1960年代の東京は、やらかしたいんだぜ
鉄子にしてみれば、暴走する専務。
クレームは鉄子社長にも大量に来た。
せっかく築き上げたセレブ仲間から
「貴方、下品になったわね。」
「やっぱり貴方は、焼け野原の娘なのよ。」
専務が鉄子社長に会ったのは3日後だった。
「あなた、やってくれたわね。」
「やりたい事って、これ?悪ふざけ?」
専務は、夏の夜9時は若い子向けにホラーサスペンス番組を放映するから、似合う商品をと説明する。
「バカな!この5分間は私のものなの。」
「私が上のステージに這い上がるチャンスなのよ。」
「それを壊しやがって。専務失格ね。」
それを聞いていた周りの若い子は、
「お言葉ですが社長。」
「私たちには這い上がるチャンスはないのですか?」
「なにを!」鉄子社長がうなる。
若い子は言い返す。
「テレビ東和も新しいモノを探しています。」
「他が誰もやらない事を探してます。」
「僕らは大人が押し付けるモノを跳ね返したいんだ。」
その子は鉄子が情熱を注いだ孤児院から巣立った16歳の子だった。
専務は覚悟を決めた。
「貴方の言葉でようやく分かりました。」
「僕らは貴方の踏み台だったんだ。」
「僕らをここまで勉強させて頂いたことには感謝しますが」
鉄子は睨み返す。専務は続ける。
「ここから先は自分たちで、もがき続ける。」
ホラー玉手箱は50個しか売らなかったが、
都内一角の電話をパンクさせる威力があった。ちょっとした事件だった。
新聞が取り上げた。ホラー玉手箱の中身は、本編のホラーサスペンスで実際に使われた「それはそれは怖い小道具」だった。
テレビ東和の社長は記者会見で陳謝しつつ、
「うちのテレビ局は悪ガキ。」
「よそは優等生でけっこう。」
「今後は気をつけて〈挑戦的〉に行く。」
と締めくくった。




