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13.勇者の目覚め


「ありがとうございます。それでも、今度、私にドレスをプレゼントして下さい。」


これでいいかな?そして、嘘くさ笑顔をひとつ。


ユーリは、ロンドが考えている事に見当がついた。つまり、もっと目立てと言っているのだ。

敵が探さなくても見つかるほどに。


王女はここでーすって言いたいわけだ。餌として。

こんな話、ジハードの前ではできるわけが無い。


「心配しないで下さい。ちゃんとお守りしますよ。あなたが目を引いて下されば下さるほど、助かるのですから。相手方はあなたこそ闇を倒すものと思っているでしょうからね。」

「どうかしらね。」

「実際のところはどうなのですか?」

「分からないとしか言えないわ。今の私には、とても闇を倒す力はありません。」

「ふうん。そうですか。いっそ、私と結婚して、子供を産んでみますか?」

「どうしてそんな話になるの!」

「いや、あなたが無理なら、子供に期待しようかと思っただけですよ。私はこれでも結構、あなたが気に入っているのですよ。」

「とてもそうは思えないけど。」

「それは残念です。」

「もう帰るわ。ドレスは足元が邪魔にならないものでお願いします。」

「かしこまりました。」


ユーリは立ち上がり、建物を出た。今夜の宿は、既にジハードが手配してくれている。建物前にはジハードが居て、あからさまに安堵の息を吐いた。




次の日から、ユーリはドレスを身につけた。今日は、モスグリーンの膝丈ドレス。

ドレスに憧れがあったのに、こんなに連日着ていると、うんざりしてくる。男物の服が懐かしい。


この街は全体が彼らの拠点であり、連日のようにユーリを襲う暗殺者達は、街の至る所から現れる戦士達に捉えられて、あっという間に姿を消した。

そんな日々がしばらく続き、パタリと、暗殺者が来なくなった。


今日は近くの湖に孤児院の子供たちとピクニックに行く。当然護衛付きだ。孤児院の子供たちは、亡くなった戦士達の子供だった。



ピロリーン

*****


メインクエスト

湖のピクニック

子供達を守って力をつけよう


達成報酬:特別な力


*****


特別な力って何?今日、ピクニックに行くのは30人。ユーリ一人で守るには多すぎる。クエストはユーリに何をさせようとしているのだろう。




美味しく弁当を食べ、湖畔を散策する。いつの間にか子供が、集まってきて、気づけば、全員に取り巻かれていた。


そして、子供たちの目から、光が消えている。

ユーリは背中にヒヤリとしたものを感じた。


集団洗脳。


人の出入りをチェックしているこの街で、いつの間に洗脳が行われたのか。ジリジリと湖に追い込まれていくユーリ。


彼らの目的は分かった。湖にユーリを落とそうとしているのだ。しかし、ユーリには泳ぎの自信はある。落ちるぐらいでは死にはしない。護衛も子供たちに手出しができず、ユーリに近づけない。


ユーリは子供たちの手で落とされるのではなく、自ら落ちることを決めた。

ドレスがまとわりついて泳ぎにくい。水中で周りを見ると、槍を構えた水魔が8体!


2体倒して、空気を吸おうと水面に向かうが、足を掴まれ、阻まれた。このままでは、溺れてしまう。

泡みたいなものに包まれると良いのに。苦しい。


苦しさの中で思い描いたのは、全身を覆う空気の層。中からは攻撃可能で、外からの攻撃を防ぐもの。

意識を失いそうになりながら、ユーリはそんな想像をしていた。


子供たち、誰か洗脳を解いてくれるといいなぁ。ごめんね。私のせいで。


パンッ!


破裂音と共に、ユーリは泡に包まれた。それはさっき、彼女が思い描いた通りのもの。水の中を自由にうごける。

水魔を倒すと、ユーリは水上を目指した。泡ごと水上に浮かび上がる。

湖畔では護衛達が、子供たちを気絶させている所だった。ユーリはまた心に思い描く。子供たちが洗脳から救われ、また元通りに輝く瞳で笑顔を浮かべる事を。


ユーリの手から、光の欠片が零れ、子供たちを包んでいく。まだ気絶していない子供たちも、ゆっくりと倒れて行った。


*****


クエスト達成

勇者の力である創造の力を手に入れた。


*****


これで、誰が洗脳されても平気。良かったと思うのと同時に気を失った。

誰かの温かい手に抱かれている。

誰だろう?今日はジハードがいないのに。

でも、とても心地良い。




気づいたのは自分のベッドの上だった。まだはっきりしない視界に白い髪が見えたが、すぐに目を手で覆われて、見えなくなった。


「まだ眠って下さい。」


誰の声だろう。

ユーリは睡魔に負けて、コトリと眠ってしまった。


次に目が覚めたのは、ユーリの事を聞いて駆けつけたジハードの声を聞いた時だった。


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