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ANYTHING《エニシング》 ~何でもありなオンラインゲームを始めた青年のゲームと現実を描いた物語~  作者: AN@RCHY


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012話

アクセスありがとうございます。

 午前中の講義が終わり、俺とハジメは食堂へ向かっていた。その横には当然のように正宗がいる。


「だからね諸君! 朝も言ったが、筋肉は1日にして成らずなんだよ!」


「へぇ」


「そうだな」


 俺とハジメは適当に返事をしながら歩くが、もちろん話は聞いていない。


「食事! 睡眠! 運動! この3つが揃って初めて肉体は完成する!」


「解体ナイフの話だけど」


「ああ、準備しておくよ」


「サンキュー」


 完全に別の会話だったが、正宗は気付かない。


「特に食事は重要だ! 何を食べるかで肉体は変わる!」


「助かるわ。解体とか無理だった」


「最初はみんなそんなもんだって」


 俺たちはエニシングの話を続ける横で、正宗は筋肉の話を続ける。会話として成立していない。


 しかし本人は満足そうだった。


 食堂へ到着すると、昼時ということもあり、それなりに混雑していた。


「俺、カツカレー」


「俺は大盛りカツ丼」


 食券を購入するその瞬間だった。


「待ちたまえ!」


 正宗が割り込んできた。


「油を摂り過ぎだ! 若いうちは良い! だが未来を考えるんだ!」


「そうだな」


「そうかもな」


 適当に返事をしながら席へ向かうが、当然のように周囲の学生も無視していた。


 誰も気にしない。視線すら向けない。食堂のおばちゃんたちも慣れたものである。


「今日も元気だねぇ」


「ありがとうございます!」


 正宗が元気よく返事をする。おばちゃんたちは笑顔だった。どうやら顔馴染みらしい。


「なぁ、何で誰も反応しないんだ?」


 俺が小声で聞くと、ハジメが苦笑した。


「正宗みたいなの、この大学結構いるから」


「は?」


「こいつの同好会だけで100人超えてるぞ」


「多すぎるだろ」


「しかも同好会だからな」


 意味が分からない。100人超えているなら部活でも、おかしくないはずだが?


「上に本物があるんだよ」


「本物?」


「肉体美研究部」


 頭が痛くなった。


「いやいやいや」


「ガチ勢の集まりらしい」


 聞きたくない。本気で聞きたくない。


「正宗も誘われてるんだけどな」


「入ればいいじゃん」


「まだ資格不足なんだと」


 十分すぎるだろう……あれ以上何を求めるのか。


「肉体美を追求するには足りないらしい」


「怖いわ」


 思わず本音が漏れた……100人単位の正宗……想像しただけで恐ろしい。


「だがな」


 ハジメがニヤリと笑う。


「一部の女子には、人気が結構ある」


「マジで?」


「マジだ」


 確かに正宗は暑苦しい。筋肉馬鹿だから、会話の8割が筋肉だ。


 だが肉体だけなら普通に格好いいし、背も高いし、顔も悪くない。運動神経も良いし、性格も明るい。


 俺から見れば、筋肉以外は優良物件だった。


「同好会にマネージャー希望の女子が結構いるらしいぞ」


「世の中分からんな」


「KIRIN児卒業一番乗り候補だ」


「やめろ」


 本気でやめてほしい……俺たち3人は、KIRIN児である。その中で最初に卒業されると妙な敗北感がある。


「諸君!」


 正宗が割り込んできた。


「タンパク質が不足しているぞ!」


「いただきます」


「いただきます」


 無視して食べ始める。2人ともカツで豚肉を食べているのに足りないって、筋トレもしてないし、体を大きくしたいわけでもないから、十分すぎる程なんだが?


