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PAINT IT BLACK  作者: ねずお あきとし
ブラック・ロータス編
7/9

阿修羅、前編

■ 2024年4月19日(金) 午後4時10分 清流高校


授業は終わったが、蓮の頭の中は一杯だった。咲奈の誕生日、東条の不在、阿修羅(あしゅら)との戦い――新生活にとって重要な日に、すべてが重なっていた。


同じクラスの女子が近づいてきた。


「あの……黒さん……これ、受け取ってください!」


女子はお辞儀をして、ラブレターを差し出した。しかし蓮は、自分がした失礼な行動にすら気づいていなかった。後ろで明智が女子に謝り、今日の蓮は精神的に余裕がないと説明した。


◇


蓮は手芸部に着いた。


「黒! ちょうどいいところに来た!」


「ああ……すまん、名前を聞いていいか?」


「ああ、名乗ってなかったな……俺は五十嵐和夫(いがらしかずお)、三年だ」


五十嵐和夫は三年生で、黒髪に、いつも鼻に絆創膏を貼っていた。どうやらおしゃれらしい。


「五十嵐先輩、黒蓮です……」


五十嵐は蓮のやる気のなさに気づいた。


「どうした? 体調でも悪いのか?」


「まさか、ビビったんじゃないだろうな、黒?」と地下基地から牟田の声がした。


「いや……さっさと終わらせよう……」


「その意気だ、黒。行くぞ」


戦闘チームは黒蓮、五十嵐和夫、そして篠崎フィン(しのざきフィン)の三人だった。


「待て、お前の名前はフィン?」


「ああ、母がスウェーデン人なんだ」


「で、いつ現れたんだ!? 全然気づかなかった!」


「それだけの実力ってことさ」


篠崎フィン、二年生。黒髪に白いメッシュ、濃い隈、そしてなぜか赤い瞳。


「なんで三人だけなんだ?」


「阿修羅のリーダーとそう決めたんだ。グループのメッセージ、読んでないのか?」


「グループがあるのか? 知らなかった……」


「まあ、話は終わりだ。行くぞ」


五十嵐は地下基地へ下りるように指示した。


「何をするんだ? 向こうが来るのを待つのか? それじゃ学校で目立つだろ?」


五十嵐はグループの合言葉の看板を外し、隠された扉を現した。


「これが東条部長の努力の結晶だ。俺たちの勝利への道だ」


五十嵐が扉を開けると、暗いトンネルが現れた。蓮が歩いていると、顔面に別の扉が当たった。


「なんだよ?」


「いい勘してるな、黒。二つ目の扉に着いたぞ」


五十嵐が先に進み、二つ目の扉を開けた。そこは下水道に繋がっていた。蓮は感心しながら――良い意味でも悪い意味でも――眺めた。


(だから誰にも怪しまれないのか!)


五十嵐が先に階段を上り、物音や振動がないのを確認してから蓋を持ち上げた。そっと開け、三人は外に出た。


「よし、この道を行けば二十分で着く」


「行くぞ、黒、五十嵐」


「ああ!」


◇


■ 午後4時40分 七北田公園付近


三人は疲れていたが、七北田公園の人混みに気づいた。通行人たちは、後ろを振り返りながら退散していく。


阿修羅の一人が誰かと口論しており、他のメンバーがそれを囲んでいた。


「俺が誰だと思ってるんだ!」


「小僧、俺は阿修羅の先鋒隊長・悪魔(あくま)だ! それが俺の通り名だ! もっと敬意を持て!」


「兄ちゃんが来たら、ケツを蹴り飛ばしてやる!」


暴力団の連中が笑った。三人はその場に近づいた。


「聞いたか、みんな? 俺を殴るってよ! ははは! 小僧、子供を殴るのは趣味じゃねえが、自分から望んだんだぞ」


「俺の名前は東条大翔、兄はブラックホープのリーダー、東条修吾だ! 手を出したら後悔するぞ!」


「東条修吾、ねえ? なら余計に……」


バシッ!


悪魔が大翔を殴った。三人はそれを見た。


「あれは東条先輩の弟だ!」


普段は陽気で人懐っこい五十嵐の目が、殺意に変わった。篠崎はその場から消えた。


ドッ!


