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書店に向かう途中、スマートフォンで時間を確認する。6時だ。学校を出た時は4時過ぎくらいだったのでそんなに時間を無駄にしたわけではないと自分に言い聞かせてはいたが、なんとなく早足になる。平日なのでそんなに人が多いわけでもなく、なんだか自分が悪いことをしているような気にもなってくる。参考書を買って早く帰ろうと思い未来屋書店に入った。もう一つ新星堂という書店があるが、私は未来屋書店の方が好きだった。
書店に入るとさっきまで考えていたことが霧散し、漫画コーナーを見たり、面白そうな写真集などをつい立ち読みしたくなってしまう。何度も寄り道をしながら参考書コーナーに向かう。いつも買うシリーズの参考書を手に取り会計に向かった。
レジカウンターには3人の人が並んでいた。未来屋書店は書棚なども黒色が基調でとても落ち着いた雰囲気だ。レジカウンターも黒色でレジの人のエプロンも黒色。いつもはそんなことを考えないのにその日はなんだかレジカウンターもレジの人も大きな影のように見えた。そのせいか私は歯医者の順番を待っている時のような心細い気持ちだった。どうしてこんな気持ちになるんだろう。書店のレジの人の顔を覚えているわけではないが、レジの人もいつも通りな気がするし、明るい店内にゆっくりとした音楽が流れていて不安になることなんて一つもない。でも今すぐ参考書を棚に戻して帰ってしまいたい。そういう気持ちと、近所の書店にこの種類の参考書が扱ってなかったらとか考えていたら私の順番が来た。
影のように見えたレジの人は書店によくいる普通の眼鏡をかけた男性で、お待たせしました。とバーコードを読み込み1280円です。と言った。なにもおかしいことはなく普通だ。
私はそれで安心すると思ったのに不安な感じは消えなかった。黒いビニール袋に入れられて参考書が渡され、レシートとお釣りを受け取ると私は書店を後にした。
6時だとそろそろ暗くなる。早く帰ろう。私は元来た出口の方に向かっていった。




