勝負の火には札束を焚べよ
「5人いれば十分よ。さあ、ここに住み込みで働くわよ。」
目の前には東京タワーが見え、小さなビルが下にある。出来て2年めのテレビ東和だ。
テレビ東和は何しろ予算がない。だから番組もセットが安っぽい。誰も見ない、スポンサーがつかない。このありさまだ。
ならば知恵だ!と予算がかからないですむ、本能に訴えるアイデアは何だ?お色気だ!
と突っ走ればPTAが怒り出す。このままじゃ電波が止められる。やばい!
何かうまい抜け道はないのか?
とテレビ東和の会長がキャバレーで嘆いていた。支配人である鉄子はVIP席で聞いて思った。
「うまく入り込めば次があるかも。」
キャバレーと警備業から離れる半年前のことだ。
テレビ東和に入る時
「住み込みって、寮とかあるんですか?」
若い子が訊ねる。
「ないよ。寝る暇ないくらい忙しいもの。」
鉄子があっけらかんと答える。
コンプラのない昭和ド真ん中は非常に都合が良い。
「とは言っても、近所の田町に安宿おさえてあるから。事務所も兼ねてね。」
「寝に来る時は、アイデア1つノートに書くこと。」
専務はテレビ東和で、テレビ番組で商品を売るプロデューサーをすることになった。
誰もやったことがないから、誰でもよい。
テレビ局のスタッフたちと話し合う。
「にしてもねー、この商売って」
「なんて呼べばいいのかなあ?」
「視聴者はどうやって買うんだ?」
「商品はどこで受け取るの?」
テレビ局の営業は形が見えないから、一緒に考えるところから始まった。
専務は大型運輸の老舗、千社運送に相談してみた。ご家庭向けはやっていない、テレビ局が出資してくれたら小包サービスを立ち上げましょう、と言う。
既にご家庭向け小包配送をする丸の内の中央郵便局は「品のない商品など請け負いかねる。」「テレビ東和だろ。どうせお色気商品だろ。」と門前払いだ。
商品を買う手段は電話にした。カラーテレビと電話がある家庭がお客様だと鉄子が決めた。持ち物から収入や払える金額を弾き出す、キャバレー経営から得た感覚だ。
電電公社は乗り気だった。会話の先に広がる様々な可能性をいつも探し信じていたからだ。
「鉄子社長、電話で注文はいけそうです。」
「でもコールセンターという専用の部署が必要です。」
鉄子は喜んで聞き入る。
「商品の配送が大変です。郵便局は断るし、」
「千社運送はご家庭向けのセンター設立に出資してくれるなら請け負うと。」
鉄子は即答で「やりましょう。」
「キャバレーと警備会社の売却で2億あるから。」
「何しろ実現させるの。」




