表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANYTHING《エニシング》 ~何でもありなオンラインゲームを始めた青年のゲームと現実を描いた物語~  作者: AN@RCHY


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/28

015話

アクセスありがとうございます。

 今日は2限目から講義だった。だからいつもより少し遅めの時間に家を出る。


 朝食を済ませ、必要な物を確認して玄関を出ると、すでに見慣れた姿が待っていた。


「おう」


 ハジメ……そして今日はもう1人いた。


「おはよう、フレア君」


「おはようございます」


 ハジメの姉である綾乃さんだった。うちの姉貴も含めて同じ大学へ通っているので、一緒に登校すること自体は不思議ではない。


 ただ、こうして俺たちと一緒なのは少し珍しかった。


「何かあったんですか?」


 俺が聞くと、綾乃さんが笑う。


「ちょっと聞きたいことがあってね」


「俺にですか?」


「そう」


 そして歩き始めながら話を続けた。


「フレア君って、喫茶店でバイトしてたよね?」


「してますけど」


「マスターのコーヒーが美味しいって聞いたんだけど、場所を教えてほしいの」


「店ですか?」


「今度、おしゃれなカフェに友達を連れていく話になってね」


 なるほど。


「フレア君のことを話したら、みんな乗り気になっちゃって」


「何でです?」


「愛花の弟だから」


 嫌な予感がした。


「愛花の弟ってだけで、みんな関心を持つのよ」


「姉貴何やってるんだろうな……」


 思わず遠い目になるが、問題はそこではない。


 俺は少し悩んだ。綾乃さんや姉貴なら問題ない。だが友達がどういう人たちか分からない。店の雰囲気に合うかどうかも判断できなかった。


「とりあえず見てもらった方が早いですね」


 マルチギアを操作する。


 店内の写真、マスターの写真、常連客たちの写真、できるだけ普段の雰囲気が分かる物を表示した。


「こんな感じです」


「へぇ……」


 綾乃さんが真面目な顔で見始める。


「なるほどね」


 数十秒ほど確認した後、納得したように頷いた。


「シックな感じでいい雰囲気ね」


「ですよね」


「何人か普段着だと合わない子もいると思うけど」


「ああ、やっぱり」


「でも、その日だけは合うコーディネートをしてもらえば問題ないと思うわ」


 綾乃さんがそう言うなら大丈夫だろう。姉貴も綾乃さんも騒ぐタイプではない。見る目もある。


「一応マスターには話しておきます」


「お願いね」


 そんな話をしながら大学へ向かっていると、前方から数人の男が近付いてきた。


 嫌な予感がした。そして予感は当たる。


「ねぇねぇお姉さん」


「時間ある?」


 綾乃さんへ話しかけてきた。ナンパである。


「ごめんなさい」


 綾乃さんが即答して、普通ならこれで終わるのだが、今回は終わらなかった。


「そんなこと言わずにさ」


「少しくらい」


 面倒なタイプのようなので、俺とハジメが前へ出る。


「すみません」


「急いでるんで」


 だが相手は引かなかった。むしろ面倒そうな笑顔になる。


「別にいいじゃん」


「ちょっと話すだけだし」


 話にならない。こういうタイプは苦手だった。どうしたものかと思った瞬間だった。


「お姉さん!」


 聞き慣れた声が響く。全員が振り返ると、そこには正宗がいた。朝から無駄に爽やかだった。


「おはようございます!」


 しかも綾乃さんへ向かって深々と頭を下げる。


 礼儀正しい。異常なほど礼儀正しい。筋肉系に所属しているせいか、上下関係……特にあいさつに関しては、人一倍厳しいのが正宗だ。


 その姿を見た男たちが固まった。そして正宗の体を見る。


 広い肩幅、分厚い胸板、無駄に発達した腕、何故か太陽に映える筋肉。


「じゃ、じゃあ俺たち用事あるんで」


「またな!」


 男たちは走って逃げていった。一瞬だった。


「助かった……のか?」


「たぶんな」


 ハジメも苦笑している。時代が変わっても、こういう人種は消えないらしい。昔のことなんて漫画やアニメでしか知らないが、それなりにあった話だと聞いている。


「ありがとう、正宗君」


 綾乃さんがお礼を言うと、正宗は満面の笑みになった。


「いえ!」


 嬉しそうだった。だが何故お礼を言われたのかは、理解していない顔だった。こいつ本当に脳筋かもしれない……脳まで筋肉が詰まっていそうである。


 大学へ到着すると綾乃さんは友達と合流し、そのまま講義棟へ向かっていった。


 俺たちはいつもの3人組である。学生たちとも普通に挨拶を交わしながら移動した。最近ではそれなりに有名らしい、主に正宗のせいで……




 講義を終えると、そのままバイト先へ向かった。今日はハジメも一緒である。


 店へ入るとマスターが微笑んだ。


「おや、今日はハジメ君も一緒ですか」


「お邪魔します」


「ゆっくりしていってください」


 俺は更衣室でエプロンを身に付けて、いつものように仕事を始めた。


 常連客たちも集まっている。


「そういえば」


 コーヒーを準備しながら朝の話をする。


「近いうちに姉と綾乃さん、それと友達が来るかもしれません」


「ほう」


「大丈夫ですか?」


 するとマスターは即答した。


「この喫茶店は、来るもの拒まず、です」


 穏やかな声だった。


「誰が来ても相手はします」


 そして少しだけ目が鋭くなる。


「ですが、雰囲気を壊すのであれば出ていってもらいます」


 迫力があった……実際にマスターはやる。


 普段は好々爺そのものだ。だがマナーの悪い人間には厳しい。暴力に訴えれば、古武術の師範でもあるマスターが黙らせる。


 しかも常連客の一部は同門だ。見た目では分からないが物理的に強い人が多い。


 以前、俺より細いお婆さんと腕相撲したことがある。全く動かなかった……意味が分からなかった。


「うちの姉貴なら叩き出してもいいですけど」


「おい」


「綾乃さんと友達は穏便にお願いします」


 店内に笑いが広がる。


 するとハジメが口を開いた。


「自分の姉貴はどうでもいいけど、愛花さんと友達には優しくしてください」


「何でだよ」


「事実だろ」


 自然と睨み合いになる。


 そんな俺たちを見て、マスターが苦笑した。


「君たちのお姉さんと、そのお友達であれば大丈夫でしょう」


 その言葉で話は終わった。確かにそうかもしれない。少なくとも姉貴たちが騒ぐ姿は想像できなかった。


 その後も仕事は続く。コーヒーを淹れ、注文を運び、常連客に弄られ、気付けば閉店時間になっていた。




 片付けを終えて店を出る。


「疲れたな……」


 思わず呟く……特別忙しかったわけではない。だが朝から色々ありすぎた。


 ナンパ、正宗、姉たちの来店予定、マスターへの相談、常連客の弄りと無茶ぶり……妙に濃い1日だった気がする。


 夜風を受けながら家路を歩く。


 きっと姉貴たちが来たら、また何か騒ぎが起きるのだろう。マスターに叩き出されるような騒ぎではなく、違った騒ぎの予感なのだが……


 そんな予感を抱きながら、俺は少しだけ重くなった足を動かして帰宅するのだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