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暁に星を見るもの  作者: 春夏冬秋茄子
第一章 獅子は騎士の夢をみる
28/90

思惑

御読み頂きありがとうございます。

第一章【獅子騎士編】はこれまでとなります。

次回から第二章【人形微笑編】を投稿したいと思います。




 クロノ達が街を出て一刻程後、西区の倉庫には縛り付けられたロイドやガイゼル、その部下の傭兵たちと

衛兵の恰好をした男達がいた。

 そこに一人の男が入ってくる。金髪に爽やかな笑顔、街で歩けば女性の注目を浴びることになるだろう整った容姿。誰あろうクロノ達を街から逃がした張本人、マグナスであった。



 「やあご苦労。上手くいったかい?」

 「はっ!マグナス枢機卿!」

 マグナスは気安げに衛兵の恰好をした男の一人に話しかける。


 「帰って来て早々任務を任してすまないね。オルタス神父」

 「とんでもございません。枢機卿の意思こそ我らが意思。神より与えられし使命なのですから。」

 姿勢を正しながら答えるオルタスにマグナスは薄く笑う。


 「その通りだ。教会の意思こそが神の意志。忘れることのないようにね。さてこの屑どもはどうしようか。おや?」

 そう言うとマグナスはロイドへと近づいていく。



 「僕にこんなことをしてどうなるか分かっているのか!」

 ロイドが喚く。マグナスはそんなロイドを無視して目を細め何かを観察しているようだ。



 「まだ成長はしていないけどどうやら『因子』持ちのようだね。」

 「『因子』持ちですか。どういたしましょう?」

 オルタスはマグナスとロイドを交互に見ながら言う。マグナスは少し思案してから言った。



 「いらないね。念入りに殺しておいてくれ。それと他のものも殺せ。情報が漏れないようにね。私は少し話をしてくるよ。」

 そう言うとマグナスは興味を失ったように踵を返して歩き始める。


 「待て!金ならいくらでも出すだから僕を――」

 その言葉が終わらぬ内にオルタスの持っていた剣がロイドの首を落とした。他の者たちも次々に槍を傭兵達へと突き立てその命を奪っていく。

 大量の血が地面を赤く染め、そこにはただ物言わぬ骸が残るのみとなった――。







 「――【精神接続(コネクト)】。」

 マグナスは倉庫から出ると首から下げていた魔法具を使う。


 景色が一瞬にして変わり、大きな円卓のある白い部屋にマグナスは立っていた。

 円卓には七人の老人が腰を掛けている。


 「そちらから我々を呼び出すとは珍しいではないか。マグナス枢機卿。」

 「また碌でもないことなのだろう。全く気が滅入るわ!」

 「まあまあ、まずは話を聞きましょう。」

 老人たちは口々にしゃべりだす。彼らは長老会と呼ばれる集団だった。聖教会における最高意思決定機関だ。聖教皇をトップとして六人の長老と呼ばれる者たちで構成される。



 「マグナス。用件は何だね?」

 円卓の奥に腰を掛けた老人がマグナスに声を掛ける。現聖教皇『アウグリオ五世』である。普段は優しく見えるであろう微笑みの中に今は老獪さと威厳を滲ませていた。

 マグナスは膝をつき、報告を始める。



 「はっ!昨日、ミスタンにて『ナイトウォーカー』に関係があると思われる吸血鬼の男を発見致しました。」

 「……静粛に。聖下の御前である。」

 長老達が一気に騒然となる。聖教皇であるアウグリオは静かに顔の前で手を組み、その隣に控えていた老人が他の長老達に注意を促す。立場の違いがあるらしく他の長老達は一様に黙り込んだ。



 「報告を続けさせて頂きます。その吸血鬼は日中に在っても平然とし、私が触って直接『聖属性』の魔力に触れさせましたがこちらも効果は得られませんでした。」

 「日の光が効かず、聖魔法にも耐性があると……『ナイトウォーカー』と同じですな。」

 マグナスの言葉に聖教皇の隣に座っていた老人が呟く。



 「はい。アルガス南方での『ナイトウォーカー』の出現情報と併せて鑑みるにおそらくその直系ではないかと。」

 「して、その吸血鬼はどうした?」

 「はい。見逃がしまして御座います。」

 マグナスのその言葉に長老の一人が立ち上がり机を叩いた。



 「見逃がしただと!?この大事な時期に何をやっておる!!奴の血族なれば被害が出ることは確実!これは背信行為だぞ!!」

 他の長老達も鼻息荒く怒りの形相でそれに続いた。



 「戦わずして逃げ出すなど何事か!」

 「異端審問部はこれだから!」

 「これは救世庁の責任ですぞ。どうなされるおつもりか!マスカーニ殿!」

 聖教皇の隣に座っていた老人――マスカーニ――に長老達の視線が集まる。



 「マグナス。ふざけていないで真意を話せ。」

 マスカーニは長老達の視線など気にした様子もなくマグナスに向かってそう言い放つ。

 マグナスは苦笑して話し始めた。



 「流石はマスカーニ殿。実は邪魔者を一気に片づけようと思っております。先程の特性を考えれば『ナイトウォーカー』との関係があるのは明白。だとすれば何処かで接触があってもおかしくない。故に我々は対象が『ナイトウォーカー』と接触した時にこれを一網打尽にするのです。対象には虫をつけ、既に監視下にあります。」

 マグナスは悪びれもせず飄々とした態度を崩さない。



 「……可能か?」

 「討ち取ることを目的としていますが少なくとも戦力を大幅に削ることは可能だと思っております。相手は聖教会が長年手を焼いてきた『ナイトウォーカー』です。またとない好機かと。一応助力のあても考えております。」

 短く問い返したマスカーニにマグナスは絵になるような爽やかな笑顔で答えた。

 場に沈黙が下りる。




 「……私は賛成です。『ナイトウォーカー』を場に引きずり出せるならやる価値はあるかと。」

 マスカーニが沈黙を破って聖教皇へと進言を行う。聖教皇は思案するように閉じていた目をゆっくり開いた。



 「……儂も賛成だ。以後対象を『デイウォーカー』と呼称し、マグナス枢機卿指揮下の異端審問部によって監視を行うものとする。」

 聖教皇の鶴の一声によって場は決した。マグナスはそれを聞いて冷たく笑う。


 「その任務確かに承りました。」

 マグナスが恭しく頭を下げる。



 「今回はこれにて解散とする。では皆来るべき時のため怠ること無きように。――我らが手に『黄昏』を」

 「――我らが手に『黄昏』を!」

 聖教皇が立ち上がりそう言うと同様に長老達が声を揃えそれを復唱する。




 誰もいなくなった後一人残ったマグナスは口元を歪めながら光の中へ消えていくのだった――。





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