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第一話:回想綺譚 水を希う魔法使い

前回の物語の少し前のお話

 あるところに水に満ちた、豊かで美しい国がありました。

 

 しかし、ある日を境に水の国はその美しい面影を一つも残さぬまま、死の風が揺蕩う、陽炎の国になってしまいました。

 

 その国はある時から水が少なくなってゆきました。

 魚が水の中で干からんでゆき、草木は萎れ、雨雲は空に現れることはありませんでした。

 

 国の未来を案じた王様は、水を司るおつきの魔法使いに命じて、水を取り戻す方法はないかと尋ねました。

 

 水の魔法使いは知恵を絞り、国の近くのあらゆる水脈や、水をもたらす天候を引き寄せる魔法を調べ、生命の息吹を取り戻そうと努力しました。

 

 しかし、一向に国に水が戻る気配は見えません。

 水の魔法使いは代々その命自体が水を呼ぶ力を持っていました。

 

 彼らは小さな水の通りから、大きな運河まで知りつくしていて、その流れの一端を掴むことができました。

 

 また、天候の小さな水蒸気がもたらす自然の機微を覚り、その恵みを自分たちに向ける知恵も持っていました。

 

 最初は魔法使いと息子の弟子とで、国の人々の喉を潤すだけの水を呼ぼうとしました。しかし一向に水は足りません。

 

 なぜならば人々は水が少しでも手に入ると強いものが水を確保して、弱きものに与えるようにはしなかったからです。

 

 そうしている間にも水の国は乾きから逃れることがはできませんでした。

 

 魔法使いは自分の限界を理解して決断し、息子をいけにえに選びました。

 

 息子に渇きの呪いをかけ常に水への渇望で満たすことで、より多くの水を王国にもたらすように仕向けたのです。

 

 息子は苦しみ、少しでも水をくださいと願いましたが、彼の渇きこそが水を呼ぶので、誰からも水を与えられることはありませんでした。

 

 息子の犠牲と引き換えに水脈は徐々に太さを取り戻し、雨も降り始めました。

 

 しかし渇きの記憶は欲望となり、少しでも多くの水が欲しいと人々を駆り立てました。

 

 水の湧き出たところには多くの血が流れ、多くの死体で汚染されました。それでも人々は水を確保することをやめません。

 

 水の魔法使いがある日、干からびた姿で見つかりました。その体は干からびて一滴たりとも水がありませんでした。

 

 魔法使いの息子は渇きの呪いから、そばにいた父の水を全てを奪ったのです。

 

 それでも渇きの呪いがあるので満たされません。水の味を知った息子は止まりませんでした。

 

 王様や人々が魔法使いの危険に気付いた頃には、国は水争いで疲弊し、力なきものは汚染された水を飲んでいたため、また1人、また1人と水は奪われ、水の王国からは全ての水が奪われました。


 王国はすでに滅び、水を希う魔法使いがどこかで今も渇きを潤そうと彷徨っているのだそうです。

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