本日は祭りです。(中)
やれやれ、ギリギリ間に合ったようだね。セーフセーフ。
予想通り《空飛猫》のコントールが難しかったなぁ。魔法の選択が失敗だった。
少しだけ民家を削っちゃったけど、異世界だし魔法パワーでなんとかなるよね!いや反省してますごめんなさい!
「あ……?なんだコイツ、さっきまで居たか?」
「いや、居なかったはずだ。もしかしてあいつの召喚獣か?」
「……なんでもいい。切り殺せばいい話だ」
うわー、なんか血生臭いことを口走っているなぁ。ナイフをちらつかせて怖いなー。
どうしようかな~。
直接僕が倒してもいいんだけど、ここぞ!という場面で実力を明かしたいんだよねぇ、やっぱり。お姫様を助ける時とか。
うむうむ……ま、兎に角、後ろの少年は逃がそう。
この子を連れて《空飛猫》、はマズイから……ゆっくりとだけど空を飛べる《重力サーカス》にしようかな?
重力魔法を自在に操りながら浮かび、少年の襟首を咥えて飛んでいく。
「にゃおーん(暴れないでねー)」
「え?……う、浮かんでる!?」
「ちっ……!……ファイアアロー!!」
僕からすれば遅い火の矢は避けるまでもなく、明後日の方向に飛んでいった。
他にも何人かが魔法を撃ってくるが、どれもこれもヘボい。僕を中心とした人物たちが強過ぎるのも悪いのだけど。
へいへーい、ピッチャー共ビビってるぅー!と言ってやりたい。
でもストライクしちゃ駄目、絶対。効かないけど。
「わ、わ、わ!凄い、空を、浮いてる……まさか重力魔法……?」
(もしかして重力魔法って珍しいのかなぁ?というかこの子、綺麗な顔してるなぁ……っとぉ、僕はホモじゃない断じて!)
いやぁ、この甘い顔で成長すれば立派なマダムキラーだと思うなぁ。どうか健全に育ちますように。
「凄い……街が……」
さっきまで怪しげな男共に囲まれていたのに、街を一望して、感慨に浸っている。飛ぶっていうか浮かんでるって方が正しい気もするけど。
まぁ……一市民くらいなら、念話で話し掛けてもいいよね。
情報社会でもないし、一人くらい良いでしょ。最悪記憶を消せばいいだろうしね。
((あー、喜んでいるところ水を差して悪いね。僕は君はどこに降ろせばいいかな?))
「え……?あ、あなたが喋りかけて……?」
……そう!
僕なんだよ!
ただの猫じゃないんだ!
僕が、君に、話し掛けてる!
凄いだろぉ?驚いたろぉ?
ああ、気持ちぃーーーー!!
……あ、いや、失礼しました。
以前からしたかった「実はこのくらいの実力を持ってるんだよね(チラッチラッ)」ってする事が出来て内心興奮してしまった。
((こほん……うん、そうだよ。でも、この事は人に言い触らして欲しくないんだ。約束してくれる?))
「あ……はい!約束します!」
おお、素直な子で良かった。
これでもし「言い触らして欲しくなかったら最初から助けるなよ」とか身も蓋もないことを言われたらどうしようかと。
((で、最初の質問に戻るけど、どこに君を降ろせばいいかな?))
「えっと、そうですね……王宮の付近は大臣の陣営が居ますよね……あの、アマミウズという方はご存知ですか?」
ん?場所の質問をしたのに、なぜにそこでアマミウズさん?
((知ってるよ。有名な宮廷魔術師様だよね。その人がどうかしたのかな?))
「出来れば、その方がいらっしゃる所まで運んで欲しいのです」
いやいや……君ね。
いくら屈強な男共に追い詰められて怖かったからといって、仮にもこの国で一番の魔術師の所に連れていってって……どんなお坊ちゃんなんだい。もしかしてアマミウズさんのファンだったり?
あ、でも、男共に追い詰められていたってことは貴族の子息という線もあるのか。
うーん、だったら……良しとしようかな。アマミウズさんにはたっぷり迷惑がられて貰おう。
((わかったよ。……んー。ど、こ、か、なー……王宮からやや離れて、あ、ご飯食ってるね。偽装してるし))
あっちの都合は無視しよう。
むしろ、偽装している実力者ならこの少年を守るのには適してはいるかな。
《隠居生活》を使いながら、屋台で無邪気に麺を啜るただの少女に見えるアマミウズさんの元に降り立つ。
アマミウズさんは《隠居生活》を発動している僕たちには気付いていない。鈍感だねぇ。
周りの人の認識を誤解させる魔法《ご都合主義》で、あたかも最初から居たようにしてから《隠居生活》を解き、アマミウズに念話で話し掛ける。
((やぁやぁ、アマミウズさん。食事中にごめんね?))
「ぶッフォぁ!」
あどけない少女の姿のアマミウズさんが口から色々と噴き出す。汚いです。
しかしやはり史上最強の魔法使い(笑)である。ただ咽せただけのように装ってから、念話で返答してきた。
((……貴方は。まったく、私の幻惑魔法が当然のように見破られるなんてな。何か御用で?))
不機嫌を顔に表して、麺をもぐもぐしながら訪ねてくる。膨れっ面をするような年齢でもないでしょうに。
((やだなぁ、そんなに警戒しないでよ。この前の事は謝るよ。それと、さらに仮を作ってもいいかな?))
((……というと?))
カリィノ(僕)の美しい金色の尾先で後ろを指しながら、僕はのんびりと伝える。
((僕の後ろでキョロキョロしてる子が居るだろう?何処ぞのお坊ちゃんらしくてね。暴漢に襲われてたから保護したんだ。そしたら、君の元に届けて欲しいと言われたからね))
((ふむ、なるほ……ど。お坊ちゃん、ね。はぁ……分かりました。私に報酬は有るかい?))
疲れたように装ってさりげなく、がめつい事を聞いてきた。なんだとコノヤロー。国滅ぼすぞー。
とまぁ冗談はさておき。迷惑を掛けているのは自覚してるからね、別に構わないかな。
((うん。じゃあ前に聞きたがってた、ゴーレムの造り方を伝授してあげよう))
((ほ、本当か!?では、早速……))
念話の繋がりを利用して、僕のゴーレムのレシピの記憶をコピーペーストのようにアマミウズさんの記憶に貼り付けてあげる。
初めこそワクワクしたような表情のアマミウズさんだったけど、直ぐにそれは落胆の色に変わる。
((こんな、馬鹿みたいな量の魔力が必要なのか……?))
((ゴゴ並の強さのが欲しいならね。僕で一日掛かったから、君たち人間なら五十年も掛ければ完成するんじゃないかな?))
((……今からでも取り掛かるべきか……まぁ、報酬は報酬だ。依頼を受けよう。要人警護でいいのか?))
((そうだね。あ、仕事があるんだったら途中まででも構わないけど))
((私の職業は名誉職、もしくは自由な研究職のようなものだ。暇だから構わんよ))
((ならよかった。じゃ、僕は観光してる途中だったから。ばいば~い))
さぁて!案件も片付いたことだし、ライラでも捜しながらプラプラしようかな。
んー、厄介ごとに首を突っ込めて楽しかったけど、少し物足りなかったかなぁ。




