くまと子供とマフィア達と
御読み頂き有難う御座います。
少し短いです。
「――んで、クロノ兄ちゃんに自信満々にでてきたから、すぐにかえるのもなさけないってことだよな?」
「まあ要約すればそういうことになるのだよ」
マッキーはロロに頼ることとなった経緯を話していた。
マッキーはクロノに別れを告げた後、探し人であるベールを捜索するために街へ飛び出した。まずベールが歩いていた通りを、と思いふわふわと宙に浮きながら彷徨っていたのだがそこで問題が発生することとなる。昼間に起きた騒動が広まり、見つかったマッキーは再び追いかけられることとなったのである。
マッキーは逃げた。水路を飛び越え、裏道を逃げ回り、気付いた時には裏町の一画に辿り着いていた。そこでロロのことを思いだしたマッキーは昼間聞いた少ない情報を頼りにロロの家を探し、何とか見つけたロロの家に煙突から突っ込んだのであった。
「マッキーばかだなー」
「君には言われたくないのだけどね」
あっけらかんとした様子で笑いながら言うロロにマッキーは鞄の中から首だけ出して溜息を吐く。
「それでロロちゃん。勢いよく飛び出してきたのはいいけどちゃんと考えはあるの?」
「おう!まかせとけ!まずはクロノ兄ちゃんにたのまれた仕事を先にすませて、そのあとマッキーの人探しを手伝うぜ!」
サムズアップをしながら答えたロロの様子にマッキーとイリオは不安を覚えるがロロはそんな事を気にする様子もない。
「まあ、まかせとけって!」
何処から湧いてくるのだろうか溢れ出んばかりの自信と共にロロは鼻歌を歌いながら裏町を進んでいく。
能天気なロロの様子にイリオは思い悩んでも仕方がないと息を吐き出してその後に続くのであった――。
――裏町の中ほど、つまりロロたちの住んでいる家の辺りは中立地帯として成り立っている。裏町のマフィアで決められた協定に基づきどのファミリーも手を出してはいけないことになっているのだ。この中立地帯の設立には煙草屋の老女、グレスタ・キャンベルトという女傑の存在が大きく関わっているのだがそれはまた別の話。
ロロたちはその中立地帯を北東へと抜け、カストール・ファミリーのシマまで来ていた。
「――だめだ」
「なんでだ!?」
ガーンという擬音が似合いそうな様子で聞き返したのはロロである。
ロロの前に立つのは真っ黒なスーツに身を包んだ栗毛の二人の青年。名をマルコとリカルドいった。マルコは元々カストール・ファミリーのシマでストリートチルドレンを纏め、ギャングの様な事を行っており、その手腕を認められてカストール・ファミリーの一員となった青年だ。リカルドはその右腕で同じくカストール・ファミリーに所属していた。
現在、ロロたちはカストール・ファミリーが本拠を置く屋敷の前に来ていた。マルコの後ろには厳つい門番が二人、マルコ達と同じく真っ黒なスーツを着込んで立っていた。
「馬鹿!カストールさんがお前みたいな子供を相手にするわけがないだろう。先に俺が見つけたからよかったようなものの門番に言ったら話も聞かず摘み出されてたぞ」
「えー、少しくらいいいじゃないか」
呆れた様子で溜息を吐くマルコにロロは口を尖らせて反論する。その後ろではイリオが頭を抱えていた。鞄の中ではマッキーが同じく頭を抱えているだろう。
ロロの作戦は至極簡単。カストールさんに会って頼んでみようだった。当然そんなことは叶うはずもなく、運よく通りかかった顔見知りのマルコがそれを止めたのだ。イリオとマッキーもまさか直接マフィアの本拠に乗り込もうとするなど考えても見なかった。
「カストールさんはいま闇オークションの手配で忙しいんだよ。それでなくてもブルーニ・ファミリーがおかしな動きをしてるってのに……。そのクロなんとかに言っとけ。ガキを使いに寄越すんじゃなくててめぇで来やがれ糞野郎ってな。ここは中立地帯じゃねぇんだ。いくらキャンベルトの婆さんのとこのガキでも事件に巻き込まれたらどうしようもねぇんだぞ」
マルコは乱暴な口調でロロたちに言う。そこでリカルドがロロたちに声を掛けた。
「ああ言ってるがホントのところマルコはお前らのことが心配なんだ。それにお前らになんかあったらキャンベルトの婆さんやバクストンのおっさんに申し訳が立たねえ。」
どうやらマルコはロロたちを寄越したクロノに怒っているようだ。マルコ達はもともとストリートチルドレンだ。同じような境遇の子供達の危うさは分かっている。
「という訳で今回は大人しく帰ってくんねぇか?」
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしてすいませんでした。ほら!ロロちゃん帰るよ!」
まだ何か言いたそうなロロに代わってイリオがリカルドの言葉に答え、何度も何度もお辞儀をしながら不満げなロロを引きずって、来た道を取って返す。
「まったくあのおてんばは!」
「まあ子供のすることだ。仕方ねぇよ、マルコ。悪い奴に騙されてねぇといいんだけどな」
イリオがロロを引きずり通りに消えていったのを確認してマルコは舌打ちをしながら言う。リカルドはそんなマルコの様子に苦笑しながら答えた。
「まあ『銀』もついてたみてぇだし、事件に巻き込まれることはねぇだろうが……。一応、婆さんとバクストンのおっさんに連絡入れとけ」
「世話焼きは変わんねぇな、マルコ」
「うるせーよ」
そんなやり取りをしながらマルコとリカルドは身を翻し、屋敷の中へと消えていく。
一方、ロロたちの方はというと――、
「――マルコにぃもケチだよな!少しくらい合わせてくれたっていいじゃんよ」
「僕はロロちゃんが直接カストールさんに会えると思っていたことにびっくりだよ」
不貞腐れるロロと心底疲れた様子のイリオがいた。鞄から首を出したマッキーも呆れ気味だ。
「……これからどうするのさ。ロロちゃん」
「うーん。いい考えが浮かばないからマッキーの人探しを先にしよう!」
それだけしか策がないのにあの自信だったのかとイリオは驚愕を隠せない。ロロの将来がこの上なく心配になるイリオである。
「まあ、そのうちなんかいい案が浮かぶさ!」
最早このポジティブさは賞賛に値するのではないか。ただ問題はその頭が残念であるということである。
ロロのところに来たことを後悔し始めているマッキーであるが他に頼るべき者もない。世の中は儘ならないもの。そんなフレーズがマッキーの頭に浮かんだ。
そもそもクロノやマッキーはロロが周りの大人に頼ってカストール・ファミリーに接触すると思っていた。つまりロロが自分で何とかしようとするのは埒外のことであった。心当たりがあるとはいったい何だったのか。
「おいおい!どうしたんだ?そんな暗い顔をして?そうと決まったらいくぞ!」
ロロの適当な答えに頭が痛くなってきたのかこめかみをぐりぐりとするイリオにロロが声を掛ける。イリオのその表情は仕事に疲れた中年のそれである。マッキーはそんなイリオに心の底から同情してイリオの手をポンポンと優しく叩くのだった。




