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ANYTHING《エニシング》 ~何でもありなオンラインゲームを始めた青年のゲームと現実を描いた物語~  作者: AN@RCHY


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15/28

014話

アクセスありがとうございます。

 フィアデルシアへ戻ると、夕暮れ色の空が街を染めていた。


 俺はインベントリを開く。


 今日の収穫はファングボアの肉や牙、皮、スライムの魔石、それからゴブリンが落とした雑多な素材だ。


 決して悪くないが、今の俺に必要なのは素材ではなく金だ。冒険者ギルドへ入ると、受付の横にある買取窓口へ向かう。


「買取お願いします」


 素材をまとめて提出すると、職員が手際よく査定していく……数分後。


「こちらになります」


 表示された金額を確認する。


「おぉ」


 初心者の俺からすれば十分な額だった。もちろん大金ではないが、昨日までの所持金と比べればかなり増えている。


 そのまま受け取りを済ませる。


「全部売ったのか?」


 近くにいたプレイヤーが少し驚いたように聞いてきた。


「ああ」


「残さなくていいのか?」


「必要になったら買う」


 ハジメから色々聞いたが、序盤素材に特別な価値はほとんどない……レア素材なら話は別だが、初心者狩場のドロップ品だ。


 売ってしまった方が楽らしい。ホームにも荷物は置けるが、倉庫ではないので無限に置けるわけではない。


 下手に溜め込むより金に換える方が便利なのだとか。それに中級者になり始める頃の装備なら、オークションでも普通に購入できるから、初心者ほど現金を持っていた方が色々と便利らしい。


