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生きる希望
「彼女が、転校してきた桐渓さんです」
ホームルームの時間。担任がそう言った。
僕の視線は、彼女に釘付けになっていた。
「桐渓さん、軽く自己紹介して?」
担任がそう言うと、彼女は若干斜め下を向いたまま口を開いた。
「――桐渓 藍蘭です。分からないことが多いですが、よろしくお願いします」
凛とした長髪の彼女――僕の記憶の中の彼女のままだった。
休み時間。僕は思い切って彼女に話しかけてみることにした。
「あ、あの……、桐渓さん」
僕の声を聞くと、桐渓さんは本を閉じて僕を見た。
「何?」
「あの……、僕のこと、覚えてる……?」
僕がそう言うと、桐渓さんは表情を変えずにキョトンとした。
「あ、ご、ごめんなさい……!僕、畠中 陸斗です。……覚えてませんか……?」
長く感じる沈黙。周りから聞こえるクスクスと笑う声。
「――ごめんなさい。覚えてないわ」
正直、この言葉はショックだった。
「そ、そうですよね~……」
でも、それでも良かった。
彼女が僕の目の前にいるだけで、僕はこれからも生きていける――。




