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暁に星を見るもの  作者: 春夏冬秋茄子
第二章 機械人形は水上都市で微笑む
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ルトナのお願い


 「世界の真実と矛盾を知りたければ学院都市に行け、か」

 クロノは自分の部屋に戻り、先程ライヤーに言われたことを思案していた。

学院都市といえば旧ファルシア王国のルーベンス魔法学院つまりは現在の『ルーベンス学院自治区』ということになる。ルーベンス魔法学院の図書館といえば大陸随一の蔵書量を誇る大図書館である。一般にも開放がされており、クロノも『ワールドクロニクル』時代に幾つかのクエストをこなす為に訪れたことがあった。


 しかし世界の真実と矛盾とは何のことなのだろうか。世界の真実というのは隠された歴史とかだろうか。創作物ではありがちな問題だし、実際にいろいろな思惑から封印された歴史なども存在するのだろう。


 もしくはこの世界のシステム的な何かか。クロノは流されるままに現状を受け入れているがこの世界は確かにおかしい。具体的に何がというと『ワールドクロニクル』というゲームの鏡映しであるという点だ。『ワールドクロニクル』のイベントがそのままこの世界の歴史となっているのである。この世界は『ワールドクロニクル』というゲームから何らかの理由で発生したのか、それとももともとこの世界があってそれを元に作られたのが『ワールドクロニクル』だったのか。


 通常なら後者を考えた方が分かりやすい。しかしそうすると納得いかないことがある。ダリアのことだ。ダリアが『ワールドクロニクル』で最強足り得たのは開発者の行動故だ。言ってしまえば予定になかった事態である。しかし『永遠の指輪リング・オブ・エターナル』により封印を解かれたダリアの力は明らかにその異常値を示していた。

 そうすると前者が残るわけだが魔物を倒した時に光の粒子になって消えることがないなどなぜゲームの部分をそのまま踏襲していないところがあるのかということが疑問となる。これがそのまま世界の真実と矛盾に当たるのかもしれない。


 だが矛盾といえば先日出会った『矛盾の黄昏(パラドクス)』である。ゲーム時代との差異とその理由を真実と矛盾と結びつけるのは簡単だが、クロノはこう都合よく現れた『矛盾の黄昏(パラドクス)』が気にかかっていた。これも『ワールドクロニクル』に存在しなかったものだ。その為『矛盾の黄昏』については一切情報がない。これから正直関わり合いにはなりたくないがハナエルを倒したことで目を付けられた可能性が高い。もし矛盾が指し示すのが彼らであったとするなら知っていて損のない情報である。



 しかし黄昏が近いとは……。これはクロノの中で確定している。『黄昏の聖戦(トワイライト)』だ。つまり大規模な超級レイドボスが出現する『黄昏の聖戦(トワイライト)』が近く現れるというのは見逃せない。超級レイドボスに今のクロノ達が勝てるかというと無理である。何せステータスが違い過ぎる上、『ワールドクロニクル』のようにカンストプレイヤー達も全くいない。となると数が絶対的に足りない。この世界の住人達、それこそ国の戦力投入して当たることも考えられるがこの世界の住人は一部を除いて弱い。カンストプレイヤー達に及ぶべくもないというのがここまで旅をしてきたクロノの感想だ。数十万人のプレイヤー達が相手にしていたボスをこの世界の軍隊で抑えられるかというと怪しい。たとえ抑えられたとしても被害は甚大だろう。世界的危機の到来だ。せっかくこの世界を楽しもうと思っていたのに水を差すとか勘弁して欲しい。



 だがよく考えてみるとこの世界が『ワールドクロニクル』の出来事に沿うなら五百年前にも『黄昏の扉』が出現していた可能性は大いにある。ダリアがその時期に暴れたという記録があるくらいだ。となると誰が『黄昏の扉』を閉じたのか。何処かの国か?魔王を倒したという英雄か?謎は深まるばかりである。



 まあ何にせよライヤーの戯言と考えてもおかしくはない。ただクロノの現状に合致していたため深く考えてしまったのだ。だが軽々と戯言と決めつけるのもよくないだろう。



 結論としては一度学院自治区に行ってみる必要があるということか。





 ――コンコン。


 部屋の扉がノックされる。クロノは考えるのを止めて腰を掛けていたベッドから立ち上がり、扉を開けた。

 ルトナだ。後ろにはアルレシャとマッキーもいる。最近マッキーはお気に入りなのかアルレシャの肩に乗っていることが多い。まあそのせいでさっちゃんとよく喧嘩をしているのだけれど……。


 「クロノ話があるの」

 「ああ、まあとりあえず入ってくれ」

 廊下で話をするのも何なのでクロノは三人を部屋の中へ招き入れた。ちなみにクロノとルトナ・アルレシャの部屋は別々である。クロノが一人部屋なのに対してルトナとアルレシャは同じ部屋だ。アルレシャは例によってクロノと同じ部屋にするつもりだったようだがルトナによって阻まれている。マッキーはいつの間にかあちらに居ついていた。

