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7 満たされるヤンデレ心

  でもそれよりシアルト様の噂が気になる。あの慎重なタイプのお兄様が言うくらいだし、そう言われているのは本当なんだろう。


 ーーでも、もし本当にシアルト様が他の人に冷たいのなら、むしろそれってご褒美…



 わたしは自分の部屋に戻ると、早速メイドを呼んだ。


「ねぇ、ジャンはもう戻っているかしら?」

「はい、お嬢様。昨夜戻ったそうです。お呼びしますか?」

「ええ、お願い」


 メイドが出ていってすぐ、扉をノックする音がした。


「ジャンね、入って」


 すると、白髪に青い目の青年が音もなく、ソファに座っていたわたしの真横に現れる。


「お嬢様、お呼びですか」

「ええ、あなたにお願いがあるの。今、忙しい?」

「…いいえ。私は公爵様よりお嬢様の命令を常に優先するようにと言われておりますので」


 ーージャンと呼ばれた彼は、私つきの諜者なのである。その実力はシャールトン家の折り紙つき。密偵であれ護衛であれ、なんでも頼むことができる。


「そう。ねぇ、ここからは他言無用よ。もちろん、お父様とお兄様にもね。わかった?」


 彼は一瞬明らかに目を細めた。これから何を命令されるのかわかったもんじゃないからだろう。


少しの間の後、渋々頷く。


「…承りました」


 ーーだって、お父様やお兄様に知られたら、困るもの。


「調べてほしい人がいるの。名前はシアルト・ウィルフォード。あなたも知ってるわよね。彼に関する噂から彼の普段の生活まで、調べられることは全て調べてわたしに報告してちょうだい」

「……それはつまり、尾行も含まれる、と?」

「もちろんよ」

「…」


 無言のままの彼に、わたしは片眉を上げた。


「なに?もしかして、できないって言うの?」

「…いえ。ですがシアルト・ウィルフォードといえば、帝国最強の魔力の持ち主だとか。おそらく、いくら微細にしたとしても魔力を特定されてしまうかと」


 ジャンの言葉に、少し考える。わたしは顎に手を当てた格好のまま、……ほくそ笑んだ。


「そうね、それなら…バレても別に構わないわ。わたしに彼の情報を持ってこれさえすればいいの」

「…」

「それでもし捕まったら、わたしの名前を出せばいいわ」

「…御意」


 そう言って、ジャンはバルコニーから出ていった。

 ……なんだか普段の彼らしくない感じがする。いつもなら、返答に間なんておかずにすぐ了承してくれるのに、変なの。


 ーーまあ、いいわ。これで噂の真相も、普段のシアルト様の様子も全部わかるもの。


 ああ、本当に夢みたい。好きな人の情報を全て知れるなんて!公爵令嬢でよかった!公爵家万歳!


 そうしてその日わたしは、どんどん満たされていくヤンデレ心にすっかり満足しながら、ルンルンで1日を過ごしたのだった。

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