021話
アクセスありがとうございます。
夕食の時間が近付いた頃、部屋のドアがノックされた。
「フレア、ご飯できたよ」
姉貴の声だ。
「今行く」
椅子から立ち上がり、ドアへ向かい開けた瞬間……何故か姉貴が両腕を広げて待ち構えていた。
「何してるんだ?」
「ハグ」
「しない」
「減るもんじゃないじゃん」
「俺の精神力が減る」
「酷くない?」
全然酷くない……うちの家族は昔から距離感がおかしい。俺が横へ回避して、そのまま階段へ向かう。
「逃げた」
「回避しただけだ」
「つれないなー」
後ろから付いてくる姉貴を無視してリビングへ入った。そこには既に母さんと穂乃果がいた。
「ほらほら、座って座って」
母さんに促され、席へ着く。今日の夕食はハンバーグだった。サラダとスープも並んでいる。
「「「「いただきます」」」」
食事が始まるが、平和だったのは最初だけだ。
「そういえばさ、昨日、綾乃たちと店に行ったじゃん?」
「来たな」
「フレア、結構人気だったよね」
嫌な予感しかしない。
「友達が結構気に入ってたよ?」
「何をだよ」
「真面目なところとか?」
穂乃果まで参戦してきた。
「お兄ちゃん、モテ期?」
「違う」
「でも囲まれてたんでしょ?」
「語弊しかない」
すると姉貴が吹き出した。
「確かに囲まれてた」
「あんたが原因だろ」
「否定できない」
全く反省していない。そんなやり取りをしていると、
「もう」
母さんが頬を膨らませた。
「フレアは私の物なんだから、フレアにちょっかいをかけないの!」
全員が一瞬止まるが、母さんは止まらない。
「愛花も穂乃果も私の物なんだからね!」
「所有権主張された」
穂乃果が呟く。
「お母さん、それ解決になってないよ」
姉貴が苦笑する。
「解決してるよ?」
「してない」
「してるもん」
駄目だ……母さんは酔っていないのに時々こうなる。
「とりあえず落ち着いて食べよう」
「フレアは優しいねぇ」
母さんが満足そうに笑った。そして穂乃果が、
「ほら、お母さんが一番独占欲強い」
と余計なことを言う。姉貴まで頷いた。
結果として夕食はいつも以上に騒がしくなった。食べ終わった頃には、何故か疲労感が凄かった。
「何で夕食だけでこんな疲れるんだ……」
思わず呟く。
「愛されてるからじゃない?」
穂乃果の言葉は聞かなかったことにした。
その後、風呂へ入り、自室へ戻る。時計を見る。まだ寝るには少し早い。
「微妙な時間だな」
動画を見る気分でもない。本を読む気分でもない。自然と視線がマルチギアへ向いた。
「エニシングでもやるか」
今日は既に2回配信している。3回目は流石にいいだろう。今度は1人でのんびり狩りだ。
ダイブしてホームへ到着する。装備を確認し、出発しようとして……ふと思った。
「そういえば」
俺は武器屋へ向かった。店内へ入り、薙刀の一覧を見る。
「少なくないか?」
思わず声が出た……剣、大剣、槍、斧、棍……その辺りは大量に並んでいる。
だが薙刀など一部の武器は妙に少ない。
「マイナー武器だからか?」
今使っている物より上位装備を探すと、すぐに見つかった。
だが問題がある……
「2ランク……いや3ランク上か?」
性能は良いから、当然値段も良い。今の所持金と収入では、当分手に入りそうにない。
「時間かかりそうだな……」
次に防具屋へ向かう。今の皮鎧より上位装備を見る。
「思ったより微妙だな」
未強化、未改造、そのせいで性能差が小さい。多少は上がるが、飛び付くほどではない気がする。
そこでファーストの言葉を思い出した。
『店だけじゃなくてオークションも見ろ』
言われていたな。店から出て、オークションサイトを開く。
「安っ」
最初に出た感想がそれだった。武器屋で見た薙刀が半額以下で並んでいる。
人気がないせいだろうか? だが高ランク品を見ると状況が変わる。
「高いな……」
同ランクの剣や槍より3割ほど高い……強い薙刀自体が少ないらしい。需要と供給の問題だろうか? 買う人も少なければ、需要は少ないだろうけど……
一方、防具は安かった。初心者帯の装備が大量に流通している。強化済みや改造済みでも店売りと大差ない物が多い。
「防具は後回しでもいいな」
戦闘では武器優先と、ファーストにも言われている。
目標を定める。
「まずは新しい薙刀だな」
2~3ランク上の武器……オークション価格で一番安いのなら何とか手が届く。
「1週間くらいか」
十分現実的だった。モチベーションも上がる。
俺は狩場へ向かった……ゴブリン、スライム、ファングボア……見慣れた相手を順番に倒していく。
そして森を進んでいる時だった。
「あれ?」
見慣れないモンスターがいる。
犬っぽい顔……二足歩行……手には粗末な武器……
「コボルトか」
特性を思い出してそうつぶやく。ゴブリンより上で、ホブゴブリンよりは下……確かそんな相手だったはずだ。
いつまでも避けるわけにはいかない。
「やるか」
周囲を確認して、他のモンスターはいないことを確定させる。
問題なし……接近するとコボルトが気付いた。
唸り声を上げながら突っ込んでくる。
思ったより速いし、武器の扱いもゴブリンより上手いが、力は弱かった。
攻撃を薙刀で受け止めるが、衝撃は軽い。
「いけるな」
受け流し、そのまま蹴りを入れると、コボルトの体勢が崩れた。
隙を逃さず薙刀を振る。
一撃……コボルトは光となって消えた。
「倒せたか」
思ったより危なくないな。その後も戦闘を繰り返す。
ゴブリン、スライム、ファングボア、そしてコボルト……
戦利品を回収し、解体ナイフで素材も集める。気付けば結構な量になっていた。
帰ろうとした時、ファーストから通信が入る。
『おう』
「どうした?」
『今どこだ?』
場所を説明すると、
『あー、教えた狩場から少し外れてるな』
「そうなのか?」
『コボルト出ただろ』
「出た」
『迷い込んだって感じだな。でも倒せるなら問題ないぞ』
「そうなのか?」
『ゴブリンより素材高いしな』
少し得した気分になる。
『無理しない程度に狩ればいい』
「了解」
短い会話を終えて通信を切る。街へ戻り、素材を売却する。今日の収入も悪くなかった。
「順調だな」
目標の武器まではまだ遠い……だが確実に近付いている。それが少し嬉しかった。
ホームへ戻り、ログアウトする。
ベッドへ横になる。今日も色々あった。だが悪くない1日だったと思う。
そんなことを考えながら目を閉じる。意識はゆっくりと眠りの中へ沈んでいった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