 このゲームにレベルは存在しない。だから強くなる方法は単純だ。


 金を稼ぎ、装備を更新する。


 少し上の狩場へ行ってさらに稼いで、また装備を更新する。


 それを繰り返していく。


 そして上級者になる頃には、お金よりもレアアイテム目的でモンスターを狩るようになる。ハジメが言っていた。


「まずは装備だな」


 今の俺は初心者装備……目標は分かりやすい方がいい。


 少しずつでも強くなろう。そう考えながらホームへ戻り、そのままログアウトした。




 翌日、大学へ到着した瞬間だった。


「諸君!」


 聞き慣れた声が響く……正宗である。


「筋肉とは!」


「逃げるぞ」


「賛成」


「待ちたまえ!」


 いつもの流れだったが、今日は結局捕まってしまい、俺たちは講義が始まるまで筋肉談義を聞かされることになった。


「大胸筋はな!」


「へぇ」


「そうだな」


 半分どころか9割くらい聞いていない、相槌のために話の流れを聞いている感じだ。それでも正宗は満足そうだった。本人が幸せならそれでいいのかもしれない。


 たぶん……


 講義を受け、昼食を食べ、午後も終える。


 そしてバイト先の喫茶店へ向かった。


 マスターが出迎えてくれ、常連客が集まっていた。最近、恒例となっているコーヒーの練習に付き合ってくれるメンバーだ。


 マスターが指導してくれ、それを見守ってくれる常連客……無茶ぶりをしてくるが、優しく見守ってくれるいい人たちだ。


 バイトが終わり、家に帰って夕食を食べる。風呂、軽い家事、いつもの日課を終えた後、俺はエニシングへログインした。




 視界が安定すると同時に通知が届く。


【ファーストからパーティ招待】


「お?」


 受諾すると即座にメッセージが飛んできた。


【コラボするぞ】


「いきなりだな」


 だが断る理由もない。指定された場所へ向かう。そこにはファーストが待っていた。


 挨拶をして、改めて姿を見る。


「ファーストって皮鎧なんだな」


 何となく意外だった。大剣を使うから金属鎧のイメージがあったのだ。


 するとファーストが笑う。


「このゲームで布装備が魔法防御高くて、金属鎧が物理防御高いのは知ってるよな?」


「ああ」


「皮鎧はその中間なんだよ」


 なるほど。


「器用貧乏?」


「半分正解、皮鎧は布装備みたいに魔法を補助してくれるんだ。だから俺みたいな魔法剣士スタイルには相性がいい」


「へぇ」


 近付いてよく見ると、胸や肩など重要そうな場所には金属プレートが埋め込まれていた。


「急所は補強してるからな」


「防御足りるのか?」


「十分だ」


 しかも金属鎧ほど重くないから、動きの制限も少ない、だから人気らしい。


 ふと思い出す。


「姫騎士と黒騎士の人たちって金属鎧だったよな?」


「ああ」


「魔法も使ってたぞ?」


 するとファーストが吹き出した。


「あれは、ロールプレイだからな」


「ん?」


「皮鎧の見た目を金属鎧に加工してるんだよ」


「そんなことできるのか」


「できる」


 何でもありだな、このゲーム。


「ただし、金も手間も素材もめちゃくちゃかかる」


「なるほど」


 簡単には真似できないらしい。俺にはまだ縁のない話だった。


「行くぞ」


 ファーストが歩き出したので、俺は後を追った。向かった先は昨日よりランクの高い狩場だった。


 森だ。見た目は似ているが空気が違う。


「ここは?」


「ホブゴブリン、ビッグボア、たまにオーク」


「初心者卒業くらい?」


「そんな感じ」


 正直1人なら怖いが、今日はファーストがいる。それだけで安心感があった。


 狩場へ到着すると、俺たちはライブを開始した。


「みなさん、こんばんは。フレアです」


「ファーストだ」


 コラボ配信が始まる。画面には共有チャットが表示されていた。色が違うので、どちらのリスナーか分かるらしい。


『こんばんはー』

『コラボだ』

『フレア君だ』

『KIRIN児コンビだ』


「開幕からやめろ」


『草』

『言われてるぞw』


 挨拶は簡単に済ませ、指導が始まった。最初に驚いたのはファーストの戦い方だった。


「防御しないのか?」


「するぞ」


「してないだろ」


「してる」


 意味が分からない……だが戦闘が始まると理解した。


 ホブゴブリンが剣を振るうと、ファーストは大剣で受ける。しかし完全に止めるわけではなく、弾いて流す。


 ホブゴブリンとは違うが、ファーストも少し姿勢を崩す。


 そして……スキルを使い、一瞬で姿勢を立て直しながら反撃すると、ホブゴブリンが吹き飛んだ。


「なるほど」


「攻撃だけじゃないんだよ」


 スキルは姿勢制御にも使える。それが面白かった。俺も真似してみるがうまくいかない。


「難しいな」


「そりゃそうだ」


 登録しているスキルが違うし、経験も違う。それでも少しだけ感覚は掴めた。


「面白い」


「だろ?」


 雑談をしながら狩りを続けると、案の定、コメント欄の流れがおかしくなった。


『KIRIN児って本当?』

『ファーストのリアル教えて』

『彼女いないの?』

『モテそうなのに』


「やめろ」


 即座にファーストが返す。


『反応早いw』

『怪しい』

『図星?』


「図星だろ」


 俺が言う。


「こいつ高校の頃……」


「待て」


「……ゲームしてた」


「普通だった」


『草』

『普通だった』

『止める必要あった?』


 コメント欄が盛り上がる。ファーストも負けじと反撃する。


「フレアだってな」


「何だよ」


「料理できるしコーヒーも淹れられるぞ」


『高スペック』

『モテそう』

『なのにKIRIN児』

『なぜだ』


「余計なお世話だ」


 俺はため息を吐く。次第にもう1人のKIRIN児の話題で、自然と正宗へ移った。


「正直な」


 ファーストが言う。


「一番最初に卒業しそうなの正宗だと思う」


「分かる」


 俺も頷く。


「筋肉しかないのに」


「筋肉しかないのにな」


『ひどいw』

『でもモテそう』

『筋肉需要あるぞ』

『マネージャー候補いるんだろ?』


「いる」


「いるんだよなぁ」


 俺とファーストが同時にため息を吐いた。


『wwwww』

『嫉妬か?』

『草草草草草』

『大草原』

『KIRIN児の悲鳴』


 コメント欄が大爆発する。俺たちも思わず笑ってしまった。


 そんな雑談を続けながら狩りを行い、気付けば予定時間になっていた。


「そろそろ終わるか」


「だな」


 最後に挨拶をする。


「今日はありがとうございました」


「またな」


『おつー』

『楽しかった』

『KIRIN児頑張れ』

『筋肉ダルマに負けるな』


「そこ応援するとこじゃないだろ」


 最後まで弄られながら、俺たちは配信を終了した。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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