始まり
下駄箱の前で立ち尽くす僕。
その後ろでクスクス笑う人達。
僕の下駄箱に、たくさんの貼り紙が貼られていた。
『ボクは桐渓さんが大好きでーす。』
『きりたにさん大好き』
『I LOVE 桐渓さん』――。
「……畠中くん?」
呼ばれた方を向くと、桐渓さんが立っていた。
「うわっ!きき桐渓さん!?」
慌てて僕は下駄箱の貼り紙を隠す。
「どうしたの?つっ立って……」
「なななな何でもないよ!?あっ、き、今日もいい天気だn――」
そう言って空を見ると、バッチリ曇り空だった。
「……何か隠してるでしょ」
「いやいやいやいや!!隠してなんかいませんよ!?」
「ちょっとそこどいて」
「わっ」
桐渓さんに思い切り突き飛ばされ、尻もちをついてしまう。
「……」
桐渓さんは僕の下駄箱を見たまま、ピクリとも動かなかった。
「き、桐渓さん……、これは、つまり、その~……」
「何これ」
桐渓さんはそう呟いて、貼り紙をビリビリと破き始めた。
「ええっ!?ちょっ、桐渓さん!?」
「くっだらない。こんなことして何が楽しいのかしら」
ブツブツと言いながら紙を破り裂いた後、僕の上履きを僕に突き出してきた。
「ほら、早く履いて」
「え?」
「教室に行くのよ」
ノロマな僕を引っ張って、桐渓さんはズンズンと教室へ向かった。
そして、勢いよく教室のドアを開けた。
教室が一瞬静まり返った後、ドッと笑いが起きた。
「おお!仲良く登校ですかぁ!」
「ヒュー!朝からアツいね~お二人さん!」
僕達に罵声を浴びせる男子達に向かって、桐渓さんは歩き出した。
「――あんた達さぁ、こんなことして何が楽しい訳?」
教室が再び静まり返る。
「……は?」
「人の嫌がることをして、何が楽しいのって訊いてんの」
沈黙がしばらく続いた後、男子達が笑い出した。
「あっはは!居るよな~こういう『正義のヒーロー』って感じの奴」
「マジうぜぇ」
その瞬間、桐渓さんの体が飛んだ。
「っ!!」
「き、桐渓さん!?」
思わず桐渓さんに駆け寄る。
「プッ。何これ、何かの演劇ですかぁ?」
桐渓さんは頬を押さえながら、男子達を睨んでいる。
どうやら、頬を殴られたらしい。
――女子に対しても容赦無いのか、コイツらは……!
今日、この瞬間から、桐渓さんへのいじめは始まった。
そしてこの原因は、間違い無く僕だ……。




