016話
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夕食を食べ終えた俺は、自室へ戻った。今日もすでに風呂へ入っているから後は自由時間だ。ゲームの途中でお風呂に入るとなると、どうしても時間が気になるからな……
しかも明日は、土曜日! 講義はない。
バイトは入っているが昼前からだ。11時頃の出勤になるので、多少夜更かししたところで問題はない。
マルチギアを確認すると、ハジメからメッセージが届いていた。
『今日は参加型やる』
『リスナーと狩り?』
『そう』
『頑張れ』
『おう』
会話終了。必要最低限だった。
どうやら今日はリスナー参加型らしい。配信者と視聴者が一緒に狩りへ行く企画だ。俺にはまだ無理だろう……そもそも視聴者が少ないから、参加型をやろうとしても参加者がいない可能性がある。
「さて」
ゲームの準備をしながら考える……今日は何をしようか? ハジメには以前言われていて、無理に話題を作る必要はない、と。
確かにそうなのだろう……雑談配信なのだから雑談していれば成立するが、やるからには何か目的が欲しい。目的もなく歩き回るのは性格的に落ち着かなかった。
「う~ん……」
しばらく悩む……レベル制のゲームなら経験値稼ぎという分かりやすい目的があるけど、エニシングにはレベルが存在しない。
強くなるためには金を稼ぎ、装備を整える必要がある。
「素材集めかな」
結局そこへ落ち着いた。狩りをして素材を集め、売り金を貯める。
初心者としては十分な目標だろう。方針が決まったのでダイブを開始した。ただいまの時間は、22時少し前。
ホームへ出現し、そのまま配信準備を始める。
設定はいつも通り。
全年齢対象。
タイトル。
【初心者フレアの活動日記5日目 狩りをしながら雑談】
配信内容。
【タイトルのまま。ANYTHING初心者のフレアの活動日記。基本的には雑談中心のノンビリ配信となります】
4日目はファーストとのコラボだったから、今日は5日目になる。
配信開始ボタンを押すと、視界端に開始通知が表示される。
「みなさんこんばんは、フレアです。今日は狩りをしながら雑談していこうと思います」
いつもの挨拶、だが反応は無かった。
視聴者数は見えるので、いることは分かっている。ただコメントが流れない。
「なるほど」
今日は静かだった、ハジメも配信していると言っていたし、他にも人気配信者は大勢いる。
初心者配信へ人が集中する方がおかしいから、むしろこれが普通なのだろう。
俺は気にせず狩場へ向かった。ゴブリンを倒し、心臓付近にある魔石を回収する。ビッグボアを倒し、解体ナイフを刺して待つ。
特に事件は起きない。平和で暇だった。
「そういえば、魔法生物って何がいるんだろうな」
以前教わったことを思い出す。
スライム、ゴーレム……どちらも魔法生物に分類されるが、違いもある。
スライムは魔石しか落とさない。ゴーレムは素材を落とす……同じ魔法生物なのに違うのだ。
「じゃあ他には何がいるんだ?」
独り言のように続け、知識を引っ張り出す。
「元々生き物じゃない物が、魔法で動いてるのが魔法生物だとしたら……」
「リビングアーマー……鎧が勝手に動く系統、あれは間違いなく魔法生物だろう」
「となると、スケルトンとかゾンビもそうなのか?」
「少なくとも死体は生きていないが、動いている理由が魔法なら魔法生物扱いのはずだよな……」
「じゃあレイスは? 幽霊系であるあれは、実体がない。でも生きてはいない。どうなんだろうな?」
そんなことを話していると、ようやくコメントが流れた。
『分類的にいえば、生きていない物は全て魔法生物になるけど、魔法生物にも分類はあったりするぞ【ゼノン】』
「あ、ゼノンさんこんばんは」
ようやく常連が来た。
『こんばんはー』
『いた』
『生存確認』
少しだけコメント欄が動き始める。
「分類って?」
『スライムは非生物系』
『ゴーレムは物質系』
『スケルトンやゾンビはアンデッド系』
『レイスはスピリチュアル系』
「へぇ」
思ったより細かかった。確かに全部同じ扱いでは違和感があるよな……スライムとスケルトンが同種と言われても困る。
『他にもあるぞ』
『結構細かい』
『覚える必要はないけどな』
初心者の俺には覚えることが多すぎるから、少しずつでいいよな。とりあえず基本だけ知っておけば問題ないだろう。
ゴブリンを倒しながら考える。
「でもさ、実体ある奴はいいんだよ。スケルトンもゴーレムも殴れば当たる……そのうち倒せるだろうから、問題ないと思う。レイスみたいなのはどうするんだ?」
あれは実体がないので、薙刀で斬っても当たる気がしない。
するとすぐに返事が来た。
『魔法攻撃か魔法を付与された武器で攻撃すれば、ダメージが与えられるぞ』
「なるほど」
納得した、ファンタジーらしい。
『物理だけだと厳しい』
『ゴースト系あるある』
『対策必須』
「じゃあスピリチュアル系が出る場所だと武器も変わるのか」
『変わる』
『魔法武器持つ』
『付与してもいい』
俺は少し考える。
「魔法もスタミナ消費だよな?」
『そう』
『魔法もスキルもスタミナ』
『共通リソース』
そこが問題だった……このゲームでは魔法もスキルもスタミナを消費する。つまり魔法剣士スタイルだと、魔法に使う分とスキルに使う分の両方が必要になる。
「大変そうだな」
『だから管理が重要』
『初心者には難しい』
『それな』
「やっぱりそうなんだ」
『付与だけして戦う人もいる』
『魔法付与武器を複数持つ人もいる』
『スタイル次第』
なるほど、魔法で付与だけして、スキルを使わず済ませる。あるいは魔法付与済みの武器を持ち歩く。そういう戦い方もあるらしい。
改めて思う……ただ殴るだけのゲームではない、だから面白いのかもしれない。
その後も雑談は続いた。
好きな食べ物の話、モンスター肉は美味いのかという話、現実で猪肉を食べたことがあるかという話、解体はやっぱり無理そうだという話……
内容は本当にくだらないものが多かったが、コメント欄も少しずつ増え、思った以上に楽しかった。
気付けば時刻は0時を回っていた。
「もうこんな時間か」
『はやい』
『おつかれー』
『今日は平和だったな』
「それじゃあ今日はこの辺で終わります。みなさんありがとうございました」
『おつー』
『お疲れ様』
『またなー』
『活動日記6日目待ってる』
視界からコメント欄が消え、静かになった。
「さて」
これから、どうしようか? ログアウトしてもいいけど、まだ眠くはない。
そう考えた瞬間、通知音が鳴る。
『ホームに来い【ファースト】』
「何だ?」
首を傾げながらも移動申請を承認する。数秒後、転送エフェクトが視界を包んだ。俺はファーストのホームへ向かう。
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