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ダンジョンは壊れた夜に舞い降りる――壊れたのは、世界か、私か  作者: くろのわーる


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第30話:熱砂



 砂煙と熱気が荒野を包む中、足元は乾いたひび割れで不安定。


 フィンを履いたまま動く私の体は重く、酸素ボンベの重みが肩を圧迫する。


「……機動戦は無理ね」


 紗夜の言葉で覚悟を決める。


 私は弓を握り直し、防御姿勢を取る。


 敵の乾いた外殻を持つホラーが、砂煙の向こうでうねるように突進してくる。


 まるで蛇に人間の腕だけを取り付けた出で立ち。


 急所が狙い辛い。


「よし、任せろ!」


 黒崎が私の横に来て、酸素ボンベを取り外す。


 熱風と砂煙の中、瞬時の動作でボンベを敵中

 に投げ入れる。


 彼の狙いがわかった。


「……紗夜、狙って!」


 私が声を張る。


 紗夜は刀をしまうと、素早く肩に掛けていた銃を構える。


 ホラーが突進してきた瞬間、


 パーンッ!!


 紗夜の銃弾が酸素ボンベを撃ち抜き、爆風が砂煙を巻き上げる。


 衝撃で地面が揺れ、砂が渦を巻く。


 私は襲いくる砂から腕で視界を守る。


 顔に当たる砂が痛く、目を瞑りそうになるが、弓を構えなおして踏みとどまる。


「くっ……効いた!」


 砂煙の中でホラーの動きが鈍る。


 外殻にヒビが入り、呻き声を上げる。


「こいつら!振動に弱いわ!」


 紗夜は自身の酸素ボンベを取り外す。


「なるほどな!」


 黒崎が砂煙を突き抜けるように銃を構え、追加攻撃。


 銃声が乾いた荒野に響き渡り、敵の足取りをさらに止める。


 私は酸素ボンベの爆発で生じた混乱を盾に、フィンを外す。


 だが視線は狙いを定め、次の攻撃に集中する。


「……これで、少しは動ける」


 私は荒野の熱気に息を整えながら、次の攻撃のタイミングを計る。


 砂煙の向こうで紗夜と黒崎が連携して敵を追い詰め、戦場のテンポは加速度的に緊迫していく。


 荒野の戦いはまだ序盤。


 だが、酸素ボンベの爆発と銃撃で生まれたわずかな優位をもとに、三人は次の手を打つ――


 砂煙の渦の向こうで、ホラーの外殻に入ったヒビが光る。


 衝撃と爆風で一瞬怯んだかに見えたが、次の瞬間――

 地面を蹴るように跳ね上がり、砂塵を撒き散らしながら反撃してきた。


「……まだ終わらせない!」


 私は弓を構えて狙いを定めるが、乾いた砂に足を取られ、わずかにバランスを崩す。


 熱気で呼吸は荒く、体力が徐々に奪われていく。


 黒崎が素早く距離を詰める。


 砂煙の中を跳び、ホラーの突進ルートに立ちはだかる。


「――こっちだ!」


 持ち前の反射神経で敵の注意を引きつけ、動きを制限する。


 紗夜は冷静に銃を構え、砂煙の揺らぎを読みながら確実に当てていく。


「そこっ!」


 ホラーの人のような腕が砂に突っ込み、私の方向へ急旋回してくる。


「くっ……!」


 私は構えを解き、横に転がるように飛んだ。


 砂煙と熱風で視界が揺れる中、呼吸を整え、再び弓を構える。


 次の一手――矢を放つ。


 ヒュッッッ!!


 弓の矢がヒビに突き刺さり、そのまま硬い外殻を貫く。


 ホラーが呻き、動きが一瞬止まる。


 その瞬間、黒崎が飛び込む。


 砂煙の中でしっぽを掴むと、ぐるぐると回してホラーを投げ飛ばす。


「ここは俺に任せろ!」


 踏ん張る私と紗夜の背後で敵を押さえ、砂煙を切り裂くように動き続ける。


 紗夜も銃撃を続ける。


 弾丸が乾いた外殻を削り、ホラーの動きをさらに鈍らせる。


「……もう一回!」


 私は砂煙の切れ間を狙って次の矢を放つ。


 黒崎はホラーを押さえ、紗夜は銃撃で隙をつく。


 三人の呼吸が一体となり、荒野の戦場は絶妙な緊張感で張り詰めていく。


 ホラーは長大な体を揺らし、砂煙の中で再び突進を試みる。


 だが、三人の連携はもはや息の合った盾と刃、弾丸となり、攻撃を逐一受け流す。


「……これなら、いける!」


 私は次の矢を装填して、弓を構え直す。


 黒崎と紗夜も次の動きを読み、荒野の中で三角形を作るようにホラー達を挟み込む。


 その中心には紗夜が取り外した酸素ボンベ。


「離れて!!」


 その声に黒崎は離脱し、私は身を低くする。


 タンっ!


 乾いた銃声は酸素ボンベを撃ち抜いた。


 再びの衝撃。


 ホラー達は陸に打ち上げられた魚のようにピクピクと波打つ。


 戦いはまだ終わらない――

 だが、防御と即時反撃の連携で、敵を少しずつ追い詰められることを、三人は肌で感じていた。


 荒野の戦場は、熱気に包まれたまま、次の瞬間の行動を待っている――


 最初の襲撃を乗り越えて、一息つく。


 暑さが予想外に体力を奪っていた。


 携帯してきた水を三人で分け合う。


「凪、短刀を貸して」


 腰に差している短刀を紗夜に差し出す。


 紗夜はその短刀でウェットスーツを切り出した。


「えっ!?」


「おいおい、暑さで頭でもやられたか?」


「黙ってて……」


 私たちの困惑とは別に紗夜は切り続けるが……。


「上手く切れないわね、ちょっとあんたは向こう向いてて」


 黒崎はしぶしぶ、反対側を向いて警戒にあたる。


「凪、後ろ側を切って」


 そこで紗夜の意図がわかった。


 私は紗夜の指示に従い、ウェットスーツを切り出した。


 彼女のウェットスーツはノースリーブでお腹は丸出しな状態。


 残りは身体にフィットしていて、妙に艶がある。


「あんたのも切ってあげるからこっちに来なさい」


 完成した私の姿はチューブトップだった。


 なんで?


「向こうで戦闘が始まったな」


 警戒にあたってた黒崎が声を掛けてくる。


 暗視・熱感知ゴーグル越しでは正確には見えていないだろうが羞恥心が掻き立てられる。


「今回は大人しくこの場で防御に徹するのが無難だろう」


「それしかないわね」


 紗夜の悔しさとも憂鬱とも、取れる声音が砂に吸い込まれていった。



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