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12.暗殺者


ハッサンは、待ち合わせ場所に一人の少女を連れて来ていた。ユーリに似た赤い髪に青い目。


これは、あれだ。百合子がログオフする前のシーン。

久しぶりにここがゲーム世界である事を思い出した。


ピロリーン

******


メインクエスト

生き別れの妹との再会


******


さぁ、あの偽物をどうしよう。下手に近づくのは危ないし、ここは離れて正体を暴いた方が安全かな。


ユーリは、表面上、穏やかに笑みを浮かべた。ジハードは、その笑顔で、何か気づいたらしい。


「ユーリエお姉様!」


少女は、満面の笑みを浮かべて、駆け寄ろうとするが、ユーリは一歩下がり、ジハードがその前に立つ。


「お姉様、お忘れですか?」

「私には妹はいないわ。」

「ルクレツィアです。私もお姉様のように生き残りました。」

「もう一度言えばいいのかしら。私には妹はいません。」

「酷い。お姉様、やっと会えたのに。」


隣で立つハッサンが、困った顔をして、取りなそうとする。


「ハッサン、その女を捕まえて。でも油断したら駄目よ。武器を隠しているから。」

「え?」


ハッサンよりもジハードが先に動いた。女は素早く身をかわす。でも、遅い。


ユーリの風魔法で女を捉え、土魔法で体を固める。


「この女、妹じゃないのか?」

「違うわ。いつからここにいるの?」

「ひと月ぐらいだ。」

「ひと月も。」


つかまえた少女は、顔をあげると、ニッコリと笑った。いや、嗤った?


「お姉さん、妹の事忘れた?それとも、どうでもいい?違うか。死んだの知ってたんだ。」


ユーリは無言で少女を睨んだ。


「でも、似てるでしょ?抱きしめてみれば良かったのに。」

「それで、あなたに殺されろって?」

「ふふっ。いいねいいね。気に入ったよ、お姉さん。王様から貰って僕のものにしてあげようかな。」


パリーンと軽い音がして、拘束が壊れた。岩のような拘束なのに、まるで、ガラスのようだ。


「お姉さん、また会おうね。次、いつ会おうかと、ドキドキするよ。それまで、死なないでね。」


それだけ言うと、少女、いや、少年は空気に溶けるように姿を消した。



味方でも知らないユーリの正体を、敵に知られてしまった。


「なあ、嬢ちゃんは何者なんだ?ジハードは知ってるんだろう?」

「ああ、知ってる。」


3人の中に沈黙が落ちた。


「ジハード、ハッサンと、この戦いのリーダーに、私の事を話して。」

「いいのか?」

「うん。あいつは私に死ぬなって言った。それは私を殺しに来るって事でしょう?皆に迷惑をかけたくないの。だから、リーダーに相談したい。」

「よし、分かった。ハッサン、あいつもこの街にいるんだろう?会わせてくれ。」




サキュガイアに滅ばされた国は、現時点で5つ。内、3国は王家全員殺害された。残ったのは、アミュダットと、ルーレイア。そのルーレイアの王子が、この戦いのリーダーになっている、と言う情報を、ユーリはこの街に向かっている間にジハードから聞いた。


その王子、ロンドは第一王子で、他国に訪問していた為、生き残った。ユーリより、7歳上の24歳。若きリーダーだ。

ルーレイアは学問と芸術の国として栄えてきた。ロンド王子は、灰色の髪と目を持つ几帳面な文官タイブだが、古代魔法に通じ、優秀な軍師でもある。



「初めてお目にかかります。ロンド・アクトス・ルーレイアです。剣聖ジハード殿と、アミュダットのユーリエ王女ですね。」

「はい。初めてお目にかかります。私の事はご存知だったのですね。」

「私の耳には、色々な情報が入ってきます。そして、それが私の仕事でもあるのです。」

「それなら、ついさっきの出来事も既に耳に入っているか?ユーリに暗殺者が向けられた。」


ロンドは黙って頷いた。既に知っているようだ。


「最初に、王女と剣聖の希望をお聞きしましょう。」

「私は、戦う為にここに来ました。」

「俺はユーリを守る。ユーリの希望通りにする。」

「ふむ。剣聖は王女の護衛と考えればいいのでしょうか?それとも、個別の作戦にも参加頂けますか?」

「状況次第だ。ユーリが無事とわかる状況ならば、作戦に参加もしよう。」

「ありがたい。」


「しかし、私には今後、暗殺者が放たれるでしょう。他の人を巻き添えにはできません。」


ロンドの灰色の目に瞬間表情が浮かんで消えた。何を考えているのか、掴みにくい。


「そうですね。食事でもしながら、ゆっくり相談しましょう。ハッサン、剣聖に今後のスケジュールを説明して下さい。」


つまり、ユーリ一人でって事だ。


「剣聖、大丈夫ですよ。安全を保証しますから。」


どことなく胡散臭い。だから、ジハードが必要だったんだろう。彼には人を引き寄せる魅力がある。


ロンドと向き合って食事をしながら、ユーリは考えた。ここから先は全くの未知。このリーダーである男を信用してもいいのだろうか?


「どうしました?食が進みませんか?」

「いえ。」

「あぁ、あなたには、そんな装いではなく、ドレスが着せたいですね。さぞお美しいでしょう。」


ちょっと待った。このゲーム男性も選べるはず。確かに最初に選んだ。この男、男性主人公にもこれ言うの?

変態じゃん。


いやいや、それで言えば、トーマスもジハードもユーリには好意を抱いてくれている。それは男性でも?

それとも男性ならば、お友達?

この怪しいリーダーには、なんと返すのが正解なんだろう。

ユーリは困ったような笑顔を浮かべて、固まった。


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