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暁に星を見るもの  作者: 春夏冬秋茄子
第二章 機械人形は水上都市で微笑む
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潜水士試験


 アルカヴィルシオ冒険者ギルド南支部は流石に首都の冒険者ギルドとあってミスタンなどの伝統的な冒険者ギルドのような造りではなく立派なものとなっていた。商人の街ということで見得などもあるのだろう。また水中迷宮の入り口となる尖塔を敷地内に含むため、その敷地だけでも普通のギルドの数倍は大きい。


 クロノ達が冒険者ギルドに来たのは資金稼ぎの為である。いくら資金に余裕があると言ってもクロノ達が参加するのは闇オークションである。もし本当にエクスカリバーが出品されているとすれば相当な額が動く。クロノ達が予想大きな金額となることも考えられた。その為の資金調達である。

幸いにしてクロノには『ワールドクロニクル』の知識がある。水中迷宮の稼ぎ方については熟知しているつもりだ。オークションが開催されるまでの三週間で相当な金額を稼げる自信がクロノにはあった。


 この南支部を選んだのにも訳がある。迷宮の入り口となる尖塔は東西南北に一つずつ存在するのだが入り口は迷宮の中で途中まで合流せず、攻略の仕方も違い、それぞれに特徴がある。


 まず港に近い東支部は初心者や気まぐれで冒険者を雇って迷宮に潜ろうとする貴族などの経験の浅いものたちが集まる。そこから降りる迷宮はある程度の弱い魔物しかおらず、それに比例して稼ぎも少ない。


 西支部は中級者向けだ。魔物は東支部よりも強いものが現れるがその分取れる素材は高価で神代の遺物なども発見される場合がある。


 北支部は基本スラム出身者やギャングの資金源となっており、よそ者が行くと手酷い目に合うのが普通であった。難易度としては西支部と同程度である。


 そしてこの南支部である。ここは上級者向けで魔物も強く、危険な罠も多数ある。また水没エリアやわざと部屋を水没させるような罠もある為、上級の魔法使いが同道していない場合は攻略は困難なものとなる。しかし上手くすればそれに見合った利益以上のものを得ることが出来、一攫千金も夢ではない、というのがこの支部の特徴である。

 短期間で多くの利益を得るにはこの南支部がいいと判断したのだ。



 「いらっしゃいませ。今日はどういったご用件でしょう」

 冒険者ギルドの大きな扉をくぐるとそこには受付があり、綺麗な女性のギルド職員が笑顔で迎えてくれた。ギルドの中は受付がいくつか並んでおり、依頼の掲示板などはない。部屋の両側に開け放たれた扉が一つずつあるだけだ。これはここで受付をして依頼などは別の部屋で受けるようになっているからだ。



 「『潜水士(ダイバー)』資格の取得に。試験は受けられますか?」

 「はい。大丈夫ですよ。研修は受けなくてもよろしいですか?」

 「構いません」

 『潜水士(ダイバー)』資格――今回クロノが冒険者ギルドに寄った理由だ。これが受付を二つに分けているのもこのためである。『潜水士(ダイバー)』資格はアルカヴィルシオの冒険者ギルドのみで特別に通用する資格で、水中探索に特化した冒険者に与えられる資格だ。資格の取得には試験が設けられており、誰もが取得出来るわけではない。


 この南支部では最低でもこの『潜水士(ダイバー)』資格を持つものが一人はパーティーにいないと迷宮内に入れないことになっている。その為この入り口の受付にて『潜水士(ダイバー)』資格を持っているか確認した後、奥にある依頼受注の受付で依頼を受けるという方式を取っているのだ。

なぜこんなめんどくさい方式を取っているかというと『潜水士(ダイバー)』がいるパーティーとそうでないパーティーでは帰還率が大幅に異なるからである。


 先程も言ったように南支部の尖塔から入ることの出来る迷宮は水没エリア、水没トラップなどの対策を持っていなければ全滅必死のエリアが多く存在する。その為、水中で活動できる魔法、水中での戦闘に特化した存在がなければ致死率が大きく上がってしまうのである。これを憂慮した冒険者ギルドは『潜水士(ダイバー)』資格を設けて最低でも一人はパーティーに『潜水士』を置くことを義務づけたのだ。


