものだった。肩に触れない程度の長さで、鳥の巣のような天然パーマの赤毛でひばりと変わらぬほど小柄な少女。山岸 楓だ。
気の強そうなつり目に、自信に満ち溢れているかのような笑み。
軽い調子で辰美の脇を抜けてステージに向けう。
「気を付けてね? 山岸さん」
すれ違いざまに辰美に声をかけられ足を止めた。
「そんな必要ないって」
言いながら、辰美へと首を巡らせる楓。
「どうせ勝つのはあたしなんだもの。何に気を付けろってのさ?」
そう言い放ってニヤリと笑う。その顔は、自身の勝利を疑わない者の顔だ。
「ましてや相手が雪菜じゃあねえ」
つぶやいてステージに顔を向ける楓。その視線の先には、槍を手にした凛々しい佇まいの女武者が立っていた。
それを見て、楓が鮫のように笑う。
「ま、サクッと終わらせてくるよ〜」
そう言ってステージエリアに足を踏み入れた。その瞬間、楓の姿が両手に剣の鍔らしきものをひとつずつ持ったレオタードのようなピンク色のボディスーツの姿となった。
「さぁて、しょぉたいむだ♪」




