12.暗殺者
ハッサンは、待ち合わせ場所に一人の少女を連れて来ていた。ユーリに似た赤い髪に青い目。
これは、あれだ。百合子がログオフする前のシーン。
久しぶりにここがゲーム世界である事を思い出した。
ピロリーン
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メインクエスト
生き別れの妹との再会
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さぁ、あの偽物をどうしよう。下手に近づくのは危ないし、ここは離れて正体を暴いた方が安全かな。
ユーリは、表面上、穏やかに笑みを浮かべた。ジハードは、その笑顔で、何か気づいたらしい。
「ユーリエお姉様!」
少女は、満面の笑みを浮かべて、駆け寄ろうとするが、ユーリは一歩下がり、ジハードがその前に立つ。
「お姉様、お忘れですか?」
「私には妹はいないわ。」
「ルクレツィアです。私もお姉様のように生き残りました。」
「もう一度言えばいいのかしら。私には妹はいません。」
「酷い。お姉様、やっと会えたのに。」
隣で立つハッサンが、困った顔をして、取りなそうとする。
「ハッサン、その女を捕まえて。でも油断したら駄目よ。武器を隠しているから。」
「え?」
ハッサンよりもジハードが先に動いた。女は素早く身をかわす。でも、遅い。
ユーリの風魔法で女を捉え、土魔法で体を固める。
「この女、妹じゃないのか?」
「違うわ。いつからここにいるの?」
「ひと月ぐらいだ。」
「ひと月も。」
つかまえた少女は、顔をあげると、ニッコリと笑った。いや、嗤った?
「お姉さん、妹の事忘れた?それとも、どうでもいい?違うか。死んだの知ってたんだ。」
ユーリは無言で少女を睨んだ。
「でも、似てるでしょ?抱きしめてみれば良かったのに。」
「それで、あなたに殺されろって?」
「ふふっ。いいねいいね。気に入ったよ、お姉さん。王様から貰って僕のものにしてあげようかな。」
パリーンと軽い音がして、拘束が壊れた。岩のような拘束なのに、まるで、ガラスのようだ。
「お姉さん、また会おうね。次、いつ会おうかと、ドキドキするよ。それまで、死なないでね。」
それだけ言うと、少女、いや、少年は空気に溶けるように姿を消した。
味方でも知らないユーリの正体を、敵に知られてしまった。
「なあ、嬢ちゃんは何者なんだ?ジハードは知ってるんだろう?」
「ああ、知ってる。」
3人の中に沈黙が落ちた。
「ジハード、ハッサンと、この戦いのリーダーに、私の事を話して。」
「いいのか?」
「うん。あいつは私に死ぬなって言った。それは私を殺しに来るって事でしょう?皆に迷惑をかけたくないの。だから、リーダーに相談したい。」
「よし、分かった。ハッサン、あいつもこの街にいるんだろう?会わせてくれ。」
サキュガイアに滅ばされた国は、現時点で5つ。内、3国は王家全員殺害された。残ったのは、アミュダットと、ルーレイア。そのルーレイアの王子が、この戦いのリーダーになっている、と言う情報を、ユーリはこの街に向かっている間にジハードから聞いた。
その王子、ロンドは第一王子で、他国に訪問していた為、生き残った。ユーリより、7歳上の24歳。若きリーダーだ。
ルーレイアは学問と芸術の国として栄えてきた。ロンド王子は、灰色の髪と目を持つ几帳面な文官タイブだが、古代魔法に通じ、優秀な軍師でもある。
「初めてお目にかかります。ロンド・アクトス・ルーレイアです。剣聖ジハード殿と、アミュダットのユーリエ王女ですね。」
「はい。初めてお目にかかります。私の事はご存知だったのですね。」
「私の耳には、色々な情報が入ってきます。そして、それが私の仕事でもあるのです。」
「それなら、ついさっきの出来事も既に耳に入っているか?ユーリに暗殺者が向けられた。」
ロンドは黙って頷いた。既に知っているようだ。
「最初に、王女と剣聖の希望をお聞きしましょう。」
「私は、戦う為にここに来ました。」
「俺はユーリを守る。ユーリの希望通りにする。」
「ふむ。剣聖は王女の護衛と考えればいいのでしょうか?それとも、個別の作戦にも参加頂けますか?」
「状況次第だ。ユーリが無事とわかる状況ならば、作戦に参加もしよう。」
「ありがたい。」
「しかし、私には今後、暗殺者が放たれるでしょう。他の人を巻き添えにはできません。」
ロンドの灰色の目に瞬間表情が浮かんで消えた。何を考えているのか、掴みにくい。
「そうですね。食事でもしながら、ゆっくり相談しましょう。ハッサン、剣聖に今後のスケジュールを説明して下さい。」
つまり、ユーリ一人でって事だ。
「剣聖、大丈夫ですよ。安全を保証しますから。」
どことなく胡散臭い。だから、ジハードが必要だったんだろう。彼には人を引き寄せる魅力がある。
ロンドと向き合って食事をしながら、ユーリは考えた。ここから先は全くの未知。このリーダーである男を信用してもいいのだろうか?
「どうしました?食が進みませんか?」
「いえ。」
「あぁ、あなたには、そんな装いではなく、ドレスが着せたいですね。さぞお美しいでしょう。」
ちょっと待った。このゲーム男性も選べるはず。確かに最初に選んだ。この男、男性主人公にもこれ言うの?
変態じゃん。
いやいや、それで言えば、トーマスもジハードもユーリには好意を抱いてくれている。それは男性でも?
それとも男性ならば、お友達?
この怪しいリーダーには、なんと返すのが正解なんだろう。
ユーリは困ったような笑顔を浮かべて、固まった。