 ちなみに一階から『潜水士(ダイバー)』の加入が義務付けられているのは南支部だけである。これは他支部と難易度の違いがあるのと水中活動用の使い捨ての魔道具が存在するからだ。他の支部からのルートなら魔道具だけでも対応可能なのだがこの魔道具は時間制限があり、南支部のルートだと常時魔法をかけていないといけないエリアもあって魔道具のみでは対処不可能なのである。


 『潜水士(ダイバー)』は水中戦特化とあってアルカヴィルシオの冒険者ギルドにおいて花形の存在であり、南支部だけでなく他の支部でも頼りにされている。



 「畏まりました。では右の扉へお進みください。そちらに受付が御座いますのでそこで試験の登録をお願いします」

 そういうと受付嬢は右の扉を指し示す。クロノ達はそれに従って扉へと進む。今回試験を受けるのはアルレシャだ。というか水中活動用の魔法が使えるのはクロノとアルレシャの二人だけである。パーティーに一人でいいため今回はアルレシャに頼むことにした。



 クロノは奥の受付まで行き、登録を済ませる。試験は水中活動用の魔法の確認、水中機動試験、最後に水中戦の試験を行うらしい。どうやら付き添いの見学も出来るようだ。



 「それではお入りください」

 アルレシャは促されるままに部屋の中へ入っていく。先に水中魔法の確認と簡単な水中機動試験を行うらしい。水中戦はこの後に広い訓練場に移動して行われるそうだ。アルレシャならばここまではなんてことないであろう。実際そんなに時間もかからずアルレシャは部屋から出てきた。褒めて欲しそうな顔をアルレシャがしていたので頭をなでてやると嬉しそうにしていた。



 次は水中戦の試験である。

 水中戦の試験は特殊な訓練場で行われるということでクロノ達もそちらへと移動する。訓練場は南支部に隣接する建物で思っていたよりもかなり広く、観客席まである。訓練場といっているが月に一度冒険者などの娯楽試合などが行われたりもするらしく、まるで小さいコロシアムのようである。この訓練場は水中戦の時には魔法陣によって水が生成され、フィールドを作るというものらしい。

久々の『潜水士(ダイバー)』試験の受験者があるということでギルド内から人が何人か集まっており、観客席に座っている。クロノ達もアルレシャと別れ、同じように観客席に座った。




 訓練場の真ん中には女性が一人立っている。どうやらあれが試験官らしい。

 ピンク色の長いウェーブがかった髪に露出の高い服装、手には銛のような武器を持っている。そして何より目を引くのはアルレシャと同じように頭の両側でひらひらしているひれのような器官だ。どうやら試験官は人魚族らしい。周りにいる冒険者の話を聞くと元Aランクの冒険者で『特級潜水士』だという。冒険者を止めて後進の育成に当たっているというところだろうか。気さくな性格のようで声を掛ける冒険者達に向かってにこやかに手を振っていた。


 そうしているとギルド職員に案内されてアルレシャが訓練場へと入ってくる。アルレシャはいつもの踊り子スタイルで見ていた男の冒険者から応援の声を受けていた。アルレシャはルールの説明でも受けていたのであろう試験官と少し話をして大きく間合いを取る。案内をしてきたギルド職員が下がり、魔法陣が起動され青い光が訓練場を包んだ。


 透明なコップに水を注ぐように訓練場に立方体の形をした水のフィールドが展開されていく。試験官が水の中にすうっと浮かび上った。それに合わせてアルレシャも同じ高さまで浮上する。試験官の足は今まで人間のものだったのがいつの間にか輝く鱗を纏った魚のそれへと変わっていた。


 試験官がアルレシャに手を翳し、瞬時に編み上げた魔法を使う。竜巻のように渦巻く水流がアルレシャ目掛けて殺到する。こうして戦闘が始まった。




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