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ANYTHING《エニシング》 ~何でもありなオンラインゲームを始めた青年のゲームと現実を描いた物語~  作者: AN@RCHY


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11/28

010話

アクセスありがとうございます。

 ダイブ特有の浮遊感が収まり、視界が安定する。


「うっぷ……やっぱりダイブするのに慣れないな……」


 胃の辺りが少しふわふわする。慣れた人は何ともないらしいが、完全に順応するには時間がかかりそうである。とりあえず時間を確認する。


「えっと、お風呂の時間が2時間後だから……1時間くらいは配信できるかな?」


 メニューを開いて配信設定を確認する。


全年齢対象。

タイトル。

【初心者フレアの活動日記2日目 初めての戦闘編】

配信内容。

【タイトルのまま。ANYTHING初心者のフレアの活動日記。基本的には雑談中心のノンビリ配信となります】


「よし、問題なし」


 配信開始を押す。意味はないのだが、何となくストレッチをする。肩を回し、首を回し、軽く屈伸。


 昨日ハジメから『準備段階から流した方がネタになる』と言われたので実践してみているのだが、本当に需要があるのだろうか。


 自分ではよく分からない。


「まぁ、やるか」


 配信開始の表示が出たので、俺は軽く咳払いした。


「みなさん、フレアです。よろしくお願いします。今日もタイトルのまま、初めての戦闘をしていこうと思います」


 早速コメントが流れ始めた。


『乙w まだ2日目だからか、かたいなw【ゼノン】』


『おつ。配信始まったのに、準備体操してて何かと思ったよw【シェリー】』


『初見ヨロ~ 本当に初心者なの?』


「おぉ、ゼノンさん、シェリーさん、昨日から引き続き視聴ありがとうございます。初見さん、初めまして。趣味でキャンプなんかをこの世界で楽しんでいましたが、幼馴染に誘われて一昨日あったトーナメントを見て、戦闘もしてみようかなと思いまして、どうせなら活動日記として配信しています」


『へ~キャンプが趣味なんだ。それも配信するの?【シェリー】』


『最近は戦闘しないで趣味を楽しんでる人も多いな【ゼノン】』


『戦闘は初心者ってことね』


「ん~、配信するかは分からないな。でもお気に入りの道具とかは紹介してみたい。リアルでカフェのマスターにコーヒーの淹れ方を教わったから、山頂とかで淹れて雰囲気を届けるのは面白そうだと思う」