篠崎が悪魔の背後に現れ、急所を蹴り上げた。阿修羅のメンバーは驚いた。


「クソ野郎……なんで子供に手を出すんだ!?」


別の阿修羅の声が聞こえた。


「お前がブラックホープの二番手か? リーダーはどうした?」と桂(かつら)が言った。


「桂、どういうことだ?」


「別に。小僧と遊んでただけだ……ブラックホープのリーダーの『隠された顔』が見たかったんだが、どうやらビビって弟を代わりに送ったようだな、なあ、みんな?」


メンバーが笑った。その時、蓮が足を踏み鳴らすと、地面が揺れた。


「東条部長は今日戦えない。だから代わりに、この俺、黒蓮が暫定リーダーを務める」


「暫定リーダー? ふざけてるのか? てめえは何者だ、小僧?」


力強い声が場を遮った。


「桂、焦るな……」


阿修羅のメンバーが道を開け、リーダー・源樹(みなもといつき)が現れた。ベンチに座り、ビールを飲んでいた。缶を捨て、立ち上がる。


「これが暫定リーダーか……強いな、小僧」


蓮はその賞賛にも、挑発にも、答えなかった。


「では東条の代わりに戦うのか……残念だ。奴の希望をへし折って終わらせたかったのに」


蓮は実家の方角を横目で見て、源樹を公園の奥へ誘った。


(咲奈、必ず間に合わせる。誓う)


パニックで誰も近づかないため、近くに通行人はいなかった。五十嵐は大翔を抱え、そばにいるように言った。篠崎も彼らのそばにいた。そして、公平に戦える広い場所に着いた。


「よし、東条との約束通り、三対三だ。各グループの精鋭三人でな」


対戦カードはこうだった:


篠崎 vs 悪魔


五十嵐 vs 桂


黒 vs 源樹


蓮はその期待を止めた。


「退屈だ……三対三?」


「何か文句でもあるのか? 上に泣きつけ。そういう約束だ」


蓮は全員を指さした。


「俺たち四人で、お前ら全員だ」


その四人目には、大翔も含まれていた。清流の戦力として、彼もまたこの場に立っていた。


阿修羅は大笑いした。


「ふざけてるのか? 俺たちに一秒も――」


ドッ!


蓮が悪魔の顔面を殴り、悪魔は地面でのたうち回った。


「黒、正気か!?」


「いや……来てる……鼓動が……速くなってる……」


蓮は学ランを脱ぎ、両腕を露わにした。


「何の話だ、黒?」


蓮が振り返ると、三人は――大翔も含めて――その変化に気づいた。ブラック・スパイラルが現れた。


「狩りの時間だ……」


「バカども! 突っ立ってないで、かかれ!」


暴力団全員が蓮に襲いかかった。しかし、次々と倒れていく。膝蹴り、拳、蹴り、頭突き。蓮は自分の体を武器のように使った。一人が顔を殴ったが、ブラック・スパイラルの狂気じみた笑みに怯み、右ストレートで倒れた。


蓮は二人の頭を掴み、地面に叩きつけた。背後から殴ろうとした一人は、顎へのアッパーを食らった。一撃一撃に、最大限の暴力が込められていた。


五十嵐と篠崎は、彼らを追うメンバーから大翔を守った。篠崎は飛び蹴りと残忍な打撃を放ち、五十嵐は動きは遅いものの、一撃で近づく者を倒した。大翔は感動しながら見ていた。


「兄ちゃんが、こんな連中のリーダーなのか? すげえ!」


阿修羅の一人がバットを取り出し、大翔の頭を殴ろうとした。三人を相手にしていた篠崎がそれに気づいた。


「くそ! 守れねえ!」


拘束されていた五十嵐が叫んだ。


「黒!!!!! 」


ドッ!


蓮が膝蹴りでバットの男を倒した。


「離れるな、小僧! お前には指一本触れさせねえ……」


(この人、昨日家にいた人だよな……?)


◇


数分後、阿修羅のメンバーは全員意識を失っていた。蓮は疲れ果て、アドレナリンの奔流も収まりつつあった。


「おめでとう、三人とも。ウォーミングアップは終わったな?」


清流の三人は疲れていたが、阿修羅の三人に屈するわけにはいかなかった。源樹、桂、悪魔は立っていた。


「さあ、本当の三対三だ、なあ、ボス?」と桂が言った。


「傷物の野郎、覚悟しろ!」と悪魔が言った。


「本当の戦いを始めよう」


蓮は汗を拭いながら、源樹を軽蔑の目で見た。


(これが平和への第一歩だ……)


本来の対決が、今始まろうとしていた。阿修羅との戦いが、幕を開けようとしていた。

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