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本日は祭りです。(後)

重たい女、ゴゴ。

 むう、途中ではぐれたライラが見つからないなぁ。肉眼では、という言葉がくっ付くけど。

 魔法を使うと瞬間に分かっちゃうから、僕としてはなるべく控えたい。

 まぁ、気分的には某絵本の人探しゲームのようなものだよ。ファンタジーの世界だしね。それに、当てもなくぶらつくのも楽しいのさ。

 僕は右往左往と、なるべくランダムに彷徨いながらも、結局一番盛り上がってる中央の大通りに戻ってしまうのであった。

 昼が過ぎ、食事を取り終えて落ち着いた皆を眺めると、道の真ん中が軽く規制されている。


((あ、そうか、もうすぐパレードじゃないか。どれどれ、ゴゴの晴れ姿でも見てやろうかな))


 ライラが居ないけど、今のあの子なら強く生きてられる。そう僕は信じてる。

 捜すのが面倒くさいとか、そういうのはご主人様としてあり得ないから。


 日陰でパレードが始まらないかぼんやり待っていると、十歳くらいの女の子が声を上げた。

 聞き覚えのある……というかメリエちゃんの声だった。


「あ!そろそろ始まるみたいだよ、お父さん!」

「おお、そうか。そういえば最近流行りの『黒鉄騎』様が王様の護衛に居るんだってミスダ……さんが言ってたぞ?」

「え、嘘!『黒鉄騎』様が!?やっばい、楽しみ~!……ああ、私を見て一目惚れなさったら玉の輿ね……」

「はは……そうだな……」


 ぎゃあ!君たち行商人なんでしょ!?なんでまた居んねん!

 幸運にも、奴さんがたは近くにいる僕に気付いていない様子。

 いや、数ヶ月前にニアミスした僕のことなんて憶えてないかもしれない。メリエちゃんは。

 一応、尻尾の先の金色を隠しておこう。なんだかんだ目立つしねコレ。


 ただの一般人の二人にドギマギしていると、横からまた聞き覚えのある声が脳内に響いた。


((あ~!もー、やっと見つけましたよご主人様!勝手にどこかに行かないで下さいよ~))


 え?悪いの僕なの?

 横目でチラリと走ってきたライラを見ると、腕の中は美味しそうな食べ物たちで埋まっている。

 どれもライラのセレクションなだけあって、見た目から珍しく、かつ美味しそうだ。


((あのねぇ、僕はか弱い猫なんだよ?あんな人混みの中にいたら、そりゃあはぐれるさ))

((私は幽青鬼(ミストオーガ)を一瞬で掻き消せる猫をか弱いとは決して言いませんよ……))

((フィジカルの話だよ。それより、そんなに食べ物を買って食べ切れるのかい?))

((ふぃじかる?ああ、えっと、これは……ご主人様と食べようかなーって思って、買って、振り返ると居なかったから余って……あ、でもでも見つけましたからね!私と一緒に食べましょ?))


 小首をかしげて、食べ物のうちの一つのお好み焼きみたいなのを差し出してきた。つぶらな瞳付き。

 ……ぬぅぅぅ!僕はペンギンなんぞには萌えないぞぉ!断じてだぁ!僕は負けない!

 と、心中で葛藤してからお好み焼きもどきを受け取り、はむはむしていると王宮の方面から管楽器の音が重なって聴こえてくる。

 周りの人々も道の真ん中を開けながらも道の方に寄って、にわかに騒ぎはじめる。


「お、メリエ。見えてきたぞ!王様と王子と……あの後ろに立っているのが『黒鉄騎』様だな」

「あ!そっか、王子様も居たんだった!二人ともに求婚されたらどうしよう……!」

「存在を忘れてたのによくそんなこと言えるな……」

「うるさいっ!」

「痛ぁ!」


 ……相変わらず仲良しな親子だなぁ。


 熱狂する国民に出迎えられたのは、ゆっくりと進む某ネズミの国のパレードのをゴージャスにしたような乗り物。

 その上にあるおしゃれな椅子に王様と王子様らしき人物が座って、そしてその後ろにゴゴが微動だにせずに立っていた。

 おおー。こうして見るとゴゴも中々凛々しいなぁ。かっこ良い。

 ……僕が人化出来たらそこに立っていたのは僕だもんね!


