4/10
無表情な彼女
「じゃあ、この問題を――桐渓、解いてみろ」
数学の時間。先生に指名された桐渓さんは、黒板の前に立って迷い無く問題を解いた。
「――よし、正解だ」
何も言わずに席に戻る桐渓さん。
クールなところも素敵だ。
「畠中~」
移動教室のとき、荷物を持って移動をしようとすると、男子達に呼び止められた。
「俺らトイレ行くからさ~、代わりに荷物持っていっておいてくれよ」
そう言われ、五人分の荷物を渡された。
が、持ちきれず落としてしまう。
「じゃあよろしくな~」
そう言って笑いながら男子達は逆方向へ歩いて行った。
僕が荷物を拾おうとしてると――
「手伝おうか?」
――桐渓さんが声をかけてくれた。
「えっ、で、でも……」
「いいから。一人じゃ持てないでしょ?」
相変わらずの無表情で桐渓さんは言った。
でも、すごく優しさが伝わってくる。
「半分持ってあげる」
荷物を拾い終わると、桐渓さんは男子達の荷物を持って言った。
「あ、ありがとう……」
そのまま、沈黙で移動教室へ向かった。
「……桐渓さんって、いつも無表情だよね……?」
沈黙に耐え切れず、適当な話題をふってみる。
「……悪い?」
桐渓さんは表情を少し険しくして言った。
「い、いや……、ごめん……」
気に障るようなことを訊いてしまったようで、桐渓さんはそれ以上何も言わなかった。
本当、僕ってダメだなぁ……。