 クロノがソファーを薦めると二人はソファーに座った。マッキーはアルレシャの肩に乗ったままである。


 「クロノ、実はお願いがあるの」

 クロノが二人の向かいの椅子に腰かけたのを確認してルトナが話し出す。ルトナからお願いというのも珍しい。ルトナは基本自分でやれることは自分でやってしまうから旅の間も自分から何か主張することは少なかった。まだ遠慮があると言ってしまえばそうなのだろう。

 このクリムワース号に乗船するときもクロノに遠慮して自分の稼ぎで払うと言っていたほどだ。仲間だからということで何とか納得させたのは記憶に新しい。余談だがルトナは仲間という言葉に弱い。その境遇に起因しているのだろうが仲間というと猫耳としっぽまでだらしなくさせてでれっとしてしまう。その姿が何時ものきりっとした姿とのギャップで可愛らしいのだがそのことはとりあえず置いておこう。

 そのルトナがお願い事だという。なんだろうか。


 「実はアルカヴィルシオで闇オークションが開催されるらしいの。そこに目玉の一つとして魔剣が出品されるらしくて……」

 闇オークション――アルカヴィルシオは商人の国だけあって様々な扱っている。そのアルカヴィルシオで定期的に開かれているのが『オークション』だ。掘り出し物や貴族の秘蔵品などが出ることもあるとあって大陸各地から人が集まる。『オークション』自体は『ワールドクロニクル』の時にも存在していてクロノも何度か利用した覚えがある。通常ではなかなか手に入らない品やオークションでのみ入手可能なアイテムもあってアイテムコンプを狙っている蒐集家などには必須のイベントでもあった。

 しかし闇オークションというのは初耳だ。名前の響きからして表には出せないような非正規の品を取り扱っているのだろう。


 「その魔剣がエクスカリバーかもしれないと」

 「そうなの。マッキーが教えてくれてね」

 魔剣とは名の通り魔法術式の組み込まれた剣である。ファンタジーの魔剣のように必ずしも危険で邪悪な剣とは限らない。聖剣、神剣などもこの括りに入るからだ。まあ危険でないものもないではないが。

 しかしマッキーが何故そのことを知っているのだろうか?クロノはマッキーへと視線を移す。



 「私はクロノと出会う前は商人に捕まっていたのだよ。私のことを魔法の込められた人形だと売り捌くつもりでね。その商人が私を売ろうしていたのが闇オークションという訳さ。私はその前は貴族に捕まって愛玩用に飼われていてね。泥棒によって盗み出されて商人の手に渡ったものだから商人の方も正規のルートでは簡単には売れなかったのだよ」

 思いがけずマッキーの過去を聞いてしまった。しかしいろんなところで捕まってるな。



 「そういえば商人からはどうやって逃げ出したんだ?」

 クロノはふと気になって聞いてみた。


 「私は魔封じの首輪で魔法を封じられ箱に詰め込まれて運ばれていたのだけど何かの拍子に馬車から荷から落ちてしまったのだよ。そこで魔封じの首輪が運よく壊れてくれたおかげで私は逃げることが出来たのだよ。よくよく考えてみれば大変な慌てぶりだったから西の村での騒ぎから逃げ出した商人というのがそれではないかと思っているよ。まあそのおかげで内臓魔力が尽きかけていたところに君と遭遇できたわけではあるがね」

 マッキーがそう言いながらあざといポーズを取る。そう分かっても愛嬌があるのが質の悪いところである。

 しかしなるほどその商人が持っていた情報という訳か。



 「エクスカリバーかもしれないと思った理由は?」

 「人魔大戦期の魔剣らしいの。とある犯罪組織が手に入れて闇オークションに出品されることになったらしいわ。根拠は弱いけどもし可能性があるなら……」

 確認しておきたい、ということか。もしエクスカリバーであるにしてもそうでないにしてもオークションに参加するとなれば時間も取られるしお金もかかる。そう言った点でクロノ達に迷惑が掛かるからとルトナはお願いをしに来たという訳か。なんともルトナらしい。

 ルトナを見ると猫耳をペタンとさせて非常に申し訳なさそうな顔で上目遣いにこちらを見ていた。こんな可愛い少女を放っておくことが出来ようか、いや出来ない。



 「分かった。アルカヴィルシオに着いたらいろいろ調べてみよう。ルトナ遠慮しているみたいだから言っておくけどルトナはもう俺達の仲間だ。何かあったら迷わず言ってくれ。お金の心配もしなくていい。騎士の装備を調えるのも主の甲斐性だろ?」

 クロノは悪戯っぽくルトナに笑いかける。その言葉にルトナはしっぽをへにゃんとさせて照れる。表情を保とうとしているがパタパタと嬉しそうに動く猫耳のせいで丸わかりだ。




 「……ありがとう」

 ルトナのその言葉にクロノは何とも言えずほっこりした気持ちになるのだった。






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