013話
アクセスありがとうございます。
「みなさん、フレアです。よろしくお願いします。今日もタイトルのまま、戦闘と初めてのスキル設定していこうと思います」
数秒後、コメント欄が動き始めた。
『乙ー【ゼノン】』
『おつおつ【シェリー】』
『相変わらずかたいw』
『ニュース番組かな?』
『活動日記3日目だー』
「はい、ありがとうございます」
特に反応しない。昨日も言われたし、一昨日も言われた。正直なところ、この挨拶で始めるのも悪くない気がしている。
『スルーされたw』
『完全に無視で草』
『ファーストなら絶対弄る』
『いるぞ【ファースト】』
『確かにいるw』
「明日軽く殴ろうかな」
『風評被害だろ!【ファースト】』
『即否定w』
『でも心当たりあるんだろ?』
『草』
視聴者数は10人ほどで、決して多くはない。だがコメントを書いてくれる人がいるおかげで、変な気まずさはなかった。雑談しながら歩いていると、草むらが揺れる。
飛び出してきたのはゴブリンだった。
「第一村人……っと、第一モンスター発見! 昨日の復習で、軽く戦闘をしていこうと思います」
『古いwww』
『何年前のネタだよw』
『半世紀クラスでは?』
『分かる俺もおっさん』
『若い子分からんぞ』
「別にいいだろ」
ゴブリンが棍棒を振り上げながら接近してくる。昨日なら少し躊躇していたかもしれない。
だが今日は違う。
振り下ろされた棍棒を薙刀で受け払うと、ゴブリンの体勢が流れる。
その隙へ踏み込み、胸元へ刃を突き立てた。
クリティカル判定。
ゴブリンのHPが消し飛び、そのまま崩れ落ちた。
「よし」
『うまくなってる』
『昨日より動きがいいな』
『初心者にしては上出来』
「スライムは消えるんだから、精霊に分類されるゴブリンも消えてくれればいいのに……」
コメント欄が少し割れた。
『精霊?』
『ゴブリン精霊扱いなん?』
『神話系だな』
『知らんかった』
『北欧系だったっけ?』
『作品によって違うぞ』
「俺も詳しくは知らん」
とりあえず死体から視線を逸らす。慣れたとはいえ、まだ少し抵抗はあった。
歩き始めて数分後、今度はファングボアが現れるが、発見した瞬間には、すでに突進を開始している。
「おっと」
薙刀を構えて、タイミングを合わせる。
そして――左側から振り下ろすと同時にステップ。
薙刀の反動も利用して進路から外れる。刃が側面へ食い込み、ファングボアの体勢が崩れ、そのまま転倒した。
「ラッキー」
即座に追撃で、首元へ突きを放つと、HPが消えファングボアが動かなくなった。
『うま』
『今の綺麗』
『昨日より全然動けてる』
『薙刀向いてるんじゃね?』
「そうか?」
『少なくともモップより向いてる』
『モップ言うなw』
しばらく狩りを続ける。
ファングボア、スライム、ゴブリン、同じ相手ばかりだが、少しずつ動きに慣れてきた。
そして20分ほど経過したところで、セーフゾーンへ戻る。
「さて、本日の本題だ」
『スキル!』
『初心者初スキルタイム』
『設定沼へようこそ』
メニューを開き、スキル登録画面へスクロールし、説明を読む。
「へぇ……なるほど」
このゲームには職業固有スキルみたいなものが存在しない。代わりに自分で動きを登録する。
最初は疑問だった。
「これさ、自分でできるなら登録する意味なくないか?」
『あるぞ』
『スタミナ使う代わりに威力上昇』
『補正入る』
『姿勢崩れてても強引に出せる』
「なるほど」
俺は薙刀の基本動作を順番に登録していく。
突き、払い、受け、右切り下げ、左切り下げ、右切り上げ、左切り上げの合計7種類。
「こんなもんか」
『基本に忠実』
『初心者なら十分』
『残り3枠どうする?』
「パリィ用かな」
武器1種類につき登録できるのは10個までだから、残り3枠は温存することにした。
設定を終え、再び草原へ出る。
「じゃあ試運転だな」
都合よくファングボアが現れた。こちらを見た瞬間、猛突進してくる。
「ちょうどいい」
迎え撃つために、薙刀を構える。
スキル発動……突き
補助エフェクトが走り、いつもより鋭い一撃。薙刀の穂先がファングボアの額へ突き刺さった。
「よし――」
次の瞬間だった。
ドゴォッ!
「うわぁぁぁぁ!?」
視界が回転した。空が見える。草原が見える。
何が起きたか分からないまま地面を転がる。
数秒後、ようやく停止した。
「……え?」
『吹っ飛んだwww』
『5mくらい飛んだぞw』
『ナイスチャレンジ』
『初心者あるある』
「吹っ飛んだのか俺!?」
『吹っ飛んだ』
『綺麗に飛んだ』
『芸術点高い』
慌てて起き上がり周囲を見渡すと、少し離れた場所では、ファングボアが死んでいた。
「スキルを使ったのに……」
『初期装備で突進止められるわけないだろw【ファースト】』
『それなw』
『威力補正はあるけど万能じゃない』
『重量差がある』
『ゲームだからこそ物理法則もある程度ある』
「そんなぁ……」
スキルはもっと万能だと思っていた。使えば何とかなるものだと。現実は甘くなかったらしい。
『そういや解体しろ【ファースト】』
「あ」
完全に忘れていた解体ナイフの存在だ。
「そうだった」
『どういうこと?』
『説明しとけw【ファースト】』
「ちなみにこれはファーストから借りています。買取前提だけどな」
収納から解体ナイフを取り出す。そして死亡したファングボアへ近付いた。
「これを刺せばいいんだよな?」
『そう』
『初心者救済装備』
『便利だぞ』
恐る恐る突き立てると、ナイフが淡く発光した。
「おぉ?」
光が死体全体へ広がる。
3分後――ファングボアの体が分解され、素材へ変換された。
肉、牙、皮などが、綺麗に並んでいる。
「すげぇ……」
『文明の利器』
『解体職人涙目』
『いや職人はもっと効率いいぞw』
「これなら俺でもできるな」
素材を回収しながら頷く。少なくとも猪を捌く動画を見ながら悩む必要はなさそうだった。今日一番の収穫は、もしかするとスキルよりも、この解体ナイフかもしれない。
「だけど、思ったより時間がかかるんだな」
『普通に解体すれば、どんなに頑張っても30分近くかかるぞ【ゼノン】』
『だけど、自力でやれば素材が5倍近く増える』
『強い個体なら、素材も良い物がたくさんあるから、自力で解体するようになるのよね【シェリー】』
『あと、解体ナイフだとレアな素材が出ないから、そのうち解体を覚える必要があるんだよな【ファースト】』
素材が5分の1になってレア物は出ないけど、突き立てておくだけで3分で解体できるなら、十分すぎるか……
解体された素材をインベントリに収納して、狩りを続けた。
1時間ほど狩りをしたところで、配信を終了しフィアデルシアに戻った。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。




