15.仲間はペット?
教会の裏の小屋の下に、地下にのびるスロープがあった。
ジハードを先頭に、2番目がユーリ、その後ろに、仲間内でも強い者達が5人並んでそのスロープを降りていった。
脇道もなく、一本道だ。薄暗いので、ライトの魔法で、道を照らす。
「先が見えませんね。」
護衛の誰がボソリと呟いた。
「退屈でしょう?」
耳障りの悪い声。全員身構える。ライトの届く範囲の向こうから聞こえた声の主は、あっという間に光の中に姿を表した。
女性の上半身と、虫の下半身を持つ魔物だ!
「遊んであげようね。」
魔物が口から、蜘蛛を吐き出す。すかさず建て直したこちらも火魔法で反撃した。
虫の下半身は想像以上に動きが速い。次々吐き出される蜘蛛も火で焼き尽くせず、一部は剣で薙ぎ払う。
「援護しろ。」
「わかった。」
ジハードに言われるまま、彼の前を塞ぐ蜘蛛を火と風の魔法で左右に飛ばす。その開いた道をジハードが駆け、大きく跳躍した。剣をまっすぐ下に構え、頭のてっぺんから剣の鍔まで突き刺した。
足で蹴って剣を抜き、地上に戻る。魔物の体が揺らりと揺れて、ズズンと倒れた。死体から出てくる蜘蛛ごと火魔法で焼き尽くす。
「こんな化け物がいたのか。」
「戻ってこない仲間は、こいつに食われたんだな。」
護衛の5人は焼けた死体を見ながら、口々に話している。まるで、これで終わったかのようだ。
待って!これで一体?あと19体?
来た道を戻ろうとする護衛達。戻るか、進むか。こちらにはジハードがいる。狭い場所だったから、あの蜘蛛も対処できたが、広い場所では、どうなった事か。
「あ、あの。」
「どうした。ユーリ。」
「あれで終わりとは思えなくて。まだまだいるんじゃないかと思う。」
「あんなのが、まだいると?」
「う、うん。」
ジハードが前を睨み、指示を出す。
「前に進むぞ。アロン、お前は戻ってロンドに報告を。もしもの場合に備えて、手配をするように。」
アロンと呼ばれた男が、頭を下げて駆け戻っていく。
途中、何も出なかったが、道の広がった場所に来ると、ライトの魔法が打ち消され、闇の中に光る目が見えた。
この暗さでは不利だ。
ユーリは頭の中にその光景を思い描き、
「スポットライト!」
と叫んだ。描いた光景は、壁にそって並ぶ100基のライトが光るさま。一斉にライトが眩しい程に光る。
広がった先には、予想通り、19体の魔物が控えていた。
「行くぞ!」
ジハードの大剣が唸り声をあげる。
戦闘に入ると、ゆっくりと想像する事ができない。魔法を操り、剣を振るう。数で負けてはいるが、ジハードの強さは別格だ。
敵が集まっているところに、イメージしたオリハルコンの網を投げ、絡まったところで、とどめを刺す。
敵が倒れると、網は跡形もなく消えた。
それを何度か繰り返す間に、敵の数は残り2体となった。
ただ、こちらも無傷ではない。戦いながら、ヒールも飛ばすが、全てカバーはできていない。ジハードですら、額と腕から、血を流している。
「凄いね君たち。想像以上だったよ。その丈夫な網、どういう仕掛けか教えて欲しいな。」
こんな場で妙に楽しそうな声がする。
猫耳をつけた少年?
「久しぶり、お姉さん。僕の事忘れちゃった?」
この喋り方は、妹に扮した暗殺者?
「お前は、あの時の。」
「あれ、覚えてくれてた?嬉しいな。」
もう一体の魔物がジリジリと間合いを詰めて来て、ジハードと睨み合った。
「ユーリ、そいつは任せた。俺はこちらを倒す。」
「わかった。」
ジハードと魔物から目を背け、猫耳の少年に集中する。こいつは見た目通りじゃない。
「お姉さんが僕の相手をするの?ククッ。ちょっと無理がないかなぁ。」
相手の手の内がわからない。でも、頭に浮かべるのは鳥籠。電気刺激付き。
飛び上がった少年の全身から、黒い手が無数に伸びて、ユーリと護衛に襲いかかる。彼を真ん中に入れるイメージで鳥籠を発現させた。
伸びた黒い手が鳥籠の網に触れ、少年の全身に電気が流れる。
ギャァァァァ!!!
悲鳴をあげる少年の全身が、眩いほど電気で光った。
背後で、ジハードが倒した魔物の断末魔の声と、倒れる重い音が響く。
静寂の中、スポットライトに照らし出されるのは、小さな鳥籠に入った黒猫だった。
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クエスト達成。
マモンが仲間になるよ。
*****
ユーリは鳥籠を抱え、仲間と道を戻る。どうやらこの黒猫はマモンと言うらしい。
スロープを上がった所には、ロンド率いる仲間が50人ほど待機していた。
彼らの姿を見ると、一様に安堵の息を漏らす。
「すぐに傷の手当を。」
傷の手当をし、井戸端で顔や手に着いた魔物の血を洗い流す。早く風呂に入りたい。
「ユーリ、その籠の中身はなんだ?」
「魔物です。」
周りの人間が、一斉に後ずさった。
見た目は黒猫だけど、実体は可愛くないですからね。




