↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

18.魔王との対決


ロンドの指示で、怪我人はハッサンが付き添い、白エルフの転移魔法で街に戻す事になった。

まだ意識の戻らないジハードも。


ユーリとジハードと出会ってから、彼がそばに居ないのは初めてだった。彼が居ないだけで、とてつもなく心細い。足が震えそうだ。


黒猫姿で駆け寄ってきたマモンが、素早く肩まで上がると、小さな舌で頬を舐めてくれた。


ニャアッ!シャーッ!


ひょいと摘まんだマモンの体を、ポイッと放り出し、トーマスはユーリの肩を抱いた。あの魔物はユーリに馴れ馴れしすぎる。あの時、他の魔物と共に消滅していれば良かったのに。


「大丈夫。ユーリ、今度は僕が君を守るから。」


そうだ。ジハードには負けない。ユーリの心は自分が掴んでみせる。

数年ユーリと離れていた間に、ユーリは蝶が羽化するように綺麗になった。そして、彼女を慕う男達も……。

しかし、最初に彼女に出会ったのは、自分だ。

彼女の横は自分のものだ。誰にも譲れない。


「ありがとう。トーマス。」



ロンドの出発の合図を受け、ユーリ達は、ダンジョンの出口に向かった。

ダンジョンを抜けた先にあったのは、禍々しい王城。

魔王の城だった。




集結した仲間に城の外の魔物を任せ、ユーリ達は、城の中へと踏み込んだ。

トーマスのあの魔を滅する力は、魔力が満ちている状態で、一度しか使えない。

それでも強い魔力を持つトーマスと、黒豹に姿を変えたマモンに守られながら、ユーリ達は、城の奥へと攻め進んだ。


広間を制圧し、魔王の座す謁見の間もあと少し。

最後の決戦を前に、傷を治し、水分をとって、休憩する。

既に出てくる魔物も居なくなった。残るは魔王のみ。

それでも、何故か勝てる気がしない。

言い伝えでは、ユーリが魔を祓うと言うが、それ程の力はユーリには無い。


水を受け取り、腰を下ろす際に、ポケットに違和感があった。ポケットを探ると、あのモンスターハウスで拾ったものが出てきた。

魔物の血で汚れているそれを服で拭って綺麗にする。


「これ、は……。」


魔王の心の欠片。システムの声は確かにそう言っていた。

しかし、この欠片の中に見えるものは……。


「それは何?」


ユーリの両側からトーマスとマモンが覗き込む。


「陶器の欠片?」

「なんで割れた皿の欠片なんか持ってるの?お姉さん。」


彼らには白い陶器の欠片にしか見えないようだ。では、これを見ているのは、見えるのは、ユーリだけ?


出発の合図を受け、立ち上がり、ユーリはポケットに欠片をしまった。

これを使うのは今じゃない。多分、最終決戦のその場所。ユーリには、その使う場所を欠片が教えてくれる気がした。




ロンドの手で開けられた謁見の間は、まるで異次元のようだった。

正面には人ならぬ姿の魔王。

そして、辺りは、すぐ近くにいる相手しか見えない真の闇。トーマスとマモンが左右でユーリを守っている事だけが、わかる。


「よく来た。アミュダットの王女。」

「サキュガイアの王。いえ、魔王。この地に生きるものを守る為、お前を倒しに来たわ。」

「弱き者が。」


靄のような魔王の姿が揺らぐ。笑っているつもりだろう。

その指先と思われるものが動くと、青い光が襲ってきた。

辛うじてトーマスの魔法で、攻撃を退けたが、その威力にユーリの体が震えた。

今までの魔物とは格が違う。


隣でトーマスが詠唱を始めた。


「ほお、その詠唱、今でも唱える事ができるものがいるとは思わなかった。しかし、無駄な事だ。」


詠唱を終え、光がトーマスから放たれる。

しかし、謁見の間の闇は、消えなかった。


「まさか。」

「無駄と言っただろう。」


魔王の楽しそうな声が部屋の中に響く。


ドクン!


ユーリのポケットの中の欠片が光を受けて、大きく脈打った。

ユーリ以外には陶器の欠片にしか見えなかったが、ユーリにはこの欠片の中に、心臓が見えていた。

今、その心臓が鼓動しているのだ。


ユーリは欠片を床に置くと、短剣を取り出して、そこに見える心臓に思いっきり突き刺した。




「お前……なぜ、それを。」

魔王は胸を掻きむしりながら、苦しげな声をあげる。

部屋の闇が消え、王座には醜悪な表情を見せる初老の男が居た。


ロンドが駆け寄り首を撥ね、トーマスの火魔法がその体を焼き尽くした。

ゴトリと、焼け焦げたものが玉座から滑り落ちた。



「終わった?」

「終わったのか?」

「倒した……倒したぞ!」


口々に歓声をあげる仲間の声が聞こえる。部屋の中には大勢の仲間がいた。

全員の歓声の中、ユーリは、ヨシッと拳を握り締めた。



凱旋し、街に戻ったユーリをジハードが出迎えてくれた。彼に駆け寄り、首に縋り付き、ユーリは大声で泣いた。嬉しさと安堵が湧き上がり、言葉にならなかった。


泣き疲れたユーリを休ませ、トーマスとジハードは久しぶりの再会を祝い、杯を傾けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。