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ANYTHING《エニシング》 ~何でもありなオンラインゲームを始めた青年のゲームと現実を描いた物語~  作者: AN@RCHY


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009話

アクセスありがとうございます。

▽▼▽


「ふぅ……」


 ベッドから起き上がり、大きく伸びをする。時間を確認すると、まだ余裕があるな……予定表を開いてみれば、風呂の順番は母親の後だったのだが、すでに入浴完了通知が表示されていた。


「なら、すぐ入れるな」


 着替えを持って浴室へ向かう。風呂へ浸かりながら、自然と今日の出来事を思い返していた。


 人生初配信は、視聴者3人……そしてアニメや小説好きなら知っている、軍人みたいな教官。


「何だったんだ、あれ……」


 思い出しただけで笑えてくる。湯船へ浸かりながらマルチギアで動画を開く。


 検索したのは薙刀だ。ゲーム内で選んだ武器だからという単純な理由だった。


「へぇ……結構かっこいいな」


 実戦演武、武道大会、創作作品の戦闘シーン……様々な動画が表示される。


 薙刀は女性が扱う武器というイメージが強かったが、映像で見ると迫力が凄い。


 長い間合い、鋭い斬撃、槍のような突き、思っていたより遥かに攻撃的な武器だった。アニメの戦闘映像では、薙刀を振り回しながら敵を薙ぎ払っているキャラクターもいたし、変幻自在に攻撃する


「こういうの出来たら面白そうだな」


 ゲームなら不可能ではないかもしれない。


 そんなことを考えながら動画を見続けている内に、気付けばかなりの時間が経っていた。




 翌朝。


 いつものように目を覚まし、身支度を整える。そして部屋の扉を開けた瞬間だった。


「フレア、おはよう」


 姉ちゃんが待ち伏せしていた。


「うおっ!?」


「昨日の配信見たわよ」


「何で!?」


「ファースト君が教えてくれた」


 余計なことを! 即座に方向転換する。


「待ちなさい」


「嫌だ」


 そのまま階段へ向かうと、今度は下から穂乃果が現れた。


「お兄ちゃん、おはよう」


「おはよう」


 妹もニヤニヤしていた。


「お前もか!」


 妹の頭を軽く小突いてから食卓へ避難する。朝食を食べながらも2人から散々いじられたが、なんとか被害を最小限に抑えることに成功した。




 駅前でハジメと合流する。


「よう! おはようさん。昨日は面白かったぜ!」


 言い終わる前に軽く拳を入れる。


「いったぁ! なにすんだよ!」


「ゲームの中じゃ殴れなかったからな」


「理不尽!」


「よく分からん状態で配信始めたのに、あの言い方はねえだろ」


「何言ってんだよ。緊張してたからほぐしてやったんだろうが」


 本人は善意らしいが、余計なお世話だった……そんな話をしながら駅へ向かう。


 朝の通勤通学の時間帯、とはいえ昔の映像で見た満員電車ほどではない。ある程度混んではいるが、全員が余裕を持って立てる程度のスペースは確保されている。


 利用者数に応じて自動的に車両が増発されるため、極端な混雑は発生しない。


「昔の人って大変だったんだな」


「何が?」


「通勤ラッシュ」


「あー、あれな」


 ハジメも昔の映像を見たことがあるらしい。


「俺なら毎日キレてる自信ある」


「同感だ」


 そんなことを話していると途中駅で正宗が乗ってきた。


「やあ諸君!」


「暑苦しい」


「朝から元気だな」


「筋肉は世界を救うからね!」


 救わない……2人同時にそう思った。




 大学へ向かう途中。


「おはよう」


 聞き慣れた声がしたので、振り向けば綾乃さんがいた。


「「おはようございます! 今日も綺麗ですね!」」


「姉ちゃんもいたんだ」


 綾乃さんが苦笑する。


「ハジメ、帰ったら覚えておきなさい」


「何でだよ」


「フレア君とマサ君はこんなに素直なのに」


「外面がいいだけだぞ」


「失礼だな」


 いつものやり取りだ。


 綾乃さんの隣には友人らしき女性が2人いる。どちらも美人だった。


 類は友を呼ぶというやつだろうか? そんなことを考えていると、正宗が時間を確認した。


「まずいぞ。移動しないと遅れる」


 今日の必須科目の授業棟は遠い。


「「失礼します!」」「行ってくる」


 3人揃って頭を下げ、その場を後にする。後ろ髪を引かれる思いだったが、教授に怒られる方が嫌だった。




 講義は3限で終了、ハジメたちと別れた俺は、そのままバイト先へ向かう。


 駅から少しだけ離れた喫茶店で、高校2年生の頃から働いている場所だ。


「マスター、おはようございます」


「おお、フレア君。待ってましたよ」


 マスターが笑顔で迎えてくれた。


「今日は約束通り、コーヒーの練習をしようか」


 その言葉に自然と背筋が伸びた。ついに許可が出たのだ。


 着替えを済ませ、カウンターへ入る、今日付き合ってくれる常連客は4人。


 皆顔見知りだ。


「緊張してるね」


「そりゃしますよ」


「大丈夫。失敗して覚えるものです」


 マスターの言葉に頷き、準備を始める。フィルターをセット、豆を量る、お湯を沸かす。


 一つひとつ確認しながら進めていく。


 蒸らし、抽出、湯の落とし方、注ぐ位置、集中していると周囲の音が消えていく。


 ようやく淹え終えた頃には、軽く汗をかいていた。


「どうでしょう」


 マスターがコーヒーを飲む……そして少し考えた後、苦笑した。


「普通なら合格ですが……うちの店ではまだですね」


 やっぱりか……自分でも分かっていけど、飲み比べると違いがはっきり分かる。


 香り、口当たり、後味……どれをとってもマスターの方が上だ。マスターの真似をして、同じように入れたのにここまでの差が出る……何でなのか分からない。


「難しいなぁ……」


「だから面白いんですよ」


 マスターは楽しそうだった。


 その後も何杯も淹れる、常連客たちも付き合ってくれた。1杯1杯は、エスプレッソより少ない量だが、それでも何杯も付き合ってくれて感謝だ。


「十分美味しいぞ」


「自信持ちなさい」


「伸びしろがあるってことだ」


 励まされながら練習を続けた……途中からは気分転換に軽食も作った。


 果物を使ったホットクレープを、常連たちの好みに合わせてトッピングを変える。


 こちらは好評だった。


「料理も上手いね。コーヒーも美味しいけど、そこは経験も必要だから、マスターみたいにはいかないわよ」


「ありがとうございます」


 少しだけ自信が戻る。気付けば閉店時間になっていた。




 家へ帰ると、いつものように賑やかな夕食が待っていた。


 姉ちゃんに配信ネタでいじられたり、穂乃果にそれを笑われ、オカンに可愛い可愛いと言われ、オトンが疲れた顔でフォローする。


 食事を終え、自室へ戻る。


「さて……」


 時計を見ると、まだ時間はある。


 マルチギアを手に取り、エニシングの情報を開く。昨日はチュートリアルだけだった。


 今日は違う、初心者卒業……少なくとも教官からはそう言われた。


「モンスター討伐でも行ってみるか」


 配信もしてみたいし、薙刀も試したい。


 やりたいことは山ほどある、自然と笑みが浮かんだ。


「よし」


 再びダイブ装置へ横になり、意識が沈んでいく。


 次はどんな景色が見られるのだろうか……そんな期待を胸に、俺は再びエニシングの世界へ向かった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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