 そこでふと気付く。


「……あれ?」


 沈黙。


「戦闘しようと思ったけど、武器持ってないわ」


 一瞬コメント欄が静止し、次の瞬間。


『わろすwwww【ゼノン】』


『お前wwww』


『本当に初心者で草』


『お金はあるの?【シェリー】』


「初心者装備っていくらくらいするんですか?」


『1000ゼニーあれば武器防具揃うぞ【ゼノン】』


『最低限だけどね【シェリー】』


「それなら問題なさそうだな」


 街のガイド機能を開く。便利なことに武器屋まで案内してくれるらしい。


「まずは武器を選ぶところからお楽しみください」


『通販番組かw』


『雑で草』


 コメントを見ながら武器屋へ向かう。到着した武器屋は、まさにファンタジー作品に出てくる武器屋そのものだった。


「おぉ~、アニメや漫画で見たやつだ」


 1階が防具、2階が武器……まずは武器を見に行く。


 展示された武器の数は圧巻だった。


 剣・槍・斧・大剣・弓・鞭……他にも見たことがない武器が大量に並んでいる。


 試しに手を伸ばす……すると武器は持ち上がらず、警告が表示された。


【商品です。続けると衛兵が来ます】


「うわっ!?」


『俺もやったwww【ゼノン】』


『懐かしいwww』


 普通にビビった。そして薙刀コーナーへ移動する。


『え? 薙刀?』


『マジで?』


『珍しいな』


 やはりマイナー武器らしい。長さ違いで数種類並んでいた。店主に相談すると試し振りできるとのことだったので、一番長い物と中くらいの物を試させてもらう。


 何度か振ってみる。


「ん~」


 長い方がしっくり来る。


「長い方が使いやすいかな」


『長い方が扱い難しいだろ』


『現実で何かやってた?』


「いや、特には」


 少し考える。


「あえて言うなら、床掃除するモップかな?」


 一瞬の沈黙。


『なぜそれを挙げたwwww【ゼノン】』


『私も使ってるわw【シェリー】』


『俺の会社のモップの方が長い』


『比較対象おかしくて草』


 面倒なので流す。


「次は防具だな」


『流したぞwwww』


『なかったことにしたw』


 防具は革鎧にした。金属鎧は格好いいが、どうにも動き難そうだった。


「何となく冒険者っぽいな」


『いや冒険者だろww』


『昨日ギルド登録しただろw』


「そうだった」


 完全に忘れていた……気を取り直して街の東門へ向かう。途中でコメント欄から狩場情報をもらう。初心者向けは東の草原らしい。


 街を出ると視界が一気に開けた……広大な草原、遠くまで続く地平線。


「おぉ~」


 思わず声が出る。


「日本じゃ見られない景色だな」


『北海道』


『試された大地』


『道民いて草』


『私は青森から見た【シェリー】』


「青森は修学旅行で北海道行くの?」


『行った』


『羨ましい』


「俺は中学で善光寺、高校で沖縄だったな」


 そんな雑談をしながら進んでいると、警戒エリアへ入ると、周囲の空気が少し変わる。


 そして――


「第一魔物発見!」


『そのネタ古くね?【ゼノン】』


『半世紀近くの前のネタは、懐かしすぎるw』


 現れたのはファングボア……牙の生えた猪だ。


 しかし……


「何で牙が前向いてるんだ?」


 普通は上か下だろう? どう見ても親知らずが前に伸びたみたいになっている。


『俺も思った【ファースト】』


「お、ファースト来たのか」


『今来たw【ファースト】』


 初戦闘だ、薙刀を構える……ファングボアが前脚で地面を掻いた。突進の予備動作だ。


 俺は下段に薙刀を置く。牽制のつもりだった。


 だが、ファングボアは無視して突っ込んできた。


「マジか!」


 刃に当たりながらも止まらない。


 慌てて横へ避ける。初心者モンスターらしく速度は遅いから、余裕で回避できた。


『リアルなら効くけどゲームだからな【ファースト】』


『上位モンスターになると変わるぞ【ゼノン】』


 なるほど……考え方を切り替える。


 ここは現実ではない、ゲームだ。


 次の突進……今度は余裕を持って回避する。


 そして首筋へ薙刀を突き込んだ。


 クリティカルのエフェクトが発生し、HPが全損する。


 ファングボアはその場に倒れた。


「おぉ、倒せた」


 しかし死体が残っている。


「あれ? そういえば解体だっけ?」


『そうだぞ【ファースト】』


『経験値も入る』


 初心者セットから解体ナイフを取り出して、固まる。


「……どうやるんだ?」


 誰も教えてくれなかった。


『リアルと同じ【ゼノン】』


「知らんがな!」


『解体師って職業あるくらいだし【ファースト】』


 無理である……ナイフをそっと仕舞う。


「見なかったことにしよう」


『逃げたwww』


「現実で猪解体したことある人の方が少ないだろw」


『正論』


 次のモンスターを探して歩き出す。すると少し先にスライムを発見した。


「おっ、あれなら簡単そう」


 近付き、石突きで突く。


 ぷるん……弾かれた!?


「え?」


 もう一度突くと……ぷるん。


「え?」


『打撃耐性www【ファースト】』


『斬れ斬れw』


「先に言えよ!」


 慌てて刃の方を突き出す……すると今度はあっさり倒れた。


『完全初心者観察配信で草』


『見てて新鮮』


『保護者目線になる』


「保護者って何だよ」


 そう言い返しながらも少し笑う。気付けば視聴者数は昨日より増えていた。大半の人が、2窓以上でいくつかの放送を見ているだろうが、嬉しいかぎりだ。


 戦闘はまだまだ下手だし、知識も足りない。それでも、初めての戦闘は思った以上に楽しかった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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