「聞いているのかね!」


 聞く気はない……カツカレーは美味かった。ハジメのカツ丼も美味そうだった。


 正宗は隣で栄養バランスについて熱弁していたが、内容は一切頭に入ってこなかった。本当にこんなのが100人単位でいるとか恐ろしい。


 大学は広い……色々な人間がいるものだ。




 午後の講義も終わり、俺はバイト先の喫茶店へ向かった。


「こんにちは」


「お待ちしてました」


 マスターが笑顔で迎えてくれる。


 着替えを済ませると、早速コーヒーの練習が始まった。今日も常連客が集まっている。


「頑張れ若人」


「失敗しても飲むぞ」


「ありがたいです」


 俺は苦笑しながら準備を始めた。


 豆を量り、挽く。お湯を準備する。


 手順は覚えているが、問題はそこから先だ。


 マスターが隣で同じ作業をしている。


 同じ豆。同じ器具。同じ時間。同じ手順。


 だが完成品は違う。


「不思議ですね」


「豆は毎回違いますから」


 マスターが答える。


「湿度も温度も状態も違う。だから毎回調整が必要なんです」


「難しいなぁ」


 飲み比べると、やはり差が分かる。


 香り……口当たり……余韻……全部少しずつ違う。


「トレースだけでは駄目ですか」


「料理も同じですよ」


 その言葉に納得した。確かにレシピ通りでも同じ味にはならない。食材の状態は毎回違うのだから。


 その後も練習を続けていると、常連の1人が手を挙げた。


「フレア君」


「はい?」


「裏メニュー」


 嫌な予感しかしない。


「今日は何ですか」


「甘い物」


「雑!」


 店内に笑いが広がる。


 結局、冷蔵庫の材料を確認し、果物を使ったホットサンド風デザートを作ることになった。


 表メニューには存在しない、完全な即興料理だ。


「ほい」


 出来上がった物を出すと、常連たちが食べる。


 数秒後……


「美味い」


「これ好き」


「商品化しない?」


 好評だった。


「料理は本当に上手ですね」


「ありがとうございます」


 マスターが苦笑する。


「悔しいですが、その辺は私の料理より、好みが合うみたいですね」


 店の料理は飲み物に合わせて調整されている。だから味付けも計算されている。


 一方で俺の料理は完全に好み優先だ。常連たちはそれを面白がっていた。


「無茶振り担当だな」


「やめてください」


 笑いながら答える。


 そんな時間はあっという間だった……気付けば閉店時間、片付けを終え、店を後にする。




 帰宅後は夕食、そして風呂の後に、エニシングへログインした。


 ログイン直後にハジメの配信通知が表示されているのを確認し、せっかくだから見てみることにした。


 コメントはしない、ただ眺めるだけだ。


『ファーストまたやらかしたw』


『草』


『その装備で行くなw』


 視聴者に弄られていた。完全におもちゃである。


「人気者だなぁ」


 他人事のように眺めていると、配信が終了した。


 そして数秒後、通知が鳴る。


【ホームに来い】


 短い。


「はいはい」


 ハジメのホームへ移動すると、ハジメが待っていた。


「ほれ」


 いきなりナイフを投げてきたので、慌てて受け取った。


【解体ナイフ】


 表示が出る。そのまんまだな……


「これか、ありがたい」


「壊すなよ」


 これで解体問題は解決しそうだった。


「じゃあ狩り行くかな」


「おう、行ってこい」


 そう言って移動しようとした瞬間、


「待った、配信は?」


「え?」


「だから、配信は?」


 大事なことなので2回言ったらしい。


「別にいいかなって」


「良くねぇ!」


 即答だった。


「活動日記なんだろ? 冒険者みたいな行動は、毎回配信しろ!」


 力強かった……結局押し切られ、俺は苦笑しながら狩場へ向かった。


 草原へ到着し、メニューを開く。


 配信設定を入力する。


 全年齢対象。

 タイトル。

【初心者フレアの活動日記3日目 戦闘+初スキル編】

 配信内容。

【タイトルのまま。ANYTHING初心者のフレアの活動日記。基本的には雑談中心のノンビリ配信となります】


「これでいいか」


 配信開始ボタンを押すと、視界端に配信開始の表示が現れた。


 さて……今日はどんな1日になるのだろうか?


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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