((ゴゴ~、ちゃんと見てるよ~!仕事頑張ってね~))

((……主、どこにおりますか))

((あれ?わかんない?ライラの傍なんだけど))

((ライラの姿も見えません。こう人が多いと魔力の探知も上手く出来ません))

((むむ、鍛錬が足りないね。えーと、青い屋根の建物の向かい側の、壁際に居るよ))

((幾つか青い屋根の建物があります。どれですか))

((一番大きいのだよ。ああ、もう、ここ!ここ!))


 見つけてくれないゴゴの為に、もぐもぐ食べているライラの頭の上に座ってみる。

 そうしてやっと、ゴゴは僕たちを見つけたようで首をこちらに向けてきた。

 僕は尻尾をふりふり、ライラも嬉しそうに手をふりふり。

 しかし、首を向けるというゴゴの小さな動きだけで、僕とライラの周りの婦女たちが多いに盛り上がる。勿論、メリエちゃんも。


『きゃあーーーーーー!!!』


「お、お父さん!ほら!ほら!私の方を見たじゃない!今のは私を見て美しいと思ったのよ!」

「メリエ……お前まだ13だろ?可愛いはともかく、美しいはなぁ……」

「うるさいっ!」

「痛ぁ!……って、あれ?」


 ……はっ!

 ばっちし、叩かれたモオゴさんと目が合ってしまった。

 ……大丈夫?バレてない?


「お前、まさかクロか?」

「え!?クロ!?」


 モオゴさんが尋ねるように呟くと、速攻でメリエが反応する。

 ぐぬぉくそぅおお!バレた!

 ……まぁバレても別にいいか。誤魔化せばいいし。見つかったから何かあるわけじゃないし。

 忘れてしまったかとも思ったが、猛烈な勢いでメリエちゃんがライラに詰め寄る。


「あのっ、獣人さん!その頭の上の猫を見せてもらっていいですか?」

「ふぇ?……えーと、この子ですか?」


 ゴゴを楽しそうに見ながら黙々と食べていた、ライラが冷静に聞いてきた。


((あのー、ご主人様、どうしますか?))

((まぁ、この子は前にお世話になったことがあってね。僕を渡してあげて))


 僕の念話を聞いたライラは頭から僕を下ろして、メリエちゃんに僕を渡す。


「はーい、どうぞ。ご主人様のペットだからあげることは出来ないからね」

「はい。…………むむ」


 僕を受け取ったメリエちゃんは商品を査定するように、僕の姿を隅から隅まで眺めてから、断言する。


「……やっぱり、クロだ!うわーん、久しぶり~!うへへ~逢えて嬉しいよ~!」

(……普通の女の子なら、その鑑定タイムは無いだろうに)


