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ANYTHING《エニシング》 ~何でもありなオンラインゲームを始めた青年のゲームと現実を描いた物語~  作者: AN@RCHY


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21/28

020話

アクセスありがとうございます。

 昼食を食べ終えた俺は、自室の椅子へ座り込んだ。


 どうするか……とりあえずハジメへ連絡することにした。


 この世界で電話と言えば、マルチギアを通したネット通信のことだ。半世紀前に使われていた電話とは違い、映像も音声も簡単に繋がる。


 呼び出しを送ると、すぐに応答が返ってきた。


『おう』


「暇か?」


『暇じゃない』


「どっちだよ」


 するとハジメが少し笑った。


『どうした』


「いや、今日の配信でさ、喫茶店の常連客に見つかった」


『……は?』


 明らかに理解できていない声だった。


「だから、配信してたら喫茶店の常連客に見つかった」


『何で?』


「俺も知りたい」


 簡単に流れを説明する……キャンプ用品を見ていたこと、コーヒーの話をしたこと、喫茶店で働いていると話したこと、そのあたりで特定されたっぽいこと。


 そこまで説明した瞬間だった。


『ぶっはっ! お前、何やってんだよ!』


「俺が聞きたい」


 しばらく笑い続けている。


「そんなに面白いか?」


『面白いだろ。ゲーム配信で常連客に見つかるとか、なかなか聞いたことねぇよ』


 俺も聞いたことがないけど、実際に起きてしまった。


 その後もしばらく話したが、ハジメはどうやら出掛ける予定があるらしい。


『じゃあ俺行くわ、またな』


「おう」


 通信を切り、静かになった部屋で、俺は椅子へもたれた。


「さて……」


 暇だった……今日は1日ゲームでもするかと思っていたのだが、いざ時間があると妙な感覚になる。


 ずっとゲームするのって、こんなに大変だったっけ? 昔やっていた携帯ゲーム機の狩猟ゲームを思い出す。あの頃は2時間程度なら一瞬だった。気付けば夕方になっていることも珍しくなかった。


 なのに今は少し違う……ゲーム自体は楽しいけど、狩りだけを延々と続ける気分でもなかった。


「歳か?」


 いや、まだ大学生だ。流石にそれは早すぎる。


 とはいえ今日は本当にすることがない。講義で出されたレポートは終わっている。友達とも遊ぶ約束をしていない。本当に暇だった。


 考えてみれば、俺の周りにはバイト仲間も多い。だから日曜日より平日の方が人が集まっている気がする。バイト終わりに合流することもあるし、急な休講になれば遊びに行くこともある。


 その方が予定も合わせやすいのだ。


「穂乃果は……」


 妹の顔が浮かぶ……来年受験生だが、現時点で竜胆大学の合格圏内にいる秀才……友達と遊びに行っているんだっけ?


 俺はハジメに教えてもらいながら何とか合格したのに。同じ両親から生まれているはずなのに理不尽である。姉貴もそうだったよな……


 姉貴もほとんど勉強していなかった記憶が……それなのに普通に合格していた。意味が分からない。


 そういえば姉貴、今日はバイトだったか……何のバイトをしているのか知らないけど、結構稼いでいるらしい。違法なことをしていないか少し心配になるが、母さんは知っているので問題ないのだろう。


 考えていても仕方ない、ゲームを始めれば気分も変わるだろう。


 俺は再びマルチギアを装着し、ダイブする。


 


 ハジメに以前言われていた、狩りをするなら一応配信しておけ、と。今日も配信するか。


 全年齢対象

 タイトル

【初心者フレアの活動日記6日目 狩りをしながら雑談】

 配信内容

【タイトルのまま。ANYTHING初心者のフレアの活動日記。基本的には雑談中心のノンビリ配信となります】


 入力を終え、そのまま開始ボタンを押した。


「みなさん、こんにちは。フレアです」


 いつもの挨拶、視聴者数は1人……しばらくすると2人、また1人になる。時間も時間なので、人が少ないし出入りも激しいな。


「今日は狩りをしながら雑談です」


 街を抜けて狩場へ向かい、ゴブリンを見つけて倒し、素材を回収する。


 ビッグボアも狩る……特に変わったことはない。いつもの狩りだった。


 だが開始から30分ほど経った頃だった。


『本当に狩りしてるな』

『フレア君だ』

『痛そうな見た目だけど本人だね』

『ゲームだと派手だね』


「来たな」


 見覚えのあるコメントだった。


「何でいるんです?」


『暇だから』

『日曜日だから』

『見に来た』


 絶対示し合わせている。そんな気がした。そんなやり取りをしていると、


『お、また配信してるじゃん【ゼノン】』

『こんにちはー【シェリー】』


 いつもの二人が現れた。


『なんか賑やかだな【ゼノン】』

『知り合い?【シェリー】』


 当然の疑問だった。


「喫茶店の常連客です」


『は?【ゼノン】』

『え?【シェリー】』


 2人とも固まった。


『何でゲーム配信に喫茶店の常連客いるんだ【ゼノン】』


「俺も聞きたい」


『偶然だ』

『偶然ですね』

『たまたまだよ』


 コメント欄が全く信用できない。ゼノンとシェリーも半分呆れていた。そこからは妙な流れになった。


『フレア君って店でもこんな感じ?【シェリー】』


『もっと大人しい』

『いや結構喋るぞ』

『どら焼き上手い』

『コーヒーはまだまだ』


 するとシェリーが笑う。


『面白いなぁ』

『普段どんな人なんです?【シェリー】』

『真面目』

『働き者』

『苦労人』

『からかうと面白い』


「最後余計ですよね?」


 コメント欄が笑いで埋まる。一方で常連客たちはゲームについて質問し始めた。


『このゲームって難しいの?』

『初心者でもできる?』

『課金いる?』


 ゼノンとシェリーが丁寧に答えてくれる。


『慣れれば簡単ですよ【ゼノン】』

『月額かかりますが、1000円ほどですね【シェリー】』

『自由度高いですし【ゼノン】』

『へぇ』

『孫がやってたな』

『うちの子どもも遊んでる』

『始めてみるか?』

『面白そうだな』


 妙に前向きだった。本当に行動力がある人たちである。俺はゴブリンを倒しながら思った。


 学校ではそこまででもないけど、家でも喫茶店でもゲームでも……


「何でどこ行ってもからかわれる側なんだろうな……」


『愛されてるから』

『人気者だな』

『頑張れ』


「絶対違う」


 だが誰も信じなかったけど、楽しい時間は本当に早い。気付けば配信開始から3時間近く経過していた。


「そろそろ終わります」


『おつかれー』

『楽しかった』

『またな』

『狩り頑張れ』

『店も頑張れ』


 最後まで余計な一言が混ざっていた。


「ありがとうございました」


 配信を終了する。そして今日の戦利品を売却するため、街へ戻る。


 素材をまとめて換金……表示された金額を見て思わず頷いた。


 順調だった。


 毎日少しずつだが確実に増えているから、初心者としては十分だろう。


「いい感じだな」


 財布代わりのインベントリを確認する……装備更新まではまだ距離があるけど、目標が見えてきた。こういう積み重ねは嫌いじゃない。


 俺は満足しながらホームへ戻った。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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