 嬉しそうにするメリエちゃんは僕の身体中に顔をなすりつけて本当に嬉しそう。一介の猫である僕は為されるがままに。

 僕がメリエちゃんに可愛がられてる間に、モオゴさんがライラにさりげなく質問する。


「済みません、この魔物はどこで?」

「ええと、そのー……ご主人様がこの子を拾いまして。それからもう、暫くは一緒に居ますね」

「……そうですか。ああいや、なに。以前ウチもこの子を拾いましてね、直ぐに逃げられてしまいましたけど」

「へぇ~、そんだったんですか」


 ライラが上手い具合にモオゴさんの対応をしていると、メリエちゃんが僕を愛でる動きを止める。


「……かいます」

『え?』

「獣人さん!私がお金を払いますので、この子を買います!!」

「いえ、私はただのご主人様の奴隷ですから……」

「じゃあそのご主人様とお話をつけます。案内してくれませんか!?」


 おやおや。

 メリエちゃんは随分僕にお熱だったようだね、あっはっは。

 それは兎も角、メリエちゃんが叫んだせいで野次馬が集まって、見世物のようになってしまっている。


 ライラがどうすれば良いかわからず、あわあわしているので、フォローの念話を送ろうとした時。

 ズドン、とライラとメリエちゃんの横に降りてきた黒い影。


「その必要は、無い」

『……え?』


 周りの人だけでなく、僕もポカンとしてしまった。

 何故か、魔力を放出するゴゴが腕を組んで上から現れたのだ。

 ……はい!?


((こ、こら!ゴゴ!何をしてるんだい!?護衛、護衛!))


 慌てて念話を送るものの、ゴゴからの返答はない。

 あまりの出来事に静寂とする一同。そして反対に王様と王子様の辺りは騒然としている。

 ゴゴは気にした様子もなく、淡々と話しはじめた。


「そこの少女」

「は、はひ!」

「この猫……カリィノは私のものだ。いくら金を積まれようが渡さん」

「……お、お言葉ですが、『黒鉄騎』様、クロは私が最初に飼っていました!私にも飼う権利があると、思います」

「だが逃げ出したのだろう?それに比べ、こうして仕事でもない限りカリィノは一日中私にベタベタしている」

((君はたった今その仕事を放棄したところだよ!))


 それに別段ベタベタしている訳じゃないよ!ゴゴはデフォルトで鎧姿だから、引っ付くと痛いし。


「で、でも……!クロは!」

「まぁまぁまぁまぁ、ゴゴ……様。今日一日は、この少女にカリィノを貸してあげては……」

「ライラは、黙っていろ」

「へ……?きゃあっ!?」


 うぉおい!

 あろうことか、仲介に入ったライラをゴゴがあらぬ方向へ片手で投げ飛ばしてしまった。

 あれくらいじゃあライラは死なないけど。


((こら~!ゴゴ。王族の護衛の仕事を放棄しちゃ駄目だよ。すぐに戻って!))

((……主は、私が嫌なのですか?この少女の元へ行きたいのですか?))

((はい?いや、僕が言いたいのはそうじゃなくて……もー!取り敢えず戻って!王様たち困っちゃう……))


 頑なに戻ろうとしないゴゴを宥めていると、王様たちが進んでいった方面から叫び声が響く。


「う、うわぁぁあああ!!」

「暗殺者たちだぁぁあ!!」

「王を、王子を!守れぇぇえ!!」


 な、なにぃ!なんて事だ!

 僕が気付かなかったってことは、素人さんではない。

 ゴゴが居なくなった途端にそんな事が起こってしまうなんて、ゴゴが疑われてしまうかも……!

 いや、そんなことより。


(これは流石に僕が出るしかないか?ふざけ無しで、急がなきゃ……!)


 と真剣に思ったら。


「うわぁぁぁぁああ!」

「なんだこの獣人ッ!つ、強過ぎる!……ぐはぁ!」

「ひっ!や、やめろぉぉおお!」


 あー。

 そういえば、そっちにライラが投げ飛ばされていたね。

 なら、良いか。


 そんで。


 後から聞いた話だけど、ライラはものの三秒ほどで暗殺者たちを無力化したらしい。

 まぁ、修行場の『神獣の森』は一分一秒が命取りだったからね。

 ゴゴは奴隷を向かわせたと解釈されて、お咎めなしだった。

 あと僕が飼えずにガッカリしていたメリエちゃんには、ゴゴ経由でゴゴの任務の道中に拾った魔物の卵をあげた。まぁ、せめてもの罪滅ぼしである。


 こうして、色々とゴタゴタがあったけど愉快だった祭りは無事に終わりましたとさ